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103話 お父さん。またどやされるぞ!きっと

「ああーーーっ、駄目だめダメぇぇぇ! 店仕舞いだ。店じまい。けぇってくれ。帰ってくれ!!」


 おぉ、びっくりしたぁぁ。なんだ!? この親爺は。


 なんか途中で天秤棒担いだ親爺を追い抜いたと思ってたけど……怒鳴り声を上げながら、店まで駆けつけてきやがって。その上、なんか知らんけど、女の子の前に立ちはだかりやがった。


「お父さん! 何言ってんの!? それ今仕入れてきたばかりの魚じゃない。今日中に売り切らなかったら、またお母さんにどやされるよぉ」


「そうだぞ。お父さん。また、どやされるぞ! きっと」


「おめえは黙ってろ! つうか、お父さんって言うな!! しかも初対面だろうが。しかも、『また』ってなんだ?! またって」


「いや、奥さんに頭が上がらない旦那なんて、世界共通概念だから、つい……」


「とにかく帰れ、つってんだろ!」


「ほんとに何怒ってんのよ?! ごめんね、お客さん……お客さんでいいんですよね?」


「はい。お客です……麒麟きりんじゃありません!」


 おっ、なんか今だけ、川島さんみたいな良い声出た。だから、つい思わず……うん、すまん。


「えっ?! キリン?? えっと、よくわかんないけど、毎度どうも、ありがとうございます。でっ、何になさいます? お父さん、口は悪いけど、目利きだけはしっかりしてるから、いい魚ばかりですよ」


「えっと、実は、暖かい地域のお魚を買うのは初めてなんです。できたら食べ方なんか含めて、いろいろと教えてもらいたいんですけど。沢山買うつもりなので」


「ちょっとぉ、なに気安く、娘と話してくれてんだよ。けえれよ。もう帰ってくれよぉぅ」


「ほんとに、どうしちゃったの? お父さんったら。もう商売の邪魔だから、あっち行っててよ。ほらっ、シッシッ!」


「駄目なんだって、そいつはぁ! 側にいるだけで妊娠させられちゃうんだぞ! お嫁さんに行けなくなっちゃうんだぞ。それでもいいのか? なんだよ!? お嫁って、お嫁になんて行かないでくれよぉぉぅ」


「そんなわけないでしょ!? 何をわけ分かんないことを。お客さんに失礼よ。さあ、謝って、あやまってよ。ほらっ……もう、すみませんね。お父さんが失礼なこと言っちゃって。お詫びに少し安くしときますから、勘弁してくださいね」


「いえいえ、気にしてませんから、お気になさらずに。もちろん正規の値段で買わせていただきます」


「あぁ、うちの娘がいただかれてしまうーっ!」


「お父さんっ!」


 ぐわっはっは……ふふふ、どうやら吾輩の勝ちのようだな。ふっ、紳士。紳士なのだから、私は! なんせ、今の私はまったくもって、ものが起たない。まったくものなのでな。ゆえに人畜無害っ!!


「そうですかぁ? ごめんなさいね。それじゃ、この辺の魚から説明しちゃいますね。この赤い魚が──」


 こうして魚屋の娘さんの説明で、色鮮やかすぎて、ちょっとこれはどうなのかなぁって引いちゃうくらいの見た目だった魚について、その食べ方なんかもいろいろと教えてもらったさぁ。


 そのお礼にと、娘さんがちょっと引いちゃうくらい、いっぱいの魚を買ってあげたさぁ。


「おまえ、そんなに買って、いってえ何人で食う気だ? なにっ、三人?! 食えるわけねえだろうがっ! もったいねえ」とか騒いでいたけど。


 ふふふ、安心したまえ。朝飯前だ! これくらい。今は夕飯前だが。


 なんせ我が家には一日に十食も食べる半小妖精様と、この世界に来て、なぜか大食漢にクラスチェンジした吾輩が居るのだからぁなぁ!


 ……はぁ~っ、でも正直、助かった。いろいろ食材が揃って。なにせもうすぐ熊肉ベーコンも食べきっちゃう勢いだったからね、ユタンちゃんったら。


 ふふふ、それにこれでやっと……女の子と話せて、潤ったぁ。うん、自分を取り戻せたよ。


 あれっ!? ちょっと待てよ。それならスプライトと話をすれば、良かったんじゃ!? 今は俺一人じゃねえんだから。そんなことまで分からなくなるほど市場では緊張して訳が分からなくなっちまうとは……。


 はあ、しっかし、どうなってんだ? いつの間にやら俺が女誑おんなたらしみたいな噂が出回ってるみたいだけど。


 やっぱり妖精さんを耳族にしちゃうというのは、それほどのことなんだろうか!? ともかく、この世界ではそう取られてしまうようだな。


 でも、この辺りでは耳族を全然見かけなかったし、その手の話も耳にしなかった。実際の事情なんて、知らんくせに、傍迷惑な噂だ。


 別に俺が妖精たちを誑し込んでるわけじゃなくて、たぶん、この【テュルソス】の杖のせいだと思うし……。あれっ!? じゃあ、実害はあるのか?


 とはいえ、さすがに餞別せんべつでいただいた物だし、仮に手放して、他の誰かの手に渡ったらと思うと、やばすぎて、捨てる気にもならん。


 もしも普通の人がこの杖に魅了されちゃったりして、ストーカーにでもなられたら、それはそれで怖い。


 俺は、人の多い町に長居しない方がいいのかもな。


 あとちょっとで準備の方も整いそうだし、予定通り、明日の朝には、この町を出ていくとしよう。



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