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恋人を欲さんと決起す。

第一話


「ふぅ。これで、引っ越しの後片付けもだいたい終わりかな」


 わたし、如月さくら(35)の記念すべき初めての一人暮らし、その初日。実家から移す家具は多くなかったけれど、家電量販店で購入した大型TVや最新型冷蔵庫やル〇バ等々を半日かけて、2億6千万で購入した6LDKのワンフロアまるまるぶち抜いたタワーマンションの一室に整理した。


「金持ちって言えばタワマンって先入観で買っちゃったけど、地震とか来た時ヤバいのでは?」


 タワマンの15階に家電を大量に運び入れる配送業者さんを悠々自適にながめなら、今さらながらあまり考えなしにマンションを購入してしまったかなと不安がよぎったりもした。


 だがしかし、これから一国一城の主になる身としてはあまりショボい家に住むわけにもいかなかったのだ。


 彼女とか呼ぶかもしれないし。


「ま、だいじょうぶか。世の中こんなに多くの人がタワマンに住んでるんだし、大した問題じゃないんだよ、きっと」


 ぐぅ~。


 可愛らしい音が鳴った。


 気が付けば夕暮れ、夕食を食べるにいい時間帯になっていた。


「もうこんな時間。料理するのも手間だし、今夜はどこか食べに行こうかな?」


 思い立ったがすぐに、スマホで自宅周辺のおいしいレストランを検索。


「うーん、どうせなら引っ越し祝いで豪華にいっちゃえ!」


 検索条件を1万円~5万円、星を4.5以上にして検索をかける。


「おっ、ここいいなぁ。イタリアンでディナーコースが3万円ぐらいか」


 さっそく行ってみよう。


 スマホのナビを頼りにたどり着いたのは、住宅街にある隠れ家的なレンガ造りの店だった。


「いちおう、電話で予約したけど、なんだか入りづらいなぁ」


 カランコロン。


 2時間後。


「あ~。おいしかったぁ。こんなにおいしいのがかーさんの料理以外もあるなんて世界は広いなぁ」


 10年以上実家以外で食事をしたことが無かった。


 かーさんの料理は作り置きでも十分においしいし、かーさんがいないときは自分で料理を(ごくごく稀)してたからなぁ。

 

 これからは、どんどんおいしいお店を開拓していこう!


 そうすれば、あの愚妹も兄を自立した大人と認めるだろうしね!


 もちろん、毎食が外食だと健康に悪いから、自炊だってする(そのための調理器具もそろえたし)。


 妹よ、兄は自立するぞ!


 おー!


「くすくす。ねぇお母さん。あのおねぇちゃん、すっごく可愛いね。何かいいことあったのかな」

「うふふ。みーちゃん。あの綺麗なお姉ちゃんを、かわいぃ、なんてお目が高いわね。さすが私の娘」


 気合を入れてこぶしを振り上げて、小さな声で喝采をあげている姿を、小さな女の子を連れた母娘づれに見られてしまった。

 レストランが住宅街にあるのを忘れていた。


「は、恥ずかし(>_<)」


 ダッシュで逃げた。


 翌日。


「うんうん。わたしももう自立したな」


 朝ごはんにトースト2枚と目玉焼きにウィンナー5本を食べながら、60インチの薄型液晶TVに映るニュースを見ていた。


「朝食を自分で作るなんてやったことなかったけど、案外簡単にできるものなんだなぁ」


 ぶぶっ。


「ん。かーさんからLINEだ」


「んー。心配性だなぁ。朝・ごはん・はもう・食べました、っと」


 ぶぶっ。


「ありがと、っと」


 かーさんからのLINEに返事をして朝食の後片付けをしたら、途端に暇になってしまった。


 実家にいるときは、かーさんが作ってくれた朝ごはんを食べたあとは、ハイリスクハイリターンな細かく稼げる投資をやって、一日に数十~数百億円くらい稼いでいた。


 しかし、実家からでるにあたり、自分の保有資産の整理を改めてしたら、時価総額300兆円をこえており、これ以上お金を稼ぐ意味もない、と改めて思い直した。


 現在保有する資産はその8割以上が長期投資をおこなっており、ほとんど自分で仕事をしなくても資産は勝手に増えて行っていた。


 だから、今までひたすらお金を稼ぐためにPCの前に噛り付いていた生活を変え、もっと健全で楽しい生活をしようと心に決めたのだ。


「と、おもったんだけどなぁ」


 さしあたって、やることがなかったりする。


 かーさんの再婚と妹からの煽りに促されるまま、半ば勢いでマンションを現金一括購入して(ニートがローンを組めるはずがない)、行きつけの家電量販店で最新式の家電を大量購入、ついでにスマホを最新式の奴に買い替えて、、、と行動した。


 しかし、妹から自立しろといわれ、実際に1人暮らしして、もうわたしって自立してるじゃん、と当初の目標があまりにあっけなく達成してしまい、途方に暮れてしまった。


「はあぁ、何をすればいいかわからない~」


 リビングの高級絨毯の上をごろごろする。


「あ~、新品の絨毯の起毛がきもちいいなぁ~」


 ごろごろ~。


 ぶぶぅ。


「む、かえでから電話だ」


「もしもし。かえで、どうした?」


「かのじょは出来たか?」


「ん? 兄に彼女はいないが」


「彼氏はどうだ」


「兄に彼氏ができるわけないだろぅ!」


「ちっ、彼氏ぐらいその無駄にデカイ乳を使えばできるだろう。何のためにそのデカメロンはあるのだ」


「かえで、セクハラはよせ、家族でもそれはダメだ。兄の心が擦り切れる」


「さくら。言ったはずだ恋人の一人でも作ってお母さんを安心させろと」


「!」


「彼氏は嫌なんだろう。わかった。彼氏の方が簡単だと思うが、彼女を作れ。1年以内だ」


「1年なんてあっというまだ、せめて3年!」


「1年。是非はない」


 ガチャ。ツー。。ツー。。


 かえでのやつ、兄をなんだと思っているんだ。


 でも。。。


「これで、目標が見つかった!」


 その時


 わたしは―――


 長年の引きこもりの原因である


「よし!彼女を作るぞ!」


 自分が―――

 

 男の娘(爆乳)


 であることをすっかり忘れていたのだった。

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