「金をくれ!」と言う自称ホームレス美少女に金をあげたら美少女が使用人として同棲することになった。
新作候補第二弾です。
午後10時半。
俺は塾帰りで帰り道を歩いていた。小腹がすいて途中でコンビニに寄りおにぎりを二つ買った。早く帰って食べようとコンビニから出ると、さらに夜は深まり、辺りは真っ暗だった。
街灯が無ければ何も見えないだろう。こんなところを一人で歩いているので気味が悪くて仕方ない。
「相変わらず、気持ち悪いな……」
そんな独り言を呟きながら、早足で自宅に帰ろうと公園の前に差し掛かると、、、
「ねえねえ?お姉ちゃん〜〜こんな夜遅くになんで一人なんだよぉ〜?よかったらウチ来ない?」
男の声が聞こえてきた。どうやら、なんか話しているらしい。
本来なら面倒ごとに巻き込まれるのは嫌なので素通りするところだが、なんか嫌な予感がしたので、公園に入ってみると、
公園のベンチに座る女子を一人の男子がナンパしていた。
男は、半分酔っているのか、千鳥足になっている。一方の女子はただ俯いて、「やめてください……」と言うだけ。
どうやら予想以上に面倒なことになっている。女の子の方が嫌がっているから普通は、この酔っている男をどかさないといけないんだがなぁ………
諦めてどっか行ってくんないかなぁ……
と少し離れた場所でそんな風に思っていると、、
「おうぃぃぃ???いい加減付いて来いよぉ〜?ちゃんと相手してやるよ?あ?夜一人でいるんだからそれ目的で間違いねぇよなぁぁ??」
男はヒックヒック言いながら、その女子の肩を掴む。
「や、やめてください………」
震えながら嫌がる女子は、涙目になっていた。
もうこれは、意を決して飛び込むしかない。そうしないと………彼女が、、、
「おい!その手を離せ!」
俺は二人の近くに駆け寄り、男の手を振り払う。
「んあ?なんだ、お前?喧嘩売ってんのか?ヒック!」
「その子が困ってるだろ?離してやれよ」
「ヒック!お前に、ヒックッ!関係ねぇだろぉ??ブチのめすぞこの野郎?」
そうやって、酔っ払い男は拳を握りしめ掲げる。酔っている男性を相手にするのはとても危険な行為だ。酔っているから、加減が出来ないのだ。
本気で殺しにかかってくる可能性もある。
本来なら、逃げたいがこの女子を置いていったら………
だから俺は立ち向かうことにした。
コンビニの袋をベンチに置いてリュックも置いた。
「お?やんのか?」
そう言うと男は手の骨をバキバキと言わせて如何にも喧嘩モードに入りつつある。
「おらっ!やるぞ!」
そう言って、男が拳を握ってこっちに向かってくる。
よし、やってやろうじゃないか!
思い切り息を吸い込んで、
「おまわりさぁ〜〜ん!この人でぇ〜す!」
俺は大きな声でそう叫んだ。
「!!お、おい!」
「この変な男が女性を誘拐しようとしてまぁ〜す!」
「や、やめろぉ……」
どうやら酔っていても悪いことをしているのは自覚していた様子でケンカそっちのけで逃げていく。
千鳥足のため、フラフラして途中転んだりしていたが、必死だったらしく、一目散に逃げていった。
なんとか、回避できた。俺も総合格闘技を昔やっていたので、ケンカには自信があるのだが、酔っている本気の大人ならどうなるかわからなかった。
負けてるかもしれなかったからこの手法を使ってよかった。
俺は取り残された女子に近づき、話しかけた。
「大丈夫だったか?」
「はい、えっと、大丈夫……」
「なんで、こんなところに居たんだよ?家出か?」
「違う………」
「じゃあ、なんだよ?」
「ホームレスかな?」
「歳は?」
「17……」
「高校生じゃねーか」
「学校は通ってない。中卒……」
「そうなのか……」
てっきり親が嫌いになって家出してきただけかと思っていたが、これは予想外だった。
「お前、腹空いてないか?」
「ホームレスにそれは禁句だけど?」
「あ、悪い……おにぎりやるから食べろ」
「え?いいの?」
「ああ、問題ないぞ」
そう言って俺はコンビニの袋からおにぎりを差し出した。
「ほら」
「ありがと……」
そう言って、彼女はおにぎりを食べ始める。
「そういや、お前、名前なんていうんだよ?」
「プライバシー、言わない」
「あっそ、じゃあ、なんでこんな男が群がるようなところに?」
「なんとなく……」
「そうか………こうなった経緯は……」
「プライバシー」
「だよな……」
彼女はおにぎりを食べながら淡々と話す。
「お前、寝るときどうするんだよ」
「テキトーな場所」
「それ危険じゃないか?」
「は?」
「男に襲われるだろ?」
「そうかな、逃げれば済む話だけど……」
「そうなのか……」
なんかよくわからない女だな。
「バイトとか、仕事はしてないんだよな?」
「してるように見える?」
「いや……見えない」
「面接も行ったけど、ホームレスなんて、相手にしてくんない。汚いからね」
「夜の店は?」
彼女はかなり容姿端麗だし、胸もかなりある方だ。そっちでも十分やっていけると思うのだが………
「やりたくない。」
即答だった。
