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光るポップ広告

 啓二は円の言う事は大げさすぎると思ったが、一応警告は啓太に伝えておいた。

啓太は発光現象の調査より、サラスバティーさんへの再インタビューを優先すると言う。


 せっかくのネタがボツになったので啓二は不機嫌だったが、サイトの方にたれ込みがあってましになった。

『K市不思議館』には情報提供用フォームがあり、怪奇現象のたれ込みがたまにある。

久しぶりのたれ込みは仏具店で売ってる開運グッズコーナーのポップについてであった。

店内は十分な明るさがあるのに、サインペンと色鉛筆で描かれたポップが輝いて見えると言う。

照明が反射するように表面に何か特殊な透明塗料でも塗っているのではないかと啓二は思った。


 気になったのはその店の名前だった。

『最上仏具店』

啓太がインタビューした女子高生3人組の1人、仏具屋の娘の名前が確か最上霧子だったなと啓二は思い出した。

ちょっと興味が出て、啓二は最上仏具店を訪れてみる事にした。


 実際に目で見るとそのポップは反射ではなく確かにそのものが発光していた。

啓二は考えた。

そう言えばインド料理店で、色鉛筆で描かれたなにやらと言うインドの女神の像が光ると話題になったような。

あれは確か……ラクシュミー。

そう言えばこの像も奈良時代風の服装のふっくらした女性……吉祥天。

この2つはただの偶然とは考えにくい。

如何に奇異であろうと、その『(よし) 祥子(しょうこ)』さんとやらの仕業と考えるのが妥当だろう。


 実のところ、啓二はその時まで怪奇現象の存在を信じていたわけではなかった。

それは単にサイトのアクセスを稼げるネタであり、広告収入の手段であった。

が、現実に厳然と存在するものを否定するほど頭が固いわけでもない。

事の真偽より、情報を収集してサイトに乗せアクセスを増やす、それが啓二が今やるべき事。

開運グッズコーナーの全景とポップのクローズアップを写真に撮り、その場にあった開運グッズを一種類一点づつ買って啓二は帰途に着いた。


 部屋に帰ってから啓二は『最上仏具店の開運グッズ』に関する情報をネットで集め始めた。

ポップと商品が光ると言う話の他に、開運グッズを買ったあと運が良くなったと言う事がブログやSNSでいくつか見られた。


 啓二はここまでの情報と購入してきた開運グッズ一個一個の写真とを載せた特集ページを作成し、トップページの新着情報には、概略を掲載した。


「最上仏具店の開運グッズ


老舗仏具店が販売する開運グッズが光ると評判。

当サイトの管理人も実際現物を入手したところ光るのを確認した。

ポップも光ってる模様。

開運の効果については統計的なデータは無いが、運が良くなったと言う事がブログやSNSで散見される。」


 その日のうちに御子神(みこがみ) (まどかから電話が掛かってきた。


「だから危機感が足りないって言ってるでしょ。」


「最上仏具店の開運グッズのページの件か?」


「そう。」


「ちょっと想像してみてくれ。仮に君の言う通り『(よし) 祥子(しょうこ)』さんとやらが人を抹殺する能力を持ってるとしよう。

『最上仏具店の開運グッズ』の事を書いたせいで俺が消されると思うのか?」


「可能性はあるわ。」


「待ってくれ。

もし全てが想像通りなら、彼女は友達の家の商売の協力をしてるわけだな。」


「そうね。」


「なら『最上仏具店の開運グッズ』に好意的な記事を書いた俺を抹殺するか?」


「それは……」


「それに俺は『最上仏具店』の名前は出したが、彼女の事には全く触れてないぞ。

俺は友人の店の営業に協力しようとする彼女は常識的な情緒の持ち主だと思うし、俺を抹殺したりしようとしないと思う。」


「それでも、サイトの記事の書き方には細心の注意が必要だわ。」


「十分注意してるつもりだ。」


「ところで、手元に『最上仏具店の開運グッズ』が一揃いあるんだが、見てもらえないかな。」


「じゃあ、明日学校で。代金は昼食奢ってくれるって事で。

ものは一番輝いてるの一点でいいわ。」


 翌日キャンパス内で落ち合った二人は、こじゃれたレストランで食事を済ませると本題に入った。


「これが一番輝いてたな。」


「かなり強力な護符ね。

普通の人が見ても輝いて見えるなんて異常だわ。

これ幾らだだって?」


「3000円。安すぎるか?」


「こんなもの値段付けられないわよ。

彼女、価値が分かってないのか、金銭なんてどうでもよいのかどっちかね。

正直今から行って買い占めたいぐらい。」


「買い占めたらそっちが怒られるんじゃないのか?」


「実際にやるわけ無いでしょ。」


「店にも行ってみないか?

ポップも現物見てもらいたい。」


「そうね。」


 レストランを出るとタクシーを拾って移動した。費用はもちろん啓二もちだ。


 最上仏具店に入るやいなや円は顔色を変える。


「どうしたんだ。」


「この店には『彼女』の気配が充満してるわ。」


 開運グッズコーナーに移動する。


「このポップはまぶしい。」


 円はクリスタルのブレスレットを一個買って外に出た。


「彼女多分ラクシュミーの化身ね。

人間の範疇を超えてるわ。

あのポップ、変なラメ入ってたでしょ。

あれペンで線引いたとき、金箔が生成するのよ。」


「それ本気で言ってるの?」


「本気よ。

兎に角あれは異常。」


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