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途
身動きが取れなくなると 決まって屋上に行く
虫の声が騒がしい中 梯子を辿って いちばん上
靴を脱いで コンクリートを背中に
冷たい感触に全身を晒す
2ヶ月ぶり 火を付けた煙草
吸い慣れない子どものように咳き込む
鼻を抜ける仄かな甘味
灰を落とし 視線を投げた
星どころか月さえも見えない夜中
真暗な街に灯る明かりが
どこまでも続くその明かりが
世界は広いのだと痛感させる
面倒なあれこれだって 気にしなきゃいけない悩みだって
あぁ ちっぽけだったんだな なんて
どこかで聞いたようなフレーズ
初めて気付いたような自分に苦笑いする
僕がここにいるのは 誤算でも何でもなくて
例えばそう 必然なんだとしたら
何が最低ノルマなのかな なんて
ちょっと後ろ向きだけど
電車が近付いてきて あっと言う間に過ぎて行く
そんな風に 終わっていくから
目的地さえはっきりしていればいい
あの明かりを辿って行けば きっとそこに
滲む涙を ぐっと噛み締め
そっと煙草をコンクリートに押し付ける
きっと今は これでいい
いつかはちゃんと 終わりが来るから




