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日々のささやかなる喜怒哀楽の段

以前ツイッタ―で少しつぶやいた内容に今日少し進展があったので、まとめました。

 むすめは日々JRを利用しておりますが、乗り降りに使う少し大きな駅で時おり、ひとりの不思議なおじさんに出くわすらしいです。


 一番最初に見かけた時には、件のおじさんは、かなり怒っていたとのことでした。

 いわく

「ガタガタ言ってんじゃねーよ!!」

 そう怒鳴りながら、入線してきた電車に向かい、蹴りを繰り出していたのだと。

 一般的に言えば、かなりアブナイ感じの人なのですが、どうしてか気になって、彼から目が離せなかったようです。

 帰宅後その話をしてくれてから、短く

「まあ、電車だからガタガタ言うよね」

 とのコメントでした。うん、確かにね。


 少ししてからまた、うれしそうにむすめ

「そのおじさんにホームで出あった」

 と報告してきました。

 が、今度は

「うれしそうにさー、ぐるぐる回ってた」

 とのこと。

「はあ?」

 何があったのだ? おっさん。しかし続けて彼、

「『四かいてーーーん』って言ってた」

 ああ~羽生結弦選手の件ですね。と私も納得しました。

 かなり世相には敏感なようすですね。

 それにしてもホームから落ちなくてよかったです。

 そして、うれしそうでよかったよねー、とむすめと話しておりました。


 しかし次に出会った時には

「泣いてた」

 のだと。

 この時までにはかなり気になっていた『アヤシイおっさん』(勝手に名前つけるな)でしたが、これには私も動揺しました。

 彼を泣かせたものはいったい??

 むすめに聞くと、この時は続けて

「さいじょうひできさーーーん!!」

 と絶叫していたのだそうだ。


 おお、あんがい近い世代なのかも知れない……

 ますます気になるおじさんではありました。


 しばらく噂を聴かなかったおじさんでしたが、本日むすめからメールをもらいました。


「あのおじさんに会った。今日は……」


 ごくり、と生唾を飲み、続きをスクロールする私。


 なんと、駅員さんと肩を抱き合っていたのだそうです。


「工藤静香さんが好きなんだよー」

 おじさんは何度か、そう繰り返し、笑っていたのだと言います。

 そして、肩を抱いた駅員さんは優しく

「そうなんだー」

 と。そして

「工藤静香さん好きなんだね、こっち歩いてね」

 そう声をかけながら、どこかに連行して行ったのだそうです。


 おじさんの喜怒哀楽は流れゆく大河のごとく、とめどもないものだなあ、としみじみ思った秋の宵。


 日常というのは、特に驚くべき展開もなく気の利いたオチもなく、どこでお話を打ち切っていいのか分からない、冗漫かつ壮大な物語なのですね。


 そのおじさんも、とりあえず安寧に日々を暮らしてほしいものだ、と改めてむすめと共に切に祈ったのでした。

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