場外乱闘4 渡り鳥のヒナ 上
注:今回、すんごい読みにくい文章です。
コンセプトが『言える範囲と言えない範囲』『言葉が足りないとグッタグタになる』で、話自体からガンガン言葉を抜いていったら…あぁ凄惨な回ができたわぁ(色んな意味で)
…空気感だけを楽しんでください。←逃亡
境界の家で療養中、アマナちゃんたち(家族から宿題付き)が遊びに来たり、古城で会った手首ゴーレムさん(本体)たちも見舞いに来てくれました。
「シャル、久しぶり!大きくなったな!」
「ケロちゃんからこういうテイストも好きって…」
「イメチェンしてみたけど…」
「どう??」
「ふおお!」
中折れ帽を小粋に被るブロンズ紳士、重厚な馬に跨る大理石老騎士、黒眼鏡が光るクリスタルモアイ、優雅なドレープを着流す白磁貴婦人。モデルゴーレム軍。
やだ、ステキ!
古城では画一的ゴツめ手首だけゴーレムでしたが、似すぎて同族じゃないと個人判別できないため、リフレッシュを兼ねたボディチェンジだそうです。そんなに簡単に変えられるの?
「石仏から木像は手間がかかるなぁ」
「素材は統一した方が楽ね。経年で個性と味が滲み出ると良い。」
「ゴーレムだって時代に乗ったオシャレしたい!」
「名作になってしまうと博物館運ばれるから困るけど」
「あ、これプレセント。ハピバー♪」
黒くしなやかなボディ、ツンと赤い目に縞模様の金の首飾り、振り上げたおてて。
「まねきねこ!」
「バステトフレームの貯金箱だよー」
「愛ラブまにー!」
後日土魔法練習の見本で自慢したら、ティティアさんメンテ担当のドワーフお爺ちゃんとミミックさんがオルゴール?仕掛けにしてくれました。精巧な音と仕組みで、ちゃりんと硬貨を入れると一曲、ちゃりんと硬貨を入れると別の曲…何曲入ってるの。でも合作うれしい!
あと近所のゴーレム兄さんたち(同じ岩の塊に見える)は、何故か出会い頭に嘆かれて…
「ティティアが”私に似た子”て言っ・ガフゥ!」
「感想には個人差が・グフゥ!」
「広告に偽りあ・ゴフゥ!!」
塩水と泥で傷んだにゃんポケを調べてるドワーフお爺ちゃんに「うるさい」と放り出されてました。
◆◆◆
久しぶりにあの方と再会です。
「……」
「オ・ル・ク!いい加減、名前覚えて!」
「お、覚えてますよぉ……顔忘れちゃってただけで」
「更に抉る!」
ティティアさんの話によく出てくる吸血鬼がやってきました。
オルクの訪問にはすぐにわかりましたよ。だって、ティティアさんの蔓薔薇がポコンポコン咲くんだもん。ケロちゃんと「ねー」「わふ~ん」とニヤニヤむふふ。
談話室の魔族界側(半分は妖精界。室内で越境…)で、ソファに寝転んでゴロゴロするオルクに、ティティアさんが「眠いなら棺桶用意しましょうか?」と。夫が一時帰宅の妻?
オルクが「んー」と抜けた返事で、寝転びながらスライムを呼びよせ、こちょこちょしてます。
「ダレてますわね。忙しいんですの?」
「んー?んー」
御茶を煎れに出て行くティティアさんに生返事をしながら、スライムたちをぽよんぽよんジャグリングするオルク。
そして、ここから迷事件。
「つーか、荒れてるからなー。アスト様がなー。手がつけらんねぇ。セバスさんも止められなかった」
…?
…??
…!!!
