105話 みいら……ちがう
──これでとりあえず、完成したはずだ……とにかくお湯で戻して、確認してみるしかないな。
おっとぉ、いけね。食器どころか保存容器も無かった。
まずは容器の作成からだな。
土魔法でざっくりとそれぞれの野菜の量に合わせた適当な大きさの容器を作っていった。
次は食器だ。
こちらも土魔法で、土中の石英、ソーダ、石灰を抽出して、マグカップ状のガラスを生成していく。
瞬く間に、確認用のガラス容器三つが完成した。
これにフリーズドライにした野菜を入れて、お湯を注ぐ。
あら不思議? 水魔法と火魔法を同時行使すれば、このとおり、何もないところからお湯が湧き出て注がれる。やはり魔法は便利この上ない。
最後に、少しかき混ぜて、しばらく待てば、はい、完成!
「さあ、召し上がれ──どうだろう? みなさん。ご感想は?」
「すごいね。これって! 干からびた野菜がきれいに元通りになってるよ」
「みいら……ちがう」
どれどれ? うん。まあ、こんなもんかな。
完成度からすれば、日本で食べてたレベルまでは達してない気はするけど、今はこれくらいで充分だな。これからいろいろと試して改良していけばいいもの。
それじゃあ、全部フリーズドライにしちまおう。
本当になんでもかんでも、精霊魔法で出来ちまいそうな感じだな。
というか、元いた世界で得た知識のお陰でもあるか。
学校教育も満更馬鹿にできないもんだ。
いや、俺の場合は、ラノベ関連の知識から自分で調べて学んだ方なんだけどな。
子どもにも、興味のありそうなラノベをもっと読ませてやれば、あっという間に、国語力なんて格段に上がりそうなものなのにな。
好きなアニメを見てる子どもに話しかけたって、全く聞こえてないほど集中しているだろ? 俺のガキの頃もそうだったみたいだし。
鮮やかな絵が縦横無尽に動き回って、躍動感が半端ない世界がアニメだ。
そんな面白すぎるアニメであっても、大人の事情から、どうしても1クールという短い枠の中に収めなければならない。
そのような制約があるから、原作小説なんかがあるものだと、その内容を削らざるを得なかったりする。
そのアニメに興味を持った子なら、もっと詳しい設定とかを絶対に知りたいと思うはずだし、サイドストーリーだってあるなら、見てみたいと願うもんでしょ。
好きなアニメの原作小説とかなら、大人がいくら「止めろ」と言ったところで、子どもは食い入るように先へ先へと読み漁るはずなんだよ。だって普通、大好きなものなんて、そんななんだから。大人だって、そこは同じでしょ。
もっと子どもの心理を利用して、興味のあるものに矛先を向けてあげさえすれば、後は当人が自分で勝手に趣向の赴くまま興味深いものをどんどん探し出して、勝手に吸収していくはずだよね。
大好物なんだから。
そうしたら、生徒だけでなく、教師だって、ずっと楽になるのに。
読解力なんて数多く読んでいけば、自ずと身についてくるものなんだから。内容どうこう以前に、とにかく面白くて、思わず読み進んでしまうものに出会えることが前段階になるんだ。
それに、なにを面白いと感じるかなんて、人それぞれさ。
それまでの人生によっても違ってくるし、たった今読んだ本によっても、趣向なんてのは変わってくるもんだから。
そもそも、他人に勧められた本で、面白かった経験なんて、誰でも少ないんじゃないの?
だって、みんなそれぞれ人としての下地が違うんだもの。当然だ。
そして、俺はその知識を礎にこうやって異世界でも生きていけるようになった……。
というのは、嘘でーす。あはは、なにもかも精霊さんのお力、どぉえーす。
それにしても、なんで俺しか精霊魔法が使えないんだろうな?! 変なの……。




