口裂け女前日譚
こんな事があってもおかしくないお話。
グロ、胸糞注意です!
綺麗になりたい…今よりももっと美しくなりたい…ただ、それだけを願った私が罰当たりだと言うのだろうか?
私は人が振り返る迄はいかないけれど、それなりに自分の容姿に自信はあった。
大学でもモテたし、ファンクラブなるものもあった…のに…アイツがアイツがアイツがアイツがアイツが現れさえしなければ!
私は今も優しい友人や彼氏達の中心で大輪の花の様に綺麗に笑っていられたのだ。
全ては、カフェのバイトが終わった夜の帰り道に…小柄な男が私に体当たりをして、転んだ私の顔を…私の大事な顔を踏み潰したのだった…
「ギャーーー」
余りの痛みに叫んだ悲鳴にイラついたのか、男はあろう事か私の開いた口を力加減無くサッカーボールみたいに蹴り飛ばしたのだ。
今まで生きて、経験した事の無い痛み…顔中が生暖かい物で濡れている…きっと血なのだろう…薄れ行く意識と激痛に苛まれる中で救急車のサイレンが聴こえた気がした。
目が覚めたら全てが悪夢だったなら、どれだけ良かった事だろう。
包帯だらけの顔の私を両親が心配そうに眺めていたが…父親の顔は少し様子がおかしな気がした。
私の顔をサッカーボールみたいに蹴った小柄な男は、どうやらバイト先近辺のマンションに住む未成年だったらしい。
これまでも様々な悪事を働いていたそうだが、これだけの事をしても相手の家族は謝罪にも来ていないそうだった。
私の変形し、傷付いた顔は…ある部分以外は形成外科の手術で目立たなく…前以上に美しく成功したと聞いた。
だが…靴を履いたまま蹴られた唇は耳まで裂けて、どう時間を掛けても醜い傷跡は残ってしまうとポマード臭い医師から説明を受けた。
何故…何故?何故何故何故?
私が何をしたと言うのだろう?
理不尽な子供の暴力で自慢の顔を何故?
奪われなければならなかったのか?
様々なクエスチョンマークが頭に飛び交い、そして泥々に濁り固まる怒り…。
数週間後に包帯を取った私は神様はいなかったと黒い絶望に支配された。
グロテスクな美と醜を顔の上下で分けられた悪趣味なオブジェなら…良かったのに…だか、私は若くてまだ生きている。
口の傷が目立たない大きなマスクをして、愛していた彼からプレゼントされた赤いトレンチコートとハイヒールを履いて外に出た。
乾燥した冷気が、私を襲うけれどちっとも寒くなんて無い。
庭に無造作に置いていた鎌をバッグに仕舞い込む…そろそろ夕暮れ時だ。
出掛けなければいけない。
例の小柄な男は容易く見つかった…どうやら、私にした仕打ちを武勇伝みたいに語っているらしい…周りで笑う男女…全て刈り取る準備は出来ている。
「しかし、Aってすげ〜よな!あの女もう外に出れねーじゃん」
「だよなー?口裂けてバケモンみたいな顔なんだろ?笑える!」
「アイツっていつも人の事馬鹿にした感じでムカついてたんだよね〜」
「マジザマァ」
私の顔を壊した子供の仲間がそれぞれに身勝手な事を言っては笑っている。
頭の中が、血が沸騰したみたいに熱い…熱くて暑くてアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ悔しい悔しい許せない許すもんかシネシネシネ…
気づいたら、バッグから取り出した鎌を握りしめて奴等の背後に立ち…1人目の首を掻き切った。
ブシュっと音がして、奴等の頭に大量の血潮が降り注ぐ…人の身体からこんなに出るのかと言うくらい血を噴射すると死体は崩れ落ちた。
未だに何が起きたか理解できない奴等は馬鹿面を血塗れにして、突っ立ったままだ。
私はマスクをゆっくりと取ると、奴等に嫣然と笑い掛けて問い掛ける。
「ワタシキレイ?」
何を言っても逃しはしないのだけど…。
その凄惨な殺人現場は…瞬く間に地元で有名になったが、被害者が全て犯罪に手を染めていた未成年だった事…犯人が心神喪失状態だった事から放送規制を敷かれ…皆の記憶から忘れられてしまった。
後に全国的に有名になる「口裂け女」の元になる話である…。
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