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捨てられ令嬢は、騎士団に拾われる  作者: わんたんめん
捨てられ令嬢、騎士団に入る
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アティ、ディーンを応援する

 精霊を解放する儀式は、夕暮れ時に騎士団隊舎の中庭でやることになった。閉じ込められていた精霊が、すぐに外だと実感できるようにとのエドワードの配慮だった。


「ディーンさん、これが私たちの作ったブレスレットです。これを使って、精霊を解放してあげてください、お願いします!」


 アティは真摯な輝きを宿す薄緑の瞳で、ディーンを見つめた。

 ディーンは一瞬、呆気(あっけ)にとられたような表情をしたが、すぐに眉を下げた困ったような笑みを浮かべた。


「ありがとう、アティちゃん。君にそんなこと言われたら、オレも頑張るしかないね……オレが考えていたよりも、もしかしたら君は強いのかも」

「え?」

「ううん、なんでもないよ」


 アティは最後の言葉を聞き取れず聞き返したが、ディーンは甘い笑みで隠すだけだった。


「おい、ディーン。お前の言う通り、宝石を並べたぞ」

「めっちゃ複雑で難しかったっすよー。でも手伝いができて、よかったっす!」

「そうだな、僕とアティが一緒に作ったブレイカーブレスレットの晴れ舞台の手伝いができてよかった。ディーン、これは絶対に君を守ると約束するよ」


 ウィルとイザーク、バートが、アティとディーンの元にやってくる。彼らはディーンの指示のもと、下準備をしていたのだ。


「はいはーい、3人ともありがとね。それじゃあアティちゃん、ちょっと行ってくるね」

「はい、頑張ってください。応援してます!」

「……うん、頑張るよ」


 緊張した面持ちのディーンを、アティは強く応援した。すると、彼はふにゃりと表情を緩め笑う。その姿は幼く見えて、アティの胸を高鳴らせた。


 ディーンが壺の正面につく前、ハロルドが彼に近寄った。


「ディーン、私の魔力なら、いくらでも持っていっていいからね。ぜひ手伝わせてほしい」

「大丈夫ですよ、ハロルドさん。今回のは、複雑な魔方陣なんで魔力より集中力の問題ですから。でも、心配してくれてありがとうございます」


 ディーンは厳しい顔をしているハロルドを、安心させるように微笑んだ。ハロルドはディーンが珍しく緊張していることに気づいていたが、そこには触れてほしくないと訴える彼に今回は従うことにした。


「……そうか、それなら良いんだ。ただし、無理は禁物だよ。いいね?」

「はい、任せてください」

「それじゃあ、行きなさい。ディーンなら必ずできると信じてるからね」


 そしてハロルドはディーンの背中を優しく押す。まるで力を分けるような仕草に、ディーンは背中が少し温かくなった気がした。


 そして、壺の正面に立ったディーンはアティたちが作り上げたブレスレットを腕につける。その手で、内ポケットから宝石を取り出した。

 ついに、魔方陣を消す儀式が始まるのだ。


「オレのカッコいいところ、みんな見ててね!」


 ディーンは気合いを入れるように、大きな声を出した。


「はい、頑張ってください、ディーンさん!」

「お前ならできるぞ。頑張れ」

「頑張ってくださいっす!」

「頼んだよ、ディーン。僕の理論とアティの錬金術、君の実力が合わされば向かうところ怖いものなしだ!」

「気を付けるんだよ、ディーン」

「おう、信じるてからな」


 全員がディーンを応援する。そんな彼らに、程よく力を抜こうとしているディーンはウインクしながら手を振った。


「それじゃあ、行きます! エドワードさん、うまくいったら何か奢ってくださいね!」

「ああ、もちろん、なんでも奢ってやる! 怪我しないよう上手くやれよ!」


 エドワードやアティたちが見守る中、ディーンは宝石に何か囁く。

 すると、地面から白色の魔方陣が浮かび上がる。それが壺を通ると、警戒するように壺が揺れた。


 それでも魔方陣は壺を通り抜けていく。


「……出てこい」


 ディーンが低く威圧する声で、壺に命じる。。


「ディーンさん……」


 あまりの緊張感に、アティは手をギュッと握った。その手をエドワードがそっと握った。


「ディーンはやる男だ。俺たちが信じれば、あいつは必ずそれに応える」


 ディーンから目を離さず、エドワードはアティを励ました。アティは凛々しい顔の彼を見たあと、力強く頷いて、厳しい顔をしているディーンの方に視線を戻す。


「ディーンさん、頑張ってください!」


 そのとき、壺から禍々しい紫色の魔方陣が現れる。


「中々、小難しい魔方陣だけどオレの技術とみんなの応援があれば、こんなの簡単なんだよね!」


 白色の魔方陣が紫色の魔方陣を書き換える。その作業は繊細さが必要で、ミスは許されない。集中して作業をするディーンの滑らかな額には、汗が浮き出ていた。

 そして紫色が書き換えられ、本来の効力をなくし姿を消すとき、ディーンに向かって魔力の大波が牙を剥いた。


「頼んだよ、バートくん、アティちゃん!」


 ディーンの声に応えるように、ブレスレットが黄金色に光った。


 全員が思わず瞳を閉じる。そのときディーンは、体を支配しようとする魔力の洪水がブレスレットに遮断されたことを感じた。


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