不思議の温泉のアリス
会社が不祥事を起こした。
大会社だけに大損失。
商品生産停止。顧客への補償。
オレは一気に奈落の底へ落とされた。
それでも出勤しなければならない。
毎日数百件のクレーム対応。残業、残業、終電。
会社を出ると今日もふらふらと帰路に着く。
「あぶないよ!」
オッサンの怒号。オレは工事中エリアに踏み込んだらしい。
「!?」
マンホール?。落ちる、落ちる・・終了?
・・?
「お目覚めですか?」
目の前に幼い少女の顔が。ウサギの耳の少女?
「ウチはアリスでありんす!」
少女は満面の笑みで告げた。
「ここは、どこ?」
「不思議の温泉世界でありんす!」
「不思議の温泉?世界?まさか?オレ転生した?」
独身で社畜のオレ。小説で異世界美少女のキャラとイラストで癒される日々。
「そうか。ついにオレも転生キター!」
目の前にいるのはいかにも異世界うさ耳美少女。
現実世界での悲惨な結末。転生。チート。多数の美少女との出会い。
勝手に妄想を膨らましていると、うさ耳少女アリスがオレの手を引く。
「こっちにくるでありんす!」
手を引かれるがままにアリスに追従した。
岩場を少し歩かされると独特のツンとした臭いに包まれる。
「ここで前世の疲れを癒すでありんす!」
湯けむりの中でアリスが満面の笑みで告げる。
温泉といっても小さい、マンホール大の面積の小さいモノ。たぶん個人用か?まぁいい。人がいると気兼ねするからな。
よく見ると周辺には似たような小さな温泉があり何人かいるようだ。
目を凝らして見る。
それぞれの温泉に浸かっているのは?
「うさぎ?・・猫?」
彼らは何事もないようにくつろいでいた。
「さぁ、服を脱がすでありんす!」
オレの戸惑いを気にもせず、アリスがオレの衣服を脱がしにかかった。
「いいよ!・・ちょっと?」
抵抗むなしくアリスはオレのズボンを脱がす。
こんな幼い少女が、なんて力だ。
ズボンに足が絡まりオレはよろめく。
「あぶないよ!」
湯けむりの向こうから怒声が。
さっきのウサギだ。
・・あいつオッサンなのか?ウサギのくせに?・・
そう思った瞬間オレは目の前のその小さな温泉に落ちた。
落ちる・・落ちる・・?
気が付くとベッドの上に居た。消毒液の臭い?
「病院?そうか?オレは転生、いや、転倒して・・」
どうやらユメを見ていたらしい。
「お目覚めですか?」
声がした。横を見ると白衣の女性。そして頭上には・・
「うさ耳!?」
そのナースのうさ耳少女は満面の笑みで言った。
「ウチはアリスでありんす!」
読んでいただいてありがとうございました。
面白かったら★★★お願いします!w
他にも短編掲載してますので読んでみてくださいねw
お時間はとらせません・・たぶん・・