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116話 これを転用しようと思って

 昨晩は、あんなにもたらふく海鮮料理を食べたにもかかわらず、もうこんなにも腹が減ってるなんて、我ながら、どうかしていると思う。


 かといって、宿での食事のように、ごく普通の一人前の量でよそわれた食事では物足りないのかと問われれば、決してそんなことはないのがこれまた不思議だ。


 とにかく今は手早くできるものを、と思って、火の入りが早い魚介類とフリーズドライ野菜をふんだんに使ったクラムチャウダーを作ろうと決めた。


 実は、昨日のうちに、朝に潮汁うしおじるでも飲もうかと思って、水を張った容器にアサリを浸け、一晩かけて十分にアサリの砂抜きをしてあったのだ。


 これを転用しようと思って。


 砂を吐いて汚れた水を改めてきれいな水に替えて、貝殻の表面の汚れを洗い流しておく。


 魔力をたっぷりと注ぎこんだ【精霊水】を鍋に張って、よく洗ってきれいになったアサリを入れ、あまり煮立たせないように茹でる。


 貝の殻が開いたら、すぐに貝を取り出して、貝の殻から身を外しておく。


 いいアサリの出汁だしが出た鍋の中に、フリーズドライのニンジン、タマネギ、ジャガイモを加えて、弱火でことこと煮込む。


 その間に、あらかじめ内臓を取って、皮をいておいたイカを小さめに切っておく。


 熱したフライパンにバターを引き、イカを香り付け程度にさっといためる。


 朝から贅沢ぜいたくではあるが、鮮度がいいうちに使ってしまった方が良いと思って、ホタテと海老えびも同様にバターで炒めてしまった。


 先ほど取り出しておいたアサリの身と炒めたイカ、ホタテ、海老を、野菜を煮込んでいた鍋に加えて、軽く煮る。


 フライパンに残ったバターの上に、小麦粉を入れて炒めたら、ミルクを注いで、小麦粉をよく溶かす。


 これを鍋に移し、塩コショウして全体の味を整えてから、ひと煮立ちさせ、とろみが付いたら、クラムチャウダーの完成だ。


 次に作るのも、簡単なものがいいな。


 出掛けに思い付いて買い足したものだけに、もう最後のパンとなってしまったが、こいつを使ってしまおう。


 女、子ども連中であれば、大概好きそうなやつだから、いいんじゃないだろうか。


 ふふふ……フレンチトーストだ。


 というのも、朝の挨拶を交わし終えたときには、なぜかユタンちゃんの手にはいくつかの卵が……あかつきの中、どこからともなく、鳥の卵らしきものを見つけてきたようなのだ。


 急遽きゅうきょ、それを利用しようと考えたわけだ。


 それにしても、ユタンちゃん駄目だよぉぅ! 一人で出歩いたりしたらぁ。


 まあ、それは後で言い聞かせるとしてだ。今は料理、料理だ。


 この卵とミルク、そして、砂糖をボール状の容器に加えて、しっかりと混ぜ合わせる。


 この中に切り分けたパンを浸して、本来ならば三十分以上漬け込む……ところなのだが、今回は魔法を使って、時間短縮──水魔法の原理で、卵液の動きをコントロールし、パンの中に浸透させてみた。


 うん、どうやら上手くいったみたいだな。


 後は、焼くだけ。


 先ほどの魚介の匂いがすっかり染みついてしまったフライパンは、一旦、水魔法でよく洗浄だ。


 再び、バターを引き直して、中まで卵液が充分染み込んだパンの両面を次々に焼いていく。


 お皿に載せて、甘い蜜を掛ければ、フレンチトーストの出来上がり~っ!


 ちなみに、ここで使用したなんの乳だかわからないミルク、そして、なんだかわからない蜜は、酒の神ニンカシというか、ディオニュソスをゆかりとするあの杖【テュルソス】から湧き出したものだ。


 神話の一節にあるとおり、本当に清水ばかりでなく、乳と蜜が出たときにはちょっと引いた……なんてもの作ってんだよ!? 本当にギリシャの神ってのは、なんとも卑猥ひわいなのな。


 こんなの二人に食べさせちゃって、大丈夫なのかとちょっと心配になりはしたものの、フレンチトーストを作ってあげたいという誘惑に負けて作ってしまったのだ。


 これで更に、あの子たちがこの杖に魅了されてしまうことなど目に見えてるのだが、逆らえない何かに導かれるようにこの杖を使ってしまうのは、気のせいか?


 呪われた杖なのだろうか?! もっとも、大いなる神の祝福だとしても、人間にとっては、呪いと大差ないかもしれないんだよなぁ……。


「「おいしい(おいひい)」」


 ほうらっね! やっぱり。


 いや、あれは単に舌鼓したつづみを打ってるだけか?!


 確かに、旨いもんな!


 それにしても、スプライトの方が滑舌が悪いのって……。


「あぁ、そうね。初めて食べた甘うまな食べ物だったもんね。うん、いいんだよ。気にせず……存分にお食べ。好きなだけ一杯焼いてあげるから。あっと、パンの残りが……俺のをよかったら、どうぞ」


 まあ、これだけ喜んでもらえるのなら、これはしょうがないかな。


 俺には、運命なんて、どうしようもないから。


 さてと、俺もクラムチャウダーをお代わりしよう、っと。


 とろけそうな表情の二人を眺めながら、美味しくできた料理を心ゆくまで堪能たんのうしていく。


 こんなにいろいろなものを堪能してばかりいたら、胆嚢たんのうポリープにでもなってしまいそうだ。


 いや、単にコレステロールが高そうな料理だからな。そういえば、人間ドックで見つかったコレステロールポリープって、放置してたけど、どうなったのかな? まっ、今更か。


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