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7通目6 カーテンコールと舞台裏

 さて、長きに渡る『おばけ屋敷』の話はいかがでしたか?

 どこまで書いたっけかなー


 ◇◇◇


 初回の催しが無事終わり、広間で人族スタッフさんと魔族さんたちとわいわいと打ち上げ会。ハジメテの人族交流とお化けごっこが楽しかったようで、皆様笑顔でよかったよかった。

 特に主役ポジションのベスさん(赤い髪の令嬢役・語り部役)、および、分散しながらも縁の下の力持ちスライム軍団(血痕役他多数)は大活躍すぎてみんなにワッショイワッショイされてる。

 ぽよんぽよんとスライムが飛ぶ。なにこれかわいい。


「やー、ゴーレム部隊さんの手首競走には驚きました。あれほどの速さが出せるとは。」

『ガタ・ゴト・ゴトト』

「私はシャドウさんの複雑なコンビネーションが魅力的でしたわ。影拡大から文字変化の細かい動き!」

『シュワワワ…』

「スライムさん、何役やったのですか?血痕と水クッションと…え?闇牢の中って黒組スライムのテリトリーだったんですか?」

『ぷるぷるぷる』

「蝙蝠部隊さん、パトロールありがとうございました。パニック野郎を超音波で一発昏倒。おかげでチキン組の素敵なネタがざっくざく~うふふ」

『キィィィン』

「ベスさまぁ!もっと!もっと踏んでください!!」

「おだまり。この豚野郎が!」

「その瞳にシビレルゥーーー!」

「無かった…俺出番なかった…」

「ヴァンパイアさんは、ほら、()()のシャドウさんや()()の蝙蝠軍も活躍してたじゃないですか。」

「もっと華がほしいいい!!」


 舞台魂に火が付いたらしい。


 そんな和やかにやっていると、にこにこ笑顔のイリオスお兄様が近づいてきて、そのまま無言で別室へと捕獲されました。

 こここれはオコです。怒です!


 ◇◇◇


「さて、シャルロット。何が、どう、ダメだったか、わかった?」

「はははははいいい…!」


 実はすんなり開催できたかというと、そうは問屋が卸しませんでした。

 お化け屋敷自体は各々練習したり、リハを通してよくなってたのですが、それを見ていたお兄様は早い段階で「簡単にでも全体の流れはやった?」と。催し全体を、最初から、最後まで、軽く流しで。

 すると、出てくる出てくるアレヤコレヤ。「魔族の方々をサポートする人族スタッフが欲しい。」とか「役に幅がありすぎて、魔族さんの一部に偏りが出てる。」とか、あとあと……

 ダメ出しが判明した翌朝には、イリオスお兄様が人族スタッフ一式揃えて連れて来ました。ご褒美係用に本国侯爵家と隣国別邸の幹部シェフのセットまで。


「人族スタッフさん投入が遅すぎました。ありがとうございます。」

「それは前回言ったからいいよ。次は?」

「猫耳カチューシャを注文する時に、紹介されたお店にそのままランジェリー依頼も出してしまいました。」

「そうだね。アシュリー侯爵家御用達になりたいなら、複数店舗で競争させないと。もっとあるよね?」

「ランジェリーを私の名で依頼してました…」

「6歳なりたて少女がセクシーランジェリーを依頼するなんて。噂になる前に封じたよ?

 なに、紳士の皆様は()()黙ってくれた。名は匂わす程度に伏せるべきだったね。詰めが甘い。」

「主宰なのに送り出しの礼に立ち合えませんでした…」

「壊滅的にダメだったね。こっそり薔薇園クライマックスのデバガメに夢中になって。

 枝や葉を生やした頭を見た時どうしてくれようかと思ったよ。アストも一緒だし。淑女教育を間違えたかな?」

「主宰なのに開催中もあっちこっち出歩いてました。」

「白い影のおばけが、猫耳フードのシャルとシーツおばけのアストとわかったときは、君たちここでなにしてるの?と。できることは代役に任せなさい。」

「いや、アストさんがおばけ役やりたいって言うから…」

「回収して休憩室固定にしたのは、司令塔が無暗に徘徊されると困るからだよ。わかってるだろう?」

「はい…」


 ダメ出しが終わる気配がありません。これやばくね?

 お説教ターンがはじまりました。やっぱりやばいね!


「侯爵家スタッフにしても、本来のゲストである魔族の皆様をもてなすのに、一番最初に思い立つだろう?何を考えてた?ばかなの?あほなの?あぁ、おまぬけだった…」

「返す言葉もございません…」

「先のレシピ依頼後、本国侯爵邸シェフはすぐ私の元へ向かってたよ?コック長へのもてなしに役立ってみせると。いつ出そうか迷ったよ。」

「返す言葉もございません…」

「力自慢の魔族が悲鳴を上げるのは苦手なのも気づいたよね?傷つけられた経験が少ないから、奇声はできても悲鳴の上げ方がわからないと。レクチャーする気だったの?暇なの?」

