対策
翌日、円は啓二を大学のそばの喫茶店に呼び出した。
円の方がが啓二を呼び出すのは珍しかった。
何の話かと啓二がいぶかしく思ってると円が切り出した。
「単刀直入に聞くわ。SNSのシュリーにブロックされてるIDの数はどれぐらいか分かる?」
「正確な数は分からないけど、4、50位じゃないかな。あいつらひょっとして罰当たったか?」
「例のバイトの昨日の客の一人がその罰当たりだったのよ。
彼女に付き添われてきたんだけど、足骨折してた」
「あーあ。馬鹿だね。触らぬ神に祟りなしって言葉知らないのかよ」
「それ、前に私があんたに言ったんだけど」
「そうだっけ?」
「そうよ」
「まあ、それは良いとして、俺に何が聞きたい?」
「そのブロックされたIDの一覧表を作れるかしら?」
「出来るかも知れないが、そんなもの作るのはいやだ」
「何故?」
「だから触らぬ神に祟りなしだろ。
シュリーの件はもう偶然では済まされないレベルだし、俺は御利益貰ってる。
自業自得の連中に関わって俺まで罰が当たるのは御免こうむる」
「エゴイストね」
「何とでも言えば良いさ。それにリスト作ってどうするんだ?被害者の会でも立ち上げるのか?」
「まず、同じような事が他の人にも起きてるかどうか確認する」
「それで?」
「そこからはそれぞれの状況を見て考える」
「それ、どれだけ時間が掛かるか分からない上、解決になってないと思うぞ。
そんな事より直接御本尊に接触した方が良いんじゃないかな?」
「うーん。正直彼女恐ろしいのよね」
「でも福の神だろ。それに裏でごそごそ動いてれば安全とは限らないだろ。兎に角、俺は関係ないから」
「あんたはそう言う奴よね。分かったわ。直接接触してみる。」
そう言うと円は席を立った。
喫茶店を出て、大学の方に歩きながら円は考えた。
直接接触すると言ってもどうするか。
相手の事で分かってるのは
①名前は吉 祥子
②T高校の1年生
③歌手のサラスバティー・モトワニと同級生
④おそらく最上仏具店の娘と友人
と言う事。
円は消えたビデオは見てなかったので、容姿は分からないが、仏具屋に充満していた気配は知ってる。
同じ場所に居れば気づかないと言う事は無いだろう。
さて、どうやって接触するか。
もう夏休みだし、部活動をしてるとは限らない。
T高校で接触するのは難しいだろう。
サラスバティー・モトワニの方は住所等は極秘らしいが、音楽活動の方は公開されている。
スマホを使ってサラスバティー・モトワニの音楽活動について調べてみた。
少し先だが、映画のプロモーションの一環でお盆の8月12日にK駅の大階段でコンサートを開くらしい。
同級生の無料のコンサートなら、行ってもおかしくない。
あれだけの気配を放つ相手だ。
コンサート会場でも特定するのは容易だし、接触できる可能性は高いだろう。
残る手がかりは最上仏具店。円はバスで最上仏具店に向った。
最上仏具店では開運グッズコーナーの前に女性客が数名いたが、それらしい人物は居なかった。
開運グッズを見ると、以前のものよりより強い力を感じる。
売れているようだし新しいものが補充されたのだろう。
何時補充されるか分からないから、ここで接触するのは難しい。
店員に下手な事聞いて向こう側に変に伝わるのも怖い。
円はバイトの時に、運の悪いお客向けに使うため、開運グッズを幾つか買った。
この前の客の連絡先を聞いてたので、そのうちの一つを渡す事にした。
後はコンサートの時接触出来る事を期待するだけだった。