異世界窓口
ここは異世界窓口、今日も悩める世界の住人が訪れる受付である。
「いらっしゃいませ。本日は、どのようなご希望でございますか?」
「はい、勇者召喚を少々」
対応するのは眼鏡にスーツの女性職員。
相談者は、ローブ姿の怪しい男性だ。
「勇者召喚ですね。召喚相手のご希望などございますか?」
「はい。年齢は15から17歳、地球産の男性をひとり欲しいのですが」
「地球産ですか、地球産は需要が高いので、666番の召喚待ちとなっております。
年数的には約10年ほど待っていただく計算ですね」
「10年。そうですか。勇者候補には地球産がいいと聞いて来たのですが残念です」
肩を落とすローブの男性。
女性職員は気にすることなく、手元の資料をめくっていく。
「人工勇者でしたらすぐ手配できますが」
「人工勇者ですか?」
「はい、我々異世界相互扶助協会が丹精込めて一つ一つ作り上げました人工勇者は、本人への報酬いらず、疲れ知らず、聖剣も必要なし。アフターケアも万全です」
「それは、素晴らしい!」
「ええ、体色は緑、目は三つで角が一つ、口がお腹にあることを除けば、見た目も地球人と大差ありません」
「それって化け物。勇者?勇者ってなんでしたっけ?」
「ちゃんと脳みそもありますし、言語機能も発達しています。口がお腹にあるため服を着せると少しモゴモゴしますけど、聞き取れないほどではありません」
「いや、喋れないことを心配してるわけでは」
「彼はとにかく強いですよ!
はい、ここおすすめポイントです。我々、異世界相互扶助協会が丹精込めて作り上げた勇者は、目からビーム、口から毒ガスを常時吐き出し、腕力は鯨ですら一撃で粉砕します!」
「え?粉砕?びーむ?毒ガス?
召喚予定地、王城なんですけど、魔王城に降りるわけではないんですけど」
「大丈夫です!彼らが召喚された瞬間に!魔王の存在意義も世界も吹き飛びますから!!」
「え、それって?」
とても素晴らしい笑顔で受付嬢は笑う。
「はい、魔王も世界もイチコロです!」
ここは、異世界窓口。
今日も新たな世界が、救済を求めてやってくる。
「いらっしゃいませ、お客様。今日は、どのような御用でございましょうか。
勇者ですか。
魔王ですか。
転生を希望ですか。
勇者召喚ですか、それでしたら、人工勇者などいかがですか?」