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6通目2 コック長さん>魔族さんたち

 えぇと、一枚目から続きまして…どこまで書いたっけかなー…


 そうそう、おばけ屋敷やる話になってから、アストさんの配下さんたちが凄く増えました。

 スライムがいっぴき

 スライムがにひき

 スライムがさんびき…

 まとまって大きいスライム…


 ウォーターベッドな肌触りに寝落ちしました。くぴぃー



 ◇◆◇



「それでは発表します。ご協力よろしくです!」


 さて、プレゼン会議でゴーサインが出ましたので、実際のお化け屋敷の準備に入りました。しかし、魔族の皆様が人族の私に対して、協力的とか友好的とかそんな甘い話はありません。信頼関係できてないので当然です。

 それでは短期間に協力関係?を結ぶにはどうするか?手っ取り早いのは、お父様式の力で屈服させるか、お母様式の薬を盛って弱らせて屈服させるかです。…少女にそんなバイオレンス要員求めないでください。


 そこで考えました。


 平和的解決があるではありませんか。飴鞭方式で。


 ◇


 まず、セバスさんを通して、厨房に行ってコック長とお会いしました。

 話を聞くと、コック長も魔族の方ですが、人族の食文化に興味がありいらっしゃったそうです。そっと街で購入した御菓子を渡しました。挨拶の賄賂です。


 アストさんがパンケーキをおいしそうに食べる姿からアタリをつけましたが、予想通り今回訪問されている魔族のみなさんは、人族の食事に興味津々。魔族にとって『食べなくても生きていけるけど、食欲をそそられる嗜好品』で、甘味好きもいれば辛いもの好きもいます。

 コック長には、とっておきのチーズや茶葉も渡し、こんな料理もありますよ~な情報を流しました。食いつきが良かったです。


 更に話を聞くと、コック長は人族の街までグルメ研究に行きたいようですが、長時間の人化が苦手のため、レシピや技術を覚えられる程長くはいられないとのこと。せいぜい本屋でレシピ本を買う程度。できればじっくりレシピ本を見比べて買いたい、本場の味を食べに行って、実際の動きを見て作り方を学びたい!


 ということで、お兄様経由で本国の我が家に、オススメレシピ集(ただし秘伝でないもの)を届けてくれるよう手配しましたら、必要な材料や調味料、調理器具、仕上げの小物も同封されてました。あとピクルスや漬物等、味がしみて美味しくなった物も。

 流石我が家のスタッフ。レシピに食材の特徴や、具体的なコツ、綺麗に仕上がるワンポイントアドバイスまで書いてある。最後の『微力ながらもお手伝いできればと思い、筆を執りました。コック長さんが素晴らしい食と出会えることを祈ってます。』の一文にコック長は感涙の嵐。レシピ集を家宝にするそうです。

 特に我が家オリジナルの秘伝のタレ(レシピはナイショ)は、大変喜んでいただけました。お礼の返事を書いとこ。


 そんなコック長と侯爵便に同封されてたパプリカのピクルスをつまみ食いをしてたら、通りがかりのアストさんが厨房の扉の陰からジト目で見てました。


「アストさん?」

「……。」


 眉間に深い深いしわがあったので、しゃがんでもらってそっと口へピクルスを運んだところ、ポリポリ食べて、しわは消えました。よかった。


 ここまで種は植えたので、次に『おもむろにお願い』モードに入ります。


「お化け屋敷をやりますが、魔族の皆様にも協力していただければ嬉しいです。でも、私が話して聞いてくれるでしょうか?アストさんの御手を煩わせるのも悪いですし…コック長さん、皆様と仲良くなるにはどうしたらいいですか?」


 話を聞いて、自分の胸をドンと叩くコック長。マカセロってことですね!やっほぅ!


 はい。後方部隊(コックといぶくろ)を制圧です。


 ◇◆◇


「今回のイベントは自主参加です。するしないの判断はお任せします。ただし食費(おこづかい)は私が握ってますので、働かざる者食うべからずでいきます。()()()()()は出ますので、ご安心ください。」


 ここで、皆様がお好きだというコロッケの載った皿を、すっと取り出します。フフフ、注目度が上がった。


「ご協力によって、コック長から追加のごはんが出ます。

 我がアシュリー侯爵家自慢の素敵な料理を提供できるようバックアップいたしますので、皆様が気になる『人族グルメ』をご堪能いただけます。

 人化して街にこそこそ行かなくても大丈夫!できたてホヤホヤ。一度は食べたい居酒屋の味。宝石箱みたいなスイーツ。魔族界に戻ればみんなが羨む。そんなグルメが待ってます。」


 良い感じで食いついてきたので、続いて鳥唐揚げの皿も持ちます。あ、涎出たよ。


「勿論、こんな小娘の話を聞かなくても、全っ然問題ありません。『アイツ尻尾巻いて逃げたんだぜ。人族の少女から。プププー』と素敵な噂になるかもですね。笑いを取りたい方、オッケーですよ?」


 美味しいごはん皿を掲げながら、生意気な発言パレードの私の背後で、仁王立ちで腕組んでる頼もしいコック長さんも、良い感じの威圧をしてくれました。その手にはフライパンと中華鍋(使用後。残り香付) 焼肉の香りも破壊力あるよね。


 ◇


 私の背後その①コック長から餌付(いあつ)されて、顔色の悪い方(ダイエット中?)もいらっしゃいましたが、スっとコック長の横に立った私の背後その②のアストさんが、小腹用赤カブの酢漬けをポリポリしてる姿を見て、全体的に友好的協力的な雰囲気になりました。涎も垂らしながら。

 ありがとうコック長!ありがとうアストさんと漬物!


