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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
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アントの失踪

 隊長が決まったところで、何か特別なことをするのかといえば、そういうわけでもない。

 オレ達は別に、日頃から活動したりはしないのである。これでは、オレ達が『隊』である意味がない気もするのだが……。まぁそれは置いておこう。

「たいちょおたいちょお~」

「なんだ、うっせーな」

 間抜けな声で、モースがオレを呼ぶ。オレはかなり不機嫌そうな表情で、モースの方へと視線を振った。

「あのさぁ、オレっちいいこと思いついたんですけどぉ~」

 コイツの言う『いいこと』は、当てにならない確率の方が高いのだが……。まぁいい、隊長として、聞くだけ聞いてみようじゃないか。

「なんだ? 言ってみろよ」

「ん。えぇ~とぉ、今日の活動として……リア充な昆虫達を、皆殺しにするというのは、どうでしょ~?」

「却下だ!」

 オレは、間髪をいれずにそう答えてやった。

 モースは表情を歪めながら、「えぇ~?」と不満そうな声を出す。

「なんでダメなんスかぁ~?」

「ダメに決まってんだろ! 殺しはタブーだ!」

「え? じゃあ~、撲滅しに行くってんのなら、よくねぇ~?」

「よくないっ! あと、そういう言葉は控えろよ? アントが真似しちまうだろ!」

 まったく、ああ言えばこう言う……。困った蛾だぜ。

 ともあれ、オレの必死の反論のおかげで、モースもある程度は分かってくれたようだった。

「ちぇっ、分かったよ。じゃあ今日もボケーっと一日過ごせばいいんだな」

 別にそんなことは言ってないだろ……。すぐに拗ねるなよ、子供みたいだろ……。

 

 そういえば、今までモースとばっかり喋ってて気付かなかったが……アントとフライルはどこに行ったんだ?

 慌てて周りを見回すと、フライルはすぐ近くで昼寝中だった。しかし、アントの姿はどこにもない。

「ん? どうしたん、ビィ」

「いないんだ……」

 モースの問いに、オレはぽつりと呟くように返す。モースはその声が聞き取れなかったらしく、「あんだって?」と聞き返してきた。

「いないんだ、アントがいない!」

 オレが叫ぶと、それが聞こえたのかフライルがむっくりと起き上がった。

「いない? 誰がだ?」

「ふ、フライル! 聞いてくれ、アントがいないんだ……」

 オレはすがるように、立ち上がったフライルの手を握る。その様子を見たモースが、「おーおー仲良しだねぇ」と茶化してきた。むろん、「ちげぇ!」と怒鳴りつける余裕は今のオレにはなく、

「ど、どうでもいいだろ……」

 消え入るような声で、そう答えるしかできなかった。

「あいつは小さいから、お前には見えてないだけだろ。探せばすぐに見つかるさ」

 フライルは落ち着いた声でそう言い、辺りを注意深く見回し始めたのだが……オレは、全く納得できなかった。

 いつも慎重で大人しくて、オレ達と一緒の行動をとりたがるアントが……勝手にオレ達から離れるなんてこと、今までに一度でもあっただろうか?

 ましてや、オレにも見つけられないところに行くなんて……。

「お~い、ぼーっとしてないで、ビィも一緒に探してくれよぉ~っ」

 モースに声をかけられたが、それに答える余裕さえない。

「アント……」

 自然にアイツの名を呼んでいた。

 そして、気付いた時には、オレは大空へ飛び立っていた。モースとフライルの姿が、どんどん小さくなっていく。

「アント……絶対、見つけてやるからな……」

 激しい胸騒ぎを感じ、オレはアントの身に何かが起こったのではないかと予測した。

 どこに行くかなんて、全く決めてないのだが……オレはとにかく、早くアントを見つけ出そうという一心で、川に沿って上空を飛んでいった。

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