異変?
男が世界から消えるほんの数秒前―――
「魔力場か?」
「違います、先ほどから取り除くためにアンチフィールド解放していますが、効果ありません」
「っち!面白いがここは拙い。」
男は言うが早いが自身の持つ力を使おうとすると、急激に魔力に似た何かは霧散し辺りが静かになる。
「……ふむ。消えたな」
「はい…よろしければ辺りのたん「主!!大丈夫ですか?」さ…」
扉を蹴りやぶらんとばかりに勢いよく部屋に入ってくのは、身長こそ低いが身に纏うモノは常人のそれではなく、左右の手首には鎖が半ばで千切れている手錠の様なものをした女の子。
「主を心配しての行動とはわかりますが、身をわきまえなさいキリク」
「あっ!す、すいません!主、アリアンテ様」
突然の来訪にも動じず、淡々と言葉を掛ける角の生えた女性シーナ・アリアンテ。
「アリィ良いよ、キリク大丈夫だったか?」
「はい、こちらは問題ありません!カブ様からも特に異変はないとの事です」
「異変ね…」
船が丸ごと魔力に似た何かに包まれ、それが急に霧散した今の状態を異変がないというなら間違いではあるが、彼女の言う異変は身体や精神に関することで、自らの直属の上司に異変がない事を表す。
「主、情報がないことにはいささか拙いかと」
「分かっている、みんなを集めろ」
「皆とは…?」
「察しが悪いぞ、幹部全員だ」
「はっ!すいません……キリク、カブに連絡を取るとともに幹部に収集を掛けなさい!」
「はい!」
少し緊迫とした場の中キリクは笑っていた。不謹慎なのはわかるが自分の崇拝する二人が依然状況がつかめない中、憮然とした態度で事を進めていきそこに自分の力を必要とされていることが、何よりも嬉しく感嘆の想いなのだ。
「集まったか」
先ほどと場所は変わり、100人は入れそうなホールの様な場所で、豪華ではないが、重厚感のある椅子に腰かけ幹部がそろったのを確認して声をかける男。
「主~カブが来てないですよ?」
「来てるよ」
そういって今主と言われた男に声をかけた者の脇を指さすと、影から髪がボサボサの全身に包帯を巻き、それを隠すように黒いローブに包まれた男が出てくる。
「うわ!も~びっくりさせないでよ~」
「ふっ…サリーももう少し探索出来るようにな」
「そうはいっても相手がカブじゃ…」
男が薄く笑いサリーと呼ばれた金髪に髪の毛先にウェーブがかかり、場違いに思えるフリルのついたドレスにフリルのついた傘をもった女が、頬を掻きながら横目でカブを見て苦笑いをする。
「気付かねーオメーがわりーよ。現に主には気づかれてたしな」
「う~主と比べないでよ~」
「まぁいい、とりあえず集まってもらったのは先ほどの何かを調査するためだ」
少し穏やかな空気が流れたところで、男は本来の目的を話すために声をかける。
「まず近場の探索だ、何かが消えたころから、気づいた者はいると思うが以前居た場所と違う場所に飛ばされている、通信機を試したがどれも通じないしな」
『!!』
『………』
びっくりしているもの数名、気づいていて男の次なる言葉を待つもの数名。
「カブ、キリクとクーそれに他7名を連れて探索に当たれ、人選は任せる、お前ならまず見つかることもなく、終わるだろうが万が一を想定しろ、又戦闘はなるべく避けろ」
「ういーっす」
「丹波、船に異常がないか隅々まで調べろ、些細なことでも構わん、異常があるなら報告しろ。」
「御意」
「サリー、ナナリアル、先ほどの魔力に似た何かについて調べろ、痕跡が残っているならそれを保持するように心がけ、お前らの魔力また部下の魔力にも異常がないかも調べろ」
「は~い」
「わかりました」
「アリアンテ、お前は俺に付き合え、有事に備えて体の動きを見る。」