「はい、ではー、魔力自慢の方は魔石の提出を~純度の高いものがあれば是非。人間作の魔石はちゃっちぃですから、魔族様たちの美しい魔石は垂涎の的! え?セバスさん?おぉさすが!みてみて凄い綺麗~!」


 古城ひきこもりストレスで大量の魔力を持て余していた魔族の方々は、とっても高品質で綺麗な魔石を作ってくださいました。中には貧乏ゆすりばりの高速で魔石(粗品級)を作れる方もいるそうです。貧乏ゆすりて。あ、古城で響いていたポルターガイストな振動ってそれ?


 魔石販売ルートについては、見本の魔石を鑑定した結果、一般的に卸すには品質が良すぎるため、アシュリー家ネットワークの信頼できる所に販売することとなりました。

 夏の間だけ必要な分だけなので定期販売は不可。出元を探られても困るので、お兄様の提案に乗りました。

 一旦お兄様が預かり、代わりに資本金を提供。販売時期は、お兄様が市場情勢を見ながらチョロチョロと出すことで、価値の暴落を防ぐようです。販売実績は都度、資料と明細を添えてセバスさん経由でアストさんに送ります。ホウレンソウ大事。


「続きまして~おばけ係です。配布したルートと解説図をご覧ください。

 決められたルートを通り、途中でクエストをこなし、薔薇を手にしてゴールです。

 ルートとなる部屋は、基本の演出テーマはありますが、脚色してもかまいません。人族のハートは弱いので、程度を知るために先に私かシエラにご相談ください。眷属をお持ちの方や小道具を持ってきたいという方、そちらを含めた提案でもかまいません。

 準備期間は二週間。係の決定は三日後に行いますので、各自面白いアイデアがありましたら、お聞かせください。」


 当初おっかなびっくりな魔族さんたちですが、『お化け屋敷とはなんぞや』を伝えたところ、あぁ、それならできそうなことがあるな、室内に籠ってたら体の毒だしな、ついでだからアイツ誘ってみよう、美味いごはんもあるしなと、どんどん膨らませてくださいました。

 どうやら人族の少女2名(私とシエラ)に、どう接したらいいかわからなくて困惑してたようです。逆にわかって慣れたら、予想以上のフレンドリー。よかった。


「アストさんとセバスさんは、皆様が無茶しない(城をこわさない)か全体の監督を。

 あと、人族の勉強会も実施します。興味のある方は参加してください。見学だけでも結構です。何か質問ありますかー?いつでも聞いてくださって大丈夫でーす。」


 楽しい夏のイベントが始まりました。


 ◇


「シャール ろ・ッさん? コれは ドウすル が イイ・デスか?」

「シャルでいいですよ~ スケルトンさんはそのカッコイイ骨組みを活かすべき!古城の骸骨騎士(ボーンナイト)!あの鎧の方もお友達です?」

「シャルー サン、トモだち ベスが 興味アって、キタですが、どうでしょウ?」

「わぁ、綺麗なおねえさん!サキュッパスさんですか?あ!それなら重要な役で、こんな感じの服装で…できれば…」

 ぷるぷるぷるぷる ぷるぷるぷる

「スライムさんは出番多いです!あっちこっちで出ますので、待機と出撃と何匹かでチームを組んでいただけると助かります。赤組と黒組と透明組と……」

 ガタ・ゴト・ガタゴト・ガ

「ゴーレムさん、手首だけで動かせませんか?ここぞ!というトコで…白魚のような魅力的な手もできます? あとダッシュでどのくらいの速度でますか?」

 ガリガリギリギリ

「ミミックさんはですねー、こんな仕掛けがほしいんですよ。そう。こうして、こうしないと開かないかんじで…」


「衣装係欲しいなぁ…え?ベスさん、得意な友達いらっしゃる?」

「どなたかー!異次元空間魔法使える方はいませんかー?」

「こっちは幻覚魔法の助っ人を募集してまーす」

「大きめの――ありませんか?できれば――の――だけのやつ。」

「氷魔法と風魔法の最弱レベルが出力可能な方は~?」

「「「それシャルのコトー!」」」


 ◇


 鬱蒼とした木々に囲まれ、立ち込める靄も晴れず、全体的に薄暗く、不気味な古城なのに、元気な少女の声が響いてます。

 わいわいガヤガヤ。


「セバスよ…」

「はい、アスト様」

「人族とはなんとも面白いものであるな。」

「シャルロットお嬢様だからでしょう。」


 時々怒声も交えて。


「そんな話術で怖がられるかァ!!あなた泣く子も黙るヴァンパイア様でしょ!ヨンヨーテー大師匠に謝れ!」

「どなた様ぁーー?!」

「稀代の大・大・大名人様だ!!!」


 語りの演出に力みすぎた私を見て、「鬼コーチのお嬢様もかわいい!」と悶えてるシエラさんは、今日も平常運転です。


 乱筆乱文にて、魔族さんとの交流を楽しんでいる夏の一コマが伝わったかと思います。

 今回はプギャーもなく、『落とし穴 あるんじゃないか? アシュリー家』とヒヤヒヤしてますが、私は今日も元気です。

 末筆ですが、私に期待できない分まで、お姉様の益々のご活躍をご祈念申し上げます。


 かしこ。

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