表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/60

55 四次元ポケット

   ◇◇◇


 俺は謎の空間にいた。


 広い建物の中のような空間。


 縦横が規則正しく、病院などの建物を思わせるような……。

 いや、明らかにそういうものではないか。


 もっと、ずっと大規模だ。

 そして立体の幾何学模様のように、どこまでも広い。


 色はカラフルで、虹のようなグラデーション。線で塗り分けられている。

 虹以上に多彩な色合いだった。

 建物が細かく、細い縦線で塗り分けられているような、区切られているような。


 それが広がっている。

 広がっているのだ。


 左右に広いのはわかるけれど、前後もそう。

 上下もだ。


 ひたすら、カラフルな、廊下のようなものが続いている。


 いや、床がない。

 いやある?


 俺は、廊下を区切る柱というのか、そういうものに手をかけた。


 床や壁がなければ、ジャングルジムのように、棒で区切られているのが見えるだろう。

 でもそうではなく、遠くに続いていく廊下には壁のようなものが見える。


 しかしすこし、壁のようなものに近づいていくと、それは遠くまで続く廊下のようになってしまう。

 

 俺はそんな空間に浮かんでいる。

 浮かんでいる、でいいのだろうか。

 ちゃんとそこに立っているような気もする。


 歩いているような、空中を飛んで移動しているような。

 そんなのどっちかだろうとわかるはずなのにわからない。


「初めて?」


 声をかけられ振り返った。

 青年がいた。


 高校生くらいだろうか。

 ひょろりとして見える。

 身長が高い。180センチ以上ありそうだ。


「君は……?」

「クロノ。知ってるでしょう?」

「知らない」

「僕がみんなを運んであげてたんだよ」

「みんなを?」

「ナガレさんでしょ?」

「ああ」

「時間を止めてるって気づかなかった?」

「……ああ、そういうことか」


 闘技場で誰かに押されたような感覚があった。

 あれは、時間を止めて、俺を移動させようとしていたのか。


「すぐ信じるの? 時間を止めるなんて」

 クロノは意外そうにした。


「止めてるのか、止めてるみたいなものなのか知らないけど、それくらいのことはできそうな人がたくさんいるみたいだから」

「ナガレさんもすごいよね。力の流れを操れるんだから」

「どうだろう」

 操っているというほど操れていない。


「ここは?」

「王子の口の中だよ」

「ああそうか」

 言われたとたんに思い出した。


「食べられたわけじゃないのか」

「そうだよ」

「ここは……。なに? どこまでも広くて……」

「王子の口の中は、なんでも入れられるんだ」

「これが口の中?」

「そうだよ」

「…………、四次元ポケットみたいなものかな?」


 そう言ってみると、すこし納得できた。


「四次元ポケットって?」

「なんでも入れられるポケットだよ。外から見ると小さいポケットだけど、中はすごく広いんだ」

「王子の口の中と同じだね!」

「クロノ君はどうしてこんなところに?」

「安全だから」

「そうか。でも、王子が危なくなったら、君も危ないんじゃないの?」

「そのときは僕が時間を止めるから大丈夫」

「外が見えないのに?」

 まわりを見ても、外の景色を見る窓などは見当たらない。


「王子が呼ぶんだ。声だったり、手で引っ張り出したり」

「王子は中がどうなってるかわかるってことか」

「好きなように見つけられるんだ」

 クロノは得意げだった。


「そうだ。四次元ってなに?」

 クロノは言った。


「え? さあ……」

「自分で言ったんでしょう?」

「そうだけど……。だから、たとえば……。線が一次元。四角が二次元、箱が三次元。みたいな」

「どういうこと?」

「線は、長いか短いか、二つしかないだろう? 四角はそれが、縦と横、二つの、長いか短いかがあるから、二次元。箱はそれに、高さの、長いか短いかがあるから、三次元。そんな感じ」

「四次元は?」

「さあ……」

 俺は首をかしげた。


「わからないの?」

「そうだよ」

「ふうん」

 クロノはまわりを見た。


「点を集めると、線ができるよね」

 クロノは言った。


「え? ああ」

「線を集めると、四角ができるよね」

「うん」

「四角を集めると、箱ができるよね」

「うん」

「じゃあ、箱を集めると、四次元の物質ができるんじゃない?」

 クロノは言った。


「箱を集める……?」

「そういうルールなんでしょ?」

「そう、かもしれない」


 言われてみるとそうか。

 箱を辺みたいにして箱を作る。

 それはルービックキューブみたいな意味じゃないんだろう。


 ……どういう形なのか想像できない。


 俺もまわりを見る。


「これが四次元……?」


 形がしっかり見えないのは、そういうことか?

 いや形は見えている。

 うーん。


「五次元かもね」

 クロノは言った。


「たしかに」

 ここが何次元なのかなんてわからない。


「最後にわかってよかった! すっきり!」

「最後?」

「うん。もうすぐ死ぬからね」

「死ぬ? 病気とか?」

 俺が言うと、クロノはおどろいたように俺を見る。


「ちがうよ」

「じゃあ?」

「ワガ国の王様に殺されるんだよ」

「どうして」

「あれ? 見てなかったんだっけ? 王の棺で、僕らは殺されるんだよ。ナガレさんも残念だね。王子の中にいたばっかりに」

「え? 王の棺で死ぬ?」

「そう。王様は、王の棺を自由に使えたんだ。だから、僕らを逃さず、棺で押しつぶして殺すつもりだろうね」

「え? え? え?」

「今度は瞬間移動ができる人間に生まれ変わりたいなあ」

 クロノはのんびり言った。


「ちょ、俺はなんで死ななきゃならないんだ」

「捕まったからじゃない?」

「そう、いや、じゃなくて、俺は王の棺を壊せるぞ」

「まさか」

「本当だって」

「うそだあ」

「本当だって!」

「じゃあやってみてよ。王子に言うから」

「え?」

「はい」



「うおっ!」


 急に草原を舞っていた。


 近くに王子の仲間がいて、その上を、体がゆっくり回転しながら飛んでいた。

 口を大きく開いている王子。

 その向こうに、透け透け巨大ロボットみたいなのに乗ってる王様が見えた。

 ゆっくり回転し、俺は、透けた青白い壁にぶつかって。


 壊した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