第4話
優実はこの日レベル3まで上げられたそうだ、実に羨ましい。
「でもウォータースライム何にも落とさなかったよ?」
そりゃそうだ、俺の場合スキルの効果で100%の確率でドロップ予定品の中からどれかを落とす、しかし普通であれば……と言うかエリクシアを俺が確認したあの日迄確認出来なかった一番の理由。
そしてスライムの落とす水が入った容器が世界中でドロップしているにも関わらず、未だに一つ頭三千円程で買い取られるのかは、モンスターのアイテムドロップ率が関係している。
ウォータースライム本来のアイテムドロップ率は1/64でありそこから更に抽選が掛かる、エリクシアドロップ率はその内でも極端に確率が低い、高くても1/1000は間違いなく下回る、昨今までに世界合わせて何百億とも思われる程のウォータースライムが討伐されているだろう事を思えば、俺が千匹討伐しただけでエリクシアを手に入れられた事もまた奇跡なのかもしれない。
実はウォータースライム出現領域入場規制がかけられてからこちら、世界の何処からも苦情が上がったと言うか話はない、なぜならエリクシア買取価格の五千万程ならレベルが40もあれば週で稼げるからで、ぶっちゃけウォータースライムをエリクシア目的で狩り続けるのは効率が悪すぎるのだ。
「ま、優実はこれでここのダンジョンの奥に行けるようになったんだから、良いじゃないか」
探索者のメインの稼ぎは討伐報酬であり、これは単純にモンスターが強ければ強い程高額報酬となる。
「でも……」
俺を気にしてくれるのは良いが、正直慣れたものである、もう何百人の中学一年生に追い抜かれたことか。
「気にすんなって、それにこのダンジョンに居る間は俺の稼ぎは超えらんねぇよ?」
そう、優実が稼ぎで俺を抜けるのは高校生になってからである、これは単純に高校生にならないと初級以降のダンジョンに入るための条件『初級ダンジョン制覇』が、中学生には探索者基本法によって初級ダンジョン最下層への入場が規制され、達成不可能である為だ。
「うん……」
「それに、お前が高校生になる頃には流石に俺もレベル2か3には出来る目が出たしな」
「そうなの?」
不殺の誓いのスキルレベル上昇による『逃走確率減少』が次のレベルアップでは恐らく80%に下がる筈だ、そうなれば今よりも遥かに効率は上がる。
幸いなことにこのスキルで規制が掛かるのはアイテムドロップだけで、疲労状態のモンスターを倒しても討伐数や経験値は普通に増えていく。
そう、ウォータースライム千匹討伐に五年もかける必要はもう無いのだ!
「ま、今日はお前のレベルアップ祝いだし、早く帰って出掛けようぜ」
「うんっ!」
夏休みも後半、漸く俺のウォータースライム討伐の日々が戻ってきた、優実はこの夏休みの間友人達とこのダンジョンに潜り、第四層までの攻略を済ませ、レベルは7に上げる予定だと言う、羨ましいなぁ畜生!
因みに優実には装備品は自分の稼ぎで、と言うのは祝いの席で言ってあるので、余程でなければ買ってやる事は無いだろう。俺がケチと言うよりも必要な勉強である、武具の性能や価値等は自身で体感してこそ理解が進む、それを初級ダンジョンである程度身に付ける事も、中学生探索者に出された課題と言えるだろう。
俺?一応は身に付いている筈だ、ウォータースライムを専門にしたくてしている訳では無いが、以前も言った様に小学生がレベルを1にするために倒すモンスターである為に、ぶっちゃけ素手でも問題ない。
名の通り、ウォータースライムは水のスライムであり、よく言われるような溶解性は持ち合わせていない事もあり、余程でなければ女の子でさえ素手で倒してしまう、と言うか殴った時の感触が気持ちいいと言うのもあり、女子は素手で倒す派が多いのは母さんも言っている事である。
「さーて今日からまた狩るぞー」
俺は今、センターに紹介してもらった初級ダンジョンがある村に滞在している、滞在予定は一週間、世界広しと言えどウォータースライム目当てに遠征するのは俺だけだろう。
馴染みのダンジョンと内部構造は違うが、出るのは初級一層目と言うだけあって見事にウォータースライムのみ、そして夏休みにも関わらずこのダンジョンには中学生は居ない、それほど田舎である。
たまにお年寄りとすれ違うがそれだけ、半ば俺の貸し切りと言って良い。羨ましがるやつは居ないが。
「ほんと、スキル様々だ」
寂しくなんてないからな?