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03 荒ぶる筋肉

「そういうことだったんですねえ」


 話を聞けばかんたんで、レスラーと魔法使いはパーティーを組んでクエストに向かった。


 しかしクエストは未達成。報酬は大きく減額されてしまった。

 ただ、魔法使いは安全第一にやっていたので、危険だと考えてからはかなり、撤退するために、演技をしていたところもあるのだという。

 それにレスラーが怒ったということだ。


「手抜き仕事なんて許せるか!」

「ぼくは、それなりにやるっていうスタンスなんだ」

「なにを!」

「ひっ」


 ギルドの中央のテーブルでそんな話をしているものだから、全員に丸聞こえだっただろう。


「そういうときって、どうなるんですか?」

 俺はギルドの人にきいてみた。

 女性の職員は、微笑みながら口を開く。


「本人が、全力を尽くしているかどうか、というのはギルドには判断できません。パーティー内で解決していただきます。ただ、今回の争いでのテーブルなどへの損害は、請求させていただきます」

「むう……」

 レスラーがうなる。


「だが、そんなこと、こっちだってわからねえんだ! こっちは、ちゃんと仕事をやってもらうつもりで頼んでる。なのによ、そんな態度は、ギルドの怠慢じゃねえのかあ!? ああ!?」

「たしかに」

 それも一理ある。


「だったら、それぞれの冒険者が、成功重視か、安全重視か、そういうことを、誰にでもわかるように示しておいたらいいかもしれないですよね。それならミスマッチもなくなりますし。まあ、こういう派遣の仕事はいろいろ難しいでしょうけど」

 俺が勝手に言ってると、レスラーがじろりと俺を見た。


「おい、お前はなんなんだ」

「はい?」

「勝手に入ってきて、勝手にふっとばして、勝手なことをペラペラいいやがって」

「あ、いえ、すいません」

「気に入った」

 レスラーは言った。


「はい?」

「おれを見てびびらないどころか、向かってくるなんて久しぶりだ。それに、そこの女の腐ったようなやつよりよっぽどいい。あ、あの野郎!」


 魔法使いは、さささっ、とギルドから逃げていくところだった。

「あの野郎……」

「女の腐ったような、っていう言い方はどうですかね」

 テレビだったら絶対に苦情が殺到するだろうと思ったら、つい言っていた。


「なに?」

「腐ったような、だけでよくないですか? 女の、ってつける必要がないような」

「……」

 レスラーが俺をにらんでくる。


 しまった。

 ちょっと強くなったような気になって、好き勝手言い過ぎたかもしれない。

 強く出られる相手に強く言うというのは、言葉遣い以上に、なかなか嫌なやつかもしれない。部下に対するパワハラに近い。

 いかんな。


「あ、すいません」

「完全に気に入った! 次はお前と組むぞ」

「は?」

「次のクエストは、予定があるのか」

「ないですけど」

「じゃあどうだ。明後日!」

「いやあ……。もっと、他の仕事もきいてみたいですし……。あとは、今日のお金もないので、もっと、すぐできる日雇いを……」

「そんなもんおれが払ってやる」

「ええ? いや、知らない人にそこまで……」

「来い!」

 レスラーは立ち上がった。

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