「アストさんどうしたのだいじょうぶなのつけものたりないの?!」
「のわッ?! ふご!」
脳が理解した瞬間、ソファに寝っ転がるオルクの上に飛び乗り跨って胸倉掴む私。ぽよぽよオルクの顔に着地するスライムたち。急いでにゃんポケを探ろうとして、そういえばドワーフお爺ちゃんに預けて手元にない。
漬物作らなきゃ!ティティアさんにキッチン借りて、オリーブオイルと、地の国なら根菜なら手に入りやすい?苛立ってる時は香味が強いモノを好むから…
「にんにくーー!!」
「俺の息を止める気か!!」
慌てた私は眩暈でひっくり返りそうになり、スライムに支えられ、オルクに「ちゃんと聞け」とソファに座らせられました。
「シャルが深海の国に落とされたろ?」
「うん」
「その時、深海の王に会ったよな?」
「うん」
「顔かどっか撫でられたのはわかったか?」
「うん?」
「寝起きの深海の王が夜の国の海で暴れてる。対応者は順当に行けばせいぜいセバスさんだった。でも、シャルの件でアスト様が先にキレた。」
「城出して沿岸部の地形変えちゃってんの」「おこぼれ廻って来ないし」と声がするけど
深海の王が夜の国で暴れてる?
私の件でアストさんが先にキレた?
…私、またやらかした?
花オジサン妖精の時みたいに、アストさんが出てリカバリーしないといけなくなった?
子亀が密入国状態だと言ってた。
メンダコ先輩が臨時ビザをくれたけど、王が認めなければ関係ない。
あの時だって、アストさんの魔石が泡を弾いて守ってくれて…
深海の王が苛立って…
迷子の私がいたことが、深海の国の法を侵害してたら?
怒るのは当たり前。
「来た時間も悪かった。ちょうどセバスさんが御茶時間で…って、おいい?!」
だぱああああああああ
どうしようどうしよう! 迷惑かけた迷惑かけた!
何でここじゃなくてアストさんの国へ行って暴れてる?私が魔石持ってたから?
密入国者引き渡し求めても、そこにいないよ!やらかした私はここにいるもん!
アストさんが巻き添えになってる!
「なんだよ、泣くなよー」
私がしたいのは憂いを払うことなのに、余分な荷を負わせてしまった
守ってもらってばかりで、迷惑かけてばかりで
成長してない自分が嫌になる。
「…おい?シャル?」
あの王様は怖かった 滅茶苦茶怖かった
いきなり潰すように圧迫してきて、すごくすごく苦しかった
嗤いながら 玩具にしてた
壊すことを 楽しんでた
ケロちゃんもスライムたちも、あんなに弱って…
まさか…
アストさんが怪我したらどうしよう…?
「シャル!落ち着け!ひきつけ起こしてるぞ!」
だーだー泣いてました。わんわん泣いてました。
ヒューヒューと呼吸が不規則になり体が攣りはじめ、白に呑み込まれるけど、涙が止まらない。胸のあたりがきゅいきゅい締め付けられて、体の魔力がガツガツと波打つ。
心がいたい
「あぁ、もう!」
「まぁ!オルク!催眠魔法はだめです! ケロちゃん!」
「わん!」
ケロちゃんが魔石をタッチして、魔力の循環調整に入り落ち着き始めるも、感情は乱れたまま。ぼろぼろ泣く私の頬をペロペロ舐めてます。
心がイタイ
痛いよぉ
スライム膜の向こう側でティティアさんが『シャルがオルクに泣かされた』と誰かを呼んでます。
喉を詰まらせながらぴぇぴぇ泣いてたら、「へばふはん!」と間抜けな声がした後
「シャル」
「息を吐け。…そう、ゆっくりだ。」
「安心していい。誰もお前を傷つけない。私がそれを許さない。」
会いたくてたまらない、大好きな温もりに覆われました。
◆
「あずどじゃん?」
「なんだ?」
「あじゅどじゃんぶじぃ?」
「そうだな」
「げがじだらどぉじよぉっで わあああん」
「そんなに軟じゃない」
「ごめんちゃいぃぃ」
「何がだ?」
ぎゅぅと首筋にしがみついてぴぃぴぃ泣いて、しゃっくりを上げつつ止まない私を、アストさんは辛抱強く慰めて?あやして?くれました。
頭を撫でられ、髪を梳かれ、背中を優しく叩かれ、ようやくひと心地ついた頃。
腫れぼったい瞼を開ければ、セバスさんに片腕で吊るされたオル…見ちゃいけないやつ。
「……」
というか、私も抱き着いてギャン泣きして、顔が酷いことになってるんじゃないでしょうか。
…今度は別の意味でどうしようですよ!乙女的に!羞恥心的に!
