リーダー鴉の子供を殺したらしい
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なんて事ない日常はいつも突然終わりを迎える。
桜が舞い散る春の暖かな日差しを浴びて、少し眠気を感じてアクビをかみ殺しながら愛車を運転していた。
以前よりも減った鴉が生ゴミが入っているだろうゴミ袋が積まれた山を数匹がクチバシで突いている。
鴉避けのネットがされていないゴミ袋は容易く中味が散乱していくのを、少し苛立ちながら信号待ちしがら見ていた。
「うわぁ…最悪だ」
散乱したゴミが風に乗って俺の愛車の前まで広がってしまっている。
鴉達は飢えているのか歩行者や車に気を止める事なくゴミを突いていた。
舌打ちしてその様子を眺めていたら、信号は青に変わっていたらしく後続車にクラクションを鳴らされて思わず急発進させてしまった。
バーーーン!!
衝撃を車体に受けた…何だ?と思ったのも束の間の事で、フロントガラスに黒いナニカが張り付いている。
縁石にと車を止めて見れば、鴉の死体だった。
急発進した車に慌てて飛び立つ鴉がフロントガラスに激突したらしい…まだ生きているらしいが、それよりも仕事の予定時間と車体の傷を気にして近くに落ちていた木の棒で鴉をアスファルトへと払い落としてから確認する。
幸い車には傷が無いようで安心してから、運転席へと戻ろうとした時にゾワゾワと首筋から背中に掛けていきなり悪寒がした。
なんだと振り返ると…。
生ゴミの山を夢中で突いていた筈の鴉達が皆コチラをミテいたのだ。
何か分からない恐怖に慌てて車を発進した時にナニカを轢いたが…ソレがナニカなんて考える事もせずに急いで仕事へと向かった。
仕事先での営業を終えて会社にと戻った俺は戦慄した。
古い五階建ての会社の自社ビルの周辺に黒い鴉達が並んでいた。
(怖い)
冷や汗なのか脂汗なのか分からない汗が全身から吹き出す。
俺は車を方向転換させるとそのまま家へと逃げ帰ってしまった。
すると…普段は温厚な妻が鬼の形相で自宅ガレージの前に立ち塞がっていた…家の周りにも会社にいたよりも増えた鴉が取り囲んでカアカアと鳴いている。
俺は早く車を止めて家へと入りたい一心で妻に怒鳴り付けた。
大分と八つ当たりや虚勢の感情もあったのだと思う。
「おい!何そんな所に突っ立ってんだよ!車が入れられないだろうが!危ないから早く退けよ!」
そんな怒声にも妻は引く事なく静かだが良く通る声で尋ねてきた。
「あなた、鴉の子を殺したでしょう?」
心臓を鷲掴みにされたような気持ちになるのと同時に鴉達の鳴き声も止んでいた。
「な…なんで」
妻は俺の様子を見て鬼の形相から、いきなり何歳も老けてしまった様な疲れ切った顔をして…そして憐れむ目で俺を見た。
「鴉にはね…王様がいるのよ。その王様の子供をあなたは殺した。そんな人間を家に入れる訳にはいかないのよ。子供達にこれ以上、危ない目に合わせられないわ」
最後は嗚咽混じりに妻が言った言葉の意味がわからない。
確かに…俺は交差点で鴉を轢いたかも知れないが、あれは偶然だった。
外に出て車体の確認をした時は生きていたし…その後は…再び運転した時にナニカ轢いた様な気はしたけど、確認していない…確認していないアレは…?
何かがカチリとハマりそうになった…なったけども俺は思考を停止した。
「子供達って…」
代わりに出たのは酷く弱々しい声だった。
赤い泣き腫らしたのだろう妻の目が俺を睨みながら怒鳴る。
「学校の教室にいきなり鴉が何匹も入ってきて、子供達だけを狙って襲ったそうよ!同級生の子やママさん達から呪われてるって!○○神社の子が鴉の王様の子をあなたが殺したせいだって!……もう近所で噂になっているの。子供達は2人とも右目と左目を片目ずつ抉られて入院しているわ…連絡しても繋がらないし!何をしたの?何なのよ!家に入らないでよ!もう出てって!帰って来ないでどっか行ってよ!」
妻は見た事が無いくらいにヒステリックに喚き散らし泣いていた。
俺は…呆然とするしかなかった。
ただもう帰る場所が無くなった事と家族を失った事だけは理解出来た。
一一一一一一一一一一一一
数ヶ月後
とある山中で白い車中から損傷の激しい中年男性の死体が見つかった。
車は投石の為、損傷が激しく…死体は鳥のクチバシで突かれた様な跡や車内に夥しい黒い鴉の羽根から「事故死」とされたらしい。
色々と病んでましたがまたポツポツ書きますので、ブクマやら応援お願いします。
目指せゆっくり朗読!




