↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/60

36 スレインの任務

  ◇◇◇


「スレイン」

 行こうとしたおれを、ボスが呼び止める。


「なんです?」

「これを」

 ボスは、  から姿を隠す特級のマントを出した。


「おっと、いいんですかい、ボス」

「長居するな。絶対に失敗しないと思ったときだけ殺してこい」

「何事にも絶対はないんでしょう?」

「そのとおりだ」


 おれは笑って、控室を出た。

 すっ、と心が冷え、笑顔が消えるのを感じた。


 ボス。

 まともな人間はボスだけだ。

 あとはゴミだ。


 姿を隠す特級のマントを羽織る。

 選手用の通路を抜けて、一度外に出てから、観客用の入り口から入り直した。


 とたんに笑顔のゴミが目に入る。

 いくつもいくつも。

 ベルガル戦の感想を言っている。迫力があったとか、弱そうな方が強いとか、それをわかることが玄人だとか。

 ゴミが。

 しゃべっている。

 こんなに悪い冗談なのに、どうして誰も気にしないのか。

 ゴミだからか。


 速度を落としてゴミの間を速歩きで抜け、通路から、客席に出た。


 すり鉢状の闘技場に四角形の武舞台が見えた。

 下の方にはワガ国のベンチ。

 そこからずっと視線を上げていくと、ずらりとならんでいる客席の上の方、ワガ国の王がいる場所だけが、せり出しているような形で確認できた。


 横から入るのはもちろん無理。

 あそこより上は座席がなくなっている。

 下も、せり出した部分を支えるために真下の客席はない。


 王は席に座っていて、近くには三人いる。兵士が二人、武装していない者がひとり。

 あと、薄暗いが奥に二人くらいいるか。


 王の棺、は見えない。


 一度通路にもどって、ワガ国側にまわりこんでから上がっていく。

 ゴミが多い。

 全部掃除してしまいたくなる。

 しかしゴミに善悪はない。

 ただそこにあるだけだ。

 ゴミ屋敷というだけだ。

 気にしないほうがいい。


 王のいる階まで上がると、ゴミの数が減った。

 代わりに、入り口から門番のような兵士がいる。

 おれの姿は見えていない。


 ゆるくカーブしていく通路をすこし進むと、前に兵士が立っている扉が見えてきた。

 見取り図、そしていま確認してきた様子からも、あそこが王のいる部屋だろう。


 おれは歩いて近づいていく。

 兵士は前の壁を見ている。

 前を見るというのは門番などの慣習であり左右にのびる通路を守る兵士としては、まったく適さない。

 仮におれの姿が見えなくても、横の様子を見ているだけで、なにか、感じ取れるかもしれないのに。

 これでは鎧を着たゴミだ。


 そのとき誰かやってきた。

 バスケットを持った、エプロン姿のゴミだった。

「軽食です」

 と鎧を着たゴミに言う。

「受け取る」

 鎧を着たゴミが受け取ると、エプロン姿のゴミは帰っていった。

 扉が開き、バスケットを持って鎧を着たゴミが入っていく。


 近くに兵士、すこし先に王の大きな椅子。背もたれで王の姿が完全に見えなくなっている。

 王の棺、が発動しているようには見えない。

 この中に入れば九割、やれるだろう。


 しかし、王の棺、がなくても他のトラップがあるかもしれない。

 おれが死ぬのはかまわない。

 だがボスの計画を破綻させるわけにはいかない。


 もどって報告だ。


 通路を速歩きでもどり、階段を降りようとしたときだった。

 

「あっ?」


 マントがなにかに引っかかった。

 いや。


 マントが切り裂かれ、おれの姿が露出していた。


 幸い、兵士たちの視界からは外れている場所だったが。

 代わりに、妙な男がいた。


 黒ずくめの服に、目に痛いような赤い靴を履いている。

 手にはナイフが握られていた。


「貴様、いま王の部屋の方から来なかったか?」

 そいつは言った。


 おれは走り出す。

 と見せて、男が追いかけるためにスタートしたタイミングで反転、ナイフを投げた。


 命中。

 思ったが、ナイフは体をすり抜けた。

 残像のように姿が消える。


 おれはなにかを感じて飛び退いた。

「くっ」

 おれは壁を背にして首をおさえた。

 じわり、と血がにじんでいる。


 とん、とん、とその場で軽くとんでいる男がいた。


 速い。

 おそろしく動きが速い。

 特級か。


「問答無用で、投げナイフで殺そうとしたな。殺すべき相手のようだ」

 男は言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。