やだぁ~ティターニア様の所にいた時と同じじゃん~やらかしてるじゃん~成長してないじゃん~
恥ずかしくて俯いたままもじもじしてたら、アストさんに顎グイされました。このシチュでそれ?!
放心で固まる私に「ふむ」と一つ頷いたアストさんは、そのまま瞼にちゅぅっと。反対側もちゅぅっと。このシチュでこれぇ?!!
「む。腫れが引いたな。水分はちゃんと摂れ」
「…ふぁぃ?」
「…後にすると忘れそうだな」
顎グイの瞼チッスの次はもしかしてくちび…?!と真っ赤になってたら、異空間から桃とグラスを取り出し、ぐしゃりと搾ってジュースにしてました。鮮度一番生搾り!
…ごめん、私、妄想系乙女脳(暴走)だったみたい。はずかちぃ…!
その後、ティティアさんが「水分補給ならこれもいいですよ」とライチやピングレも渡し、同様にぐしゃぁっと搾り、塩と水で調整してくれました。ありがとう。
◆
結局、深海の王が来襲して暴れた原因は何だったか。
アストさんがキレて、手に負えなくなったのはどうしてか。
「シャルの仇はとった」
「…まだ生きてますぅ…」
「むぅ?」
余計わからなくなった。
ソファに座り、不思議そうな顔をしてるアストさん…の膝の上にいる私。
いえ、そろそろおねーさんて歳だしと御膝は卒業だよねと降りましたら、頭上の御尊顔が破壊力抜群な美の憂いを帯びてしゅんとされましたので、再びアストさんの膝に登ってお座りしてます。これはこれで恥ずか死ぬ!むにぃ!
両手で顔を覆い、ふにぃぃと羞恥に悶えてると、無防備になってた私の片耳の髪をずらしたアストさんは、ぺろりと耳を舐めました。ひぃぃん!
「む。ちゃんと消えたな。」
「~~!! えぇと…?」
「あいつがシャルの髪と耳輪を切った。だから叱った。」
「…そうだったんですか?」
「ちゃんと髪は回収してある。あいつにはやらん」
「アスト様、順を追って説明しないと、シャルがわかってませんわ?」
「ぬぅ?」
ティティアさんがテーブルにお茶を出し、私は塩ライチジュースを貰い、順番に経緯を話してくれました。オルク?セバスさんが遊んでます。
曰く、深海の王が暴れてる原因は回収係スカルさんが挑発しちゃったから
曰く、夜の国沿岸部訪問で、前々から温めていた大規模事業計画を決行
曰く、お迎え担当はセバスさんとオックスさんとケンタロー(ケンタウロス)
曰く、オルクはケンタローの友達で、潜り込んで一緒にお迎え参加する気だった
曰く、いらっしゃったタイミングが、セバスさんが御茶時間で不在
曰く、回収係を我慢させられ髪と痕の件でもムっとしてたアストさんは、これ幸いと執務室から出奔。沿岸部で挨拶を開始
結論、みんなの出番がなくなった(から、オルクが不貞腐れてティティアさんとこに来た)
「…のぁ?」
「オルクは言葉選びがアレと言いますか説明が下手と言いますか…」
「いろいろ足りないな」
「アスト様も似たり寄ったりですがね。外出メモに戻り時間が抜けてましたよ?」
「むぅ?暫く戻りたくない」
沿岸部対応はセバスさんたちがメインで、領地の土木工事をやってしまおうとかなんとか?らしい?
アストさんが出ちゃった結果、予定より違うカタチになってしまい、日程や規模の修正が必要になり、”手が付けられなく”なって?