「なんでだよ?」
「身体を売るなんて嫌だし」
「そっか………」
「あのさ、さっきからずっと気になってたんだけど、なんなん?質問攻めにして」
「してたか?」
自覚症状なし。
自分でも言われて気づいたくらいだ。
「してたよ……なんなの?」
そう言われると困ってしまう。なんで俺はこんなことをしているのだろう。得体の知れない17女の相手なんて………
考えているうちに一つの答えが頭に浮かんできた。
「なんか、かわいそうだったから………」
そう彼女に言うと、彼女は俯いた。そして、拳を握って、
「そういうのが一番ムカつくっ!同情すんなら金をくれ!」
そう大声で言われた。俺たち以外だれもいない、公園に彼女の声が響き渡る。
俺は一瞬あっけにとられたが、
「ほら、やるよ」
と言って財布から2万円を彼女に渡した。
「え、ちょ、ちょっと……」
2万円を出されて戸惑っているのは彼女。
「な、なんで?そこは普通渡さないでしょ?」
「そうか?別に金には困ってないからな」
俺は一人暮らしだが、離れたところに両親が住んでいる。その両親が会社の経営者で毎月俺の口座に100万円程振り込んでくれるのだ。
親元を離れてここにきたもの、将来会社を引き継ぐための知識を得るため。
だから、俺は2万円の支出など痛くも痒くもなかった。くれと言われているのだから渡した。
それに彼女は戸惑っていた。
「ねぇねえ、さすがに冗談でしょ?」
「いやいや、もらってくれて構わないぞ」
「これの代償に身体とか………」
「するわけないだろ」
「じゃあ、なんでこんなにも……」
「金には困ってないって言っただろ。それよりもお前、今日俺の家に泊まっていけ。」
「え?なんで?」
「お前がこの後変な目にあったら俺が悪いみたいになるだろ。だから今日だけ泊まっていけ」
「身体が目当てじゃ………」
「もし、襲ったら遠慮なく警察いけ。交番の駆け込み方くらい知ってるだろ」
「ホントになにもしない?」
「しつこいぞ。何にもしない、神に誓う」
「そ、そう………じゃあ、お言葉に甘えて………」
そういうと彼女は付いてきた。
「お前、シャワー浴びろよ?」
「でも、着替えもってない」
「はあ……じゃあ、コンビニ行って下着買うから付いてこい」
そう言って俺は美女を引き連れてまたコンビニに戻った。
○
午後11時
もうすっかり真夜中である。
彼女の下着をコンビニで買って、ようやく家にたどり着いた俺は、さっそく彼女を家に入れた。
「じゃあ、先に風呂に入ってよく洗ってこい」
「わかった……行ってくるけど……」
「覗かないから安心しろ」
「行ってくる……」
「上着とかは俺のジャージ用意しとくからな?」
そういうと、彼女はコクリと頷いて風呂に入っていった。
俺は自分のタンスからダボダボのジャージを持ってきて、風呂の前に置いておいた。
俺もあとから風呂に入るとして、小腹がすいたので、軽い料理を作ることにした。
野菜炒めと、肉の醤油炒め。
男飯ではこれが定番である。ものの五分でつくれるし小腹がすいたときにはもってこいの料理だった。
彼女が風呂に入っている間に二品ほど完成して皿に盛り付けていると………
「お風呂、ありがと………」
と言って、彼女が出てきた。さっきとは別人のように変わっていて清潔感がある女性に変わっていた。
「お前、そんなに綺麗だったのか?」
「は?なにそれ。きもい」
容姿端麗だとは思っていたが、ここまでとは思っていなかった。
「じゃあ、俺も軽くシャワー浴びてくるから、それ食べといてもいいぞ」
「あ、うん……」
彼女が返事したのを確認して俺は、風呂に入った。
風呂から上がると、皿が空になっていた。
「お前………」
「食べていいっていったじゃん」
「言ったけど………」
「問題なし」
「はぁ」
俺はまた料理を作るはめになった。午後一時。ようやく小腹も収まり、寝れる時間だ。
「じゃあ、お前、俺のベット使っていいぞ」
「は?いやいや、ふつうに床で寝るし」
「フローリング痛いだろ。翌日腰痛くてババアになるから普通にベットで寝とけ」
「じゃあ、アンタは?」
「俺はフローリングでマット敷いて寝る」
「ホントにいいの?」
「ああ、別にいいよ。」
「ありがと………」
「じゃあ、寝るぞ?」
「う、うん」
彼女の返事を確認してから俺は部屋の明かりを消した。
午後一時半就寝。
○
翌朝、午前5時。
俺は目を覚ました。
目をこすりながら、ベットの方を見ると彼女はぐっすりと眠っている。昨日はあんだけ強がっていたが、路上や屋外で寝るなんて相当勇気がいると思う。
ホームレス歴何年かは知らないが、彼女には確かなプライドもあったし、きっと歴はまだそんなに長くないんだろう。
俺は彼女を起こさないように静かに起きて、登校の準備をした。
学校に朝早く行って勉強するのが俺の趣味なので6時にはいつも家から出るのだ。
朝ごはんは途中のコンビニで済ます。彼女の朝ごはんは作っていかないので、テーブルに朝ごはん代五千円と手紙を置いておいた。
『おはよう、学校に行くからもう家にはいないぞ?