「返す言葉もございません…」

「被虐趣味スタッフがいるのを父上への挑戦者で知ってたよね?悲鳴バリエーションが多いのも。指導に熱を入れるべきなのは、悲鳴の出し方ではなく扱き方。」

「返す言葉もございません…」

「空間移動の魔術も、あれほど綺麗に整えられるのはアストとセバスのおかげだよ?シャルは異次元魔法使えても拳大だろ?仮に成功しても途中で次元に挟まれて人生が詰む。」

「返す言葉もございません…」

「衣装や小道具の補助スタッフも…」

「安全性に関して…」

「闇魔術も…」


 山のような私の問題点とお兄様主導の改善点。

 問題の七割方をお兄様セレクトの人族スタッフが回収し、残り三割も魔族さんたちが回収。私ゼロ。


 例えば、嘆きの塔の乱雑音と数々の悲鳴のバリエーションは、加虐趣味()被虐趣味()な人族スタッフ一同が担当してくれました。

 あちこちの悲鳴をどうしようか考えてる私に、炸裂するお兄様のツッコミ指導。


「そんなことは人族スタッフを呼んで頼めばいい。ついでに魔族たちのフォローもやらせていい。そうすれば城内で人族交流ができる。」


 鶴の一声。その時現場が動いた。です。


 瞬間移動や亜空間収納等の異次元空間魔法は、アストさんとセバスさんが綺麗に張ってくださいました。

 私が「ニャンコ型ロボの〇ジゲンポケットのあのドアがほしい」と呟いたら、概要を聞いただけで空間の綻びが全くない程なめらかな魔法を展開。すごい。


 というか、社交界に出る前に『セクシーランジェリーのシャルロット』と変な渾名が付くとこだったのがイタい。どんな変態だ。


 ◇


「主宰は司令塔(ブレイン)だ。人の使い方がへたくそで目も当てられない。」

「返す言葉もございません…」

「で?シャル。薔薇を得て送り出した招待客の反応を見ると、結果は上々だ。すぐに噂が廻るだろう。おまえはあちこちに呼ばれるようになる。その準備は?」

「あ。」


 わすれてたーーー!!

 そうだった、ホストとして不可に片足踏み込んでるのに、成果となる隣国での実績は、肝試しイベントだけで終わるわけがありません。いわば、『特別な夜の語り部会』は名刺。

 知ってもらって、次にお付き合いをとなる。そこでどう顔を繋ぐか、何を得て学ぶか、そのあたりまるごと忘れてました。


「シエラ」

「はい。イリオス様。」


 デキる私の侍女はさっとイリオスお兄様にいくつかの書類を渡します。


「こちら候補となる家主催のお茶会スケジュール一覧です。

 今後優先すべきお客様が入られるお茶会には、マークを付けてあります。お嬢様の服飾品、アシュリー家特産物の贈り物等、準備できております。名簿と贈り物候補は流行と時勢もありますので別紙に。

 今夜の様子からもう少し書き加えてもよいかと思われます。特にココとココ。」

「うん。ありがとう。合格だよ。」


 シエラさんの仕事が早い!

 ガクガクブルブルと、リストを見て何かを書きこんでるお兄様を見る。


「シャル、現時点では『不可』に限りなく近い『可』だ。とても父上に見せられない。補習と今後の動きで挽回しないと、おしおきフルコース特別編だよ?

 まずは、ここから来る茶会に出なさい。フィーリアを付ける。彼女に付いてやり方を覚えなさい。」

「フィーリア様ですか?こちらにいらっしゃるのですか?」


 ◇


 フィーリア様というのは、イリオスお兄様の婚約者で、我が侯爵家の優秀な元護衛担当です。

 男爵家筋とはいうものの前男爵の庶子で、些か侯爵家跡継ぎの婚約者には身分が足を引っ張ります。

 が。あれは今から六年程前。


 我が家の昇給試験。当時13歳のヴァルクお兄様が試験官で『一本取ったら合格』の単純ルールにて、会場となったアシュリー家邸宅の天井をぶっ壊し、兄の頭上に流星のごとく瓦礫の山を落っことしたという、破天荒な技とスピードで一本奪取をやってのけました。(壊した天井は本人の土魔法で元通り直したらしい)

 当時、バーサーカーと呼ばれた思春期の血の気の余ったヴァルクお兄様は、初めて地に膝をついたとか。

 ちなみに瓦解振動と、流星群のような綺麗な放射線を描く攻撃に目を輝かせたお母様が、興奮して産気づいて、スポンでオギャーと生まれたのが私。近年稀に見る安産でよかったネ★と皆がお祝い。


 ダイナミックなフィーリア様と、細かく裏で動くのが得意なお兄様の組み合わせに、当時お父様が「一緒に仕事してみたら?」とやらせてみたら、陽動と暗躍の按配が上手いこと上手いこと。


「キミと仕事をするのは楽しいね。どう?これからも隣でやってみる?」

「あら。いいですね。思う存分動いても許して下さるなら喜んで。」


 どんなプロポーズ。

 結果、社交界で格差婚と言われようとも、実力ありきのアシュリー侯爵家に、正面から『嫁入り受理』を決定させたのです。

 そんなイリオスお兄様とフィーリア様は、再来年春に挙式予定。


 ◇


「フィーリア様は侯爵家夫人教育で忙しいのではありませんか?」

「それがストレスで暴れそうだから、夫人教育の何度目かの実地研修として各国を渡ってる。もうすぐ着くから、本国へ帰国するまでシャルにマンツーマンで指導役に就いてもらう。

 フィーリアは人に教えることで復習できるし、実際の社交界で練習できるし、シャルの根性叩き直しに彼女の性格はストレートで良いだろう?」

「…ソウデスネ……」


 父がねちねち系なら、フィーリア様は正面から叩き潰す系です。


「私たちと一緒に帰国で構わないと父から伝言が来た。帰国の途につくのは来年の秋。あと一年と二カ月。じっくりやっていこう。」


 楽しい楽しい未来のおねーちゃんとのお勉強会がやってくるようです。


 まだ終われませんでした。


 → つづく。

Q おばけ屋敷のどこかにアストさんおばけが登場してます。

  さて、どこでしょうか?

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