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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
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穏やかな居場所に陽気なアイツ

 殺虫剤を逃れたオレとアントは、場所移動を考えることにした。とりあえず、人ん家の花壇に植えてある花にとまるのは、避けておきたい。

 そうだ、まだ言ってなかったっけな。

 最初にオレが、『平凡とはちょっと違うかもしれない』って言っただろ? あれだけじゃあ、なんのことか分からないって奴もいると思う。だから補足しておくぜ。

 確かにオレは、毎日のんびりと暮している。だけどな、たまにああいう風に、殺されかける日があるんだよ。嫌になっちまうよな。

 人間って奴は勝手だ。非常に勝手だ。

 ちょっと花を借りて休んでただけなのに、オレはまだ何もしてないのに、いきなり毒薬撒きやがって。オレのこと、怖いって思う気持ちは分からんでもないが……もう少しお手柔らかにできないもんかね。

「ビィくん? 大丈夫?」

「ん? あ、ああ、悪いな」

 ついぼーっとしてて、アントが呼んでいるのに気付かなかったようだ。

「やっぱりさっきの……。薬、かかっちゃったんじゃない?」

「馬鹿言え。かかるわけねーってあんなもん」

 オレの素早さに勝てる人間なんて、到底いねーだろ。

「そう。なら、いいんだけど……」

 アントが心配そうな表情を浮かべた。

 おいおい、そんな顔すんなよ。オレは平気だし、おまえも平気なんだから、めでたしめでたしだろ。心配しすぎなんだっつーの。

 そんな適当な会話を交わしながら、オレ達二匹はいつの間にか、河原のそばまで来ていた。

 ここは、オレのお気に入りの場所でもある。周りは大きく開けていてあまり家がなく、そのため人が来ないからだ。

 騒がしくもならないし、オレが狂気の目で見られる……なんてこともない。

 それに、アントが潰される心配もなくなるしな。いいこといっぱいだぜ!

「よしアント、ここにすっか」

「うん、そうだね」

 一応アントに確認をとり、オレは高度を落としていく。オレとアントの体が、ゆるやかに地面に近づいていく。

 地面スレスレまで来て、オレはアントから手を離した。彼の体は、トン、という効果音が似合うほど、軽く地面に落とされる形になった。

 最近は、というか日常的にあまりこういうことはしないのだが、オレも地面に着地してみる。超久しぶりの地面の感触に、一瞬ドキリとしてしまった。

 ……気持ちいい。

 柔らかい土と、ちょっと湿った雑草の感触は、なぜだか懐かしさを感じさせるものだった。

 オレはしみじみとした気分で、地面の感触を楽しみ――、


「おっ、ちーっす! 今来たのか~ぁ?」


 そんなおちゃらけた声に邪魔された。

 聞き覚えのある……というか、いつも聞いているこの特徴的な声。この声の主は、オレもアントもよく知る奴だった。

「ああそうだよ、モース。おまえも来てたのか」

 気がつけばオレの周りをひらひらと優雅に飛んでいるコイツは、アントと同じくオレの同志である、蛾のモース。

 蛾というのはなんだか暗いイメージがあるが、コイツは全然そうではなく、むしろかなり明るい性格をしている。

「てかさぁ、ビィ何してたの? なんかウットリしてたけどっ。……まっさか~ぁ、この年になってお漏らしかぁ?」

「ばっ……ちげーよ! 地面の感触を懐かしんでただけだ!」

 オレがすぐさま反論すると、モースは「ふ~ん」と棒読みで呟き、

「なぁんか妖しいけど、ま、いっかっ」

 うすら笑いを浮かべながら、無駄に陽気な声でそう言った。

 オレとしては、今のおまえの言い方だと、『まぁよくない』んだけどな。妖しいってなんだ? 妖しいって。

キャラクター紹介 2


《モース》

分類:蛾  一人称:オレっち

名前の由来:蛾の英語(モース)から

ビィの仲間で同志。

夜行性だが、昼間も活動している。いつの時間に休んでいるのかは、本人しか分からない。

陽気な性格をしており、言葉は今どき。チャラ男ともいうべきだろう。

また、ビィのことは普通に『ビィ』と呼ぶが、他の虫には決まってニックネームを付ける。ネーミングセンスはあるのかないのか。

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