そこの五千円は朝ごはん代だから、好きなもの食べてくれ。鍵はかけなくていいからな?ホームレス大変だと思うけど早くいい仕事見つけて自立できるように頑張れ』
と書いておいた。
彼女は綺麗になったし、夜の仕事ならいける気がするが………
俺には関係のないことか。
じゃあ、さよならだ。強く生きろよ?
そう心内で言って俺は学校に向かった。
○
午後5時。
学校も終わり、今日は塾もない。
家直行できるが、俺は一つ懸念があった。それは、あの女に家のものを持っていかれていないかだ。
相手は貧乏だからそういう可能性もあるだろう。
家にあって取られて困るものといえば、家電製品ぐらいだが、買い直せばいいからそんな問題じゃないかも。
そう思いながら、家に帰宅する。
すると、出発した時には消えていたはずの灯りがついていた。
家に入ると、
「あ、おかえり……」
とあの美女が………
「お前、なんでいんだよ?」
洗濯物を畳んでいる彼女にそう尋ねた。
「だって、朝起きたらいなくなってるから」
「手紙に残しただろ?」
「見たけど?」
「じゃあなんでいんだよ?」
「――見つけたから」
「は?」
「理想の仕事」
彼女が唐突にそう言いだすので、俺は意味がわからない。
「待て、意味わからん。」
「そのままの意味。ここに就職する」
「求人してないけど?」
「使用人になって、アンタがいない間、家のことする。」
「別に困ってねぇし」
「アンタが困ってなくても私が困ってる。二万五千円も貰ってるし」
「だからあれは――」
「給料ってことでいいから」
「は?なんでそうなるんだよ?」
もうなんかメチャクチャだ。なんで彼女が………
しかも第一に……
「この現状、悪く言えば誘拐だからな?」
「悪く言わなければ、仕事場」
「襲われるかもしれないぞ?」
「襲わないでしょ?」
「わからんぞ?」
「そうした時は、交番駆け込む」
「理不尽だな……」
「とにかく、拾った責任は取ってもらうから、私をここで働かせてください」
と珍しく彼女が熱心に頭を下げた。こんな頼まれたら断りづらいし、俺も拾った責任もある。
俺がこれで追い出してなんかあったら………
なんか、俺が罪悪感持ちそうなので、雇うことにした。
「じゃあ、日給だけど――」
「五百円でいい」
「ブラックじゃねんだけど?」
「違う、食費とか、生活費を抜いた分」
「まあ、それならいいか……」
「じゃあ、取り敢えず、二万五千円で五十日間お世話になります……」
「お、おう………」
「じゃあ、ずっとアンタって呼ぶのもなんだから名前教えて?」
「じゃあ、お前もなのれ。雇い主なんだから多少の個人情報は流せ」
「わかってるし、石黒奈緒」
「俺は、立石大夢」
「わかった、大夢」
「俺一応、お前より一つ年上だからな?」
「関係ない、なんか敬語を使えない顔してる」
「最低だな。」
まさか、こんなことから自分が雇い主になるとは、しかし、よく考えると、これ同棲だよな。
こいつホームレスとか言ってたけど、色々大丈夫なのだろうか。
俺の心配なんて知る由もない、一つ年下の奈緒との同棲がなぜかスタートする。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。
第一弾の短編も投稿しておりますのでそちらも見ていただけると嬉しいです。