13日目の土曜日
光の中にいた
懐かしく暖かい場所
ぼんやりしたまま周りを見渡せば周りもぼんやりしている
目の前にモモがいる
撫でようとしても届かず呼んでも来ない
だけど苦しくはなくてただぼんやりとしているだけだった
「お兄ちゃんそろそろ起きないと遅れるよ」と妹に起こされる
「起きるよ」とそっけなく答え目を覚ます
久々の帰省だった
モモに線香をあげるためだったがそもそも線香を用意してなかったことと「火事が恐いからやめてくれ」とだいぶ老けてまた少し小さくなった母親に言われ仕方なしにモモの写真の前で手を合わせ「ごめんな」とつぶやいていた
小屋もモモが使っていた座布団などもすべてが処分されていた
家族はだいぶ慣れたようだが僕にはぽっかりと空いた穴のように思えた
口数の少なかった父親とは「ただいま」と「最近どうなんだ?」という質問に「まだ1週間だからこれからだよ」と返しただけで会話が続かない
妹には彼氏ができたようで今日はデートらしい
少しばかりへらへらしていた
「そのまま帰るからね」と母親に言うと
「お盆とモモの命日近くにはちゃんと帰ってきなさいよ」とくぎを刺された
わかっている――当たり前だと思っていることほどもろいものはないことくらい
家族だっていつまであるかはわからない――わからないからこそ大切にしていきたいのにその大切にするという事がどういう事なのかがまたわからなくなる
実家を出て駅へ向かい歩きだす
景色は案外に変化していない
列車に乗り繁華街のある駅まで移動することにする
結婚した同級生に顔を合わせるためだ
彼はどんな表情をするのだろう?
待ち合わせの時刻の少し前に彼はやってきた
「この前はありがとうね」と相変わらずへらへらしている
どちらが言うでもなく並んで歩きだした
チェーンのカフェを見つけ入る
先週の話を全てした
彼は静かに聞いてくれていた
そして最後には「思い出してくれてありがとうね」と言ってくれた
へらへらしていた彼は結婚してそのまま柔和な男になったのだろう
「今後はちょくちょく帰省するようにするからその時には時間を作って会おうね」と僕らはわかれた
明日からはまた日常に戻る
彼にも彼の日常があり町には人の数だけの日常がある
それぞれの日常が重なり合い同じ時間を共有できるならばそれは奇跡なんだろうなと繁華街にごった返す人々を見て思った




