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初恋
それは 柔らかな夕陽の差す時間
運ぼうと持ち上げた
跳び箱のいちばん上の段
持つよ って軽い言葉
微かに触れた指先が
まだ柔らかな頬を染め上げて
初めての恋をした
教えてもらったわけじゃないけど
分かったの
あれからかな
私が夕陽を好きになったのは
大好きな あの時間
全てが 輝いて見える あの時間
だけど あなたは 行っちゃったね
もう 手の届かないところまで
幼かった私には 何も出来なかった
出来なかったのよ なんて
曇った窓ガラスに指先を滑らせ 小さく呟く
後悔なんてしないわ
だって想い出は ずっとあるから
言い訳がましく聞こえるけど
私は彼が好き
好きだったのよ
それは 柔らかな夕陽の差す時間
運ぼうと持ち上げた
跳び箱のいちばん上の段