甘美な夢
綺麗事は嫌いだった。
理想を掲げて人を叩き潰すその人が嫌いだった。
例外を認めないその純粋な瞳が、恐ろしかった。
私が一般論からズレているのか、その人が幼過ぎるのか、それが判る程にはまだ、成熟していなかった。
どちらが正しいのか、分からなかった。
きっと、視点を変えればどちらも正しいのだと思った。
ゲームだって、主人公に感情移入するでしょ? それと同じ。
人間なんて、そんなもん。
「正論」を掲げた人間には、なりたくなかった。
全てを受け入れられる、強い奴になりたかった。
自分が受け入れられなくとも、厭わないはずだった。
それなのに。
どうして私は今、哀しんでいるのだろう。
どうして、悔しがっているのだろう。
どうして、……残念に思っているのだろう。
どうして?
分からない。
ただ、ひとつだけ——人はいつだって、ひとりぼっちだということ。
それだけが、刺さったまま抜けそうもなかった。
甘言に乗ってはいけないと、何度戒めただろう。
また同じ過ちを繰り返すなんて。
憐れな星々が、溜め息と共に瞬く。
濃紺の空に浮かぶ点々でさえ、どこか落ち込んでいるようにも思えた。
私があなたと同じなら、きっと一緒にいないだろう。
私はあなたと違うから、きっと一生分かり合えないだろう。
分かっていたことだった。
それでも、馬鹿みたいに縋った自分がいた。
繋がりなんて幻想に、夢を見てしまった。
間違いだったのか? それは分からない。
ただ、今ここに私がいて、つまらない思考を繰り返していることだけは事実だ。
もし、あなたが私にまた触れるのなら、もう一度夢を見てもいいだろうか?
私を見てくれるのなら、許されるだろうか?
あの、甘美な夢を見ることを。