…よくわからないけど、アストさんが怪我しそうでもへっちゃらなことだけは確かで。
脱力する私。そんな私をケラケラ笑うオルクが恨めしい。
「なんでぇ、シャル、思い込み激しすぎィ~自意識過剰~」
「きぃー!だってだって!あの王様すごーく、ものすごぉーく怖かったんだもん!」
「む?」
「話させてくれないし!いきなり絞めてくるし!ケロちゃんたちいじめたし!」
「ぬぅ?」
「つまんないって…!」
あの緊迫感の光景が思い出され、目がじわりとしてたら、アストさんとセバスさんが「もう一回やるか」「ダメです。チョップは一回までです」「…デコピンはノーカンだ」とコソコソ話し合い?してました。
挨拶よね?普通に国賓歓迎の挨拶だよね?私の件で小言を言ったくらいじゃないの?
「だいたいさ~シャルなんかで深海の王がわざわざ来るかよ」
「へ?」
「スカル先輩が転がして沿岸部で戯れて、保養地と牧草と柑橘…あ」
「牧草?」
「あーもう!チーズだよ!潮風でミネラルたっぷり牧草を食べた魔牛の乳で、新しいチーズ作ろうぜって話になったの!」
「…?」
「断崖絶壁を開墾させてレモンも植えるの!人族界にいるオコタ?モンスターって新種魔物の餌?のみかんもな。だから現場監督でオックスさんと地主のケンタローが出る予定だったの!」
「……」
「シャルはレモンも好きだと言ってた。レモンケーキも作れるぞ。」
「……」
「レモンのはちみつ漬けも期待している」
「……」
アストさんが深海の王を叱った?のは私(耳と髪)が原因だけど
私が泣いた原因の”アストさんに迷惑かけた”は違ってて
オルクの言葉が足りなくて、説明がアレでコレで…
「私、オルクに泣かされた…」
泣き損にしょぼくれる私を、アストさんがいいこいいこしてくれました。
◆◆◆
ちなみに。寝起き来襲した深海の王は、アストさんが「おはよう」の挨拶で沈め、引き上げ「久しぶりだな」「元気そうでなによりだ」「それより何か言うことはないか?」と眠気覚ましの連続往復ビ…げふんげふん。
異界の挨拶ってデンジャラス。セバスさんとオックスさんも角突き挨拶するって言ってたし。
まだ海岸に滞在中で、今度こそオックスさんたちがおもてなしすると。
「俺、今からでも潜り込んで――」
「アスト様がやらかした分の土地変更書類を任せたでしょう。終わってませんよ」
オルクは、ティティアさんを困らせた件で、セバスさんに反省文と片付け(手間で面倒で苦手な細かい書類)を命じられたそうな。書類作成等、頭脳系オフィスワークが嫌いらしく叫びながらシゴかれてます。
一言申し上げてよろしいか?
「ざまぁごらんあそばせ!」
「…シャル、真っ赤な涙目で言われても怖くないぞ?」
「ふんだ!将来のための予行演習です!」
「そうか」
「そうです!」
悪役令嬢になった暁にはもっとかっこよくキメてやります(予定)
※グッダグダ難解文に対する申し開き(訳:今回のいらん感情講釈)
<説明前>
シャル ぴぃぴぃ(;ω;) ←困らせた怪我してたらどうしよう(混乱)
アスト なでなで(´·ω·`)ノ ←深海の王に怯えてると思ってる(慰)
<説明後>
シャル ぷぅぷぅ(#:ω;) ←よくわからないが泣かされ損と理解(怒)
アスト なでなで(*´ω`*)ノ ←初めて他者に怪我を心配された記念(嬉)
シャル「深海の王様は魔族なんですか?」
アスト「いや、純血種の竜族だな。魔力もあるがヘタクソだ。」
シャル「…竜族も過激な挨拶習慣なのかしら…」
アスト「相手の力量を測れず手加減もできない…教育が必要だな」うずうず
セバス「魔王様、ステイです」ピシャン
※追記 20201224 活動報告にて「場外乱闘の更に蛇足」を落としました。
https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/2708366/




