時間稼ぎ
『久しぶりねフレア。私はこの大罪剣《嫉妬》で復活したの♪』
笑顔で話すミネスは、黒剣の刀身を撫でながら優しく語りかけてくる。フレアが目を閉じた瞬間に目の前に現れ、剣を振りかざしたミネスの攻撃をサラが間一髪で防ぐ。
『ぐっ……フレア様!大丈夫ですか!?』
すかさず距離をとるフレアを追うようにミネスは黒剣でサラを吹き飛ばし、笑顔のまま襲いかかる。
『大罪剣《嫉妬》ですか。御姉様はもう昔の炎の大精霊ではなくなったのですね……』
フレアはミネスの斬撃を舞うように交わしながら、マスター(ルイ)が到着するまでの時間稼ぎに徹していた。
『フレア様!今そちらに!!』
吹き飛ばされたサラが何とか立ち上がるが、フレアは近寄らないように指示する。
『ダメよサラ。闇精霊に触れるだけで私達には毒なのよ。第一私が地上に来たのは御姉様を完全に消滅する為にきたのだから』
サラはハッ……と自分の腕を確認する。刀身を防いだ両腕が半透明になっていた。
通常は精霊に対して物理攻撃は無効に出きるのだが、闇精霊は精霊の存在その物を葬る力を持っていると言われていると、回避しながらフレアが説明する。
『そもそも闇精霊は純粋には精霊ではないの……大罪剣が産み出した依り代と思えばいいですわ。あの闇精霊は《嫉妬》だから御姉様を依り代にしたのよ』
『あらあら♪お話が長いですよフレア。貴方がいなければ私はこんな姿にはならなかったのに♪』
ミネスの攻撃がより一層速くなる。関節や骨の概念がない闇精霊に堕ちたミネスの攻撃はめちゃくちゃだ。腕が曲がろうと1回転しようとも攻撃の手を緩めない。
『私は優秀なの♪だから炎の大精霊になったのに、貴方がその座を奪ったのがいけないのよ!!』
急に激昂したミネスの気迫で一瞬動きが止まったフレアに大罪剣を振りかざす。
『私より年下の、ましてや妹にこの天才な私が劣るわけないのよ!!』
膨大な闇を黒剣に集中し、一気に振り下ろされる。
(マスター……最期にもう一度会いたかった。地上に降りて不当に扱われていた貴方を見つけた時、最初は精霊剣を持っているから近付いただけだった…。でも、貴方は姿の見えない私に毎日感謝の言葉を言ってくれた。それが何故か嬉しかったし、懐かしい気持ちなれた。まるでお母様が話してくれたお父様に似ている気がしたんだ。)
フレアにはゆっくり黒剣が近付いてくるのが見える。サラが走り出す姿も見えたが、絶対に間に合わないだろう。
(ルイは私の事をどう思ってくれているのかな……?)
「そんなの家族に決まってるだろ!!!!」
目の前にいたミネスは横から殴り飛ばされた。徐々に殴り飛ばした人物が見えてくる。
「遅くなってごめんね。フレア」