アティ、錬金の準備をする
そしてアティとバートは、すぐにアイテムを錬金することになった。
「ここが僕の錬金工房だ。早速、準備をしよう。ところで、君は何を使って錬金するんだい?」
バートはアティを工房と書かれた部屋に案内すると、早速尋ねた。
その工房には、大きな竈が部屋の奥にある。大きな面積を取る竈の他には、実験器具や錬金術に使う道具や素材がところ狭しと置いてあった。
「いつもは、お鍋でポーションを作っています。錬金術の実験で習うレシピにそって作っているので、それ以外の作り方を知らないんです」
アティは困ったように、眉を下げた。そんな彼女を気にせず、バートは興奮したように早口で喋りだす。
「僕が思った通り、君は本当に錬金術の申し子だ。現在、流通している基本レシピを作ったのは僕だが、あのレシピであの完成度を作れるとは思ってもいなかったよ」
手放しにアティを褒めるバートに、彼女は喜びを覚えると同時に、彼の言葉に驚いた。
「あのレシピを作った人って、バートさんだったんですか!? すごいです!」
バートは部屋の奥に入ると、レシピ本を本棚から取りだした。そして本をめくり、レシピを探す。
「まあ、これでも錬金術の最先端を走っている自信があるからね。レシピのコンペで優勝したときは、当然と思ったさ。
しかし君のような優秀な子が、僕のレシピを使っていると考えると感慨深いな。上級錬金術士向けのレシピもあるんだ。今度からはぜひ、そちらを使ってみてくれ」
コンペとは、コンペティションの略で、競技会のことだ。
バートのあまりの早口に、アティはとりあえず頷くしかなかった。バートはレシピ本の方を見ていると、アティは思っていた。しかし、彼は頷いている彼女の方を勢いよく向いた。その顔は喜色に満ちていた。
「そうか、使ってみてくれるか! とても嬉しいよ!」
「え、ええ。ぜひ使わせてください」
そんなバートに向かって、アティは微笑んだ。天才は人とは違うと言うし、彼もそうなのね。そう思うと、自然と笑みが生まれたのだ。
「他に何か作ったことはあるかい? まあ、作ったことのないものはこれから学べばいいだけの話だが、一応、教えておいてくれ」
上機嫌に尋ねるバートに、アティは悪いことをした気分になった。
「いえ、その授業で習ったポーションしか作れないんです。錬金術のことは、ほとんど知らなくて……」
アティがそう言うと、バートはズカズカと彼女に近寄り、肩をがっしりと掴んだ。
「それなら、たくさん学ぶことがあるな。これからは、たくさん錬金して共に学んでいこう! 君は素晴らしい錬金術士になれるよ!」
バートの美麗な顔は喜色に満ちていた。そんな彼を見ると、アティはフツフツと勇気がわいてきた。
「これから、ですか?」
なんて素敵な言葉かしら。やりたいことがまた増えるなんて、とっても素敵だわ。アティは柔らかく微笑み、バートの手を握った。
「ああ、これからだ。共に頑張ろう」
バートも優しそうに笑っている。
アティはこれからが楽しみになった。