小さな友達&危機一髪!
オレが一人でのんびりとした時間を過ごしていると、
「あっ、いたいた。こんにちは、ビィくん」
「よう、アント」
オレの仲間で同志である、蟻のアントがやって来た。
アントは体が小さいのと飛べないという欠点があるため、一生懸命バラの茎を上っている。その点、オレは羽があって飛べるから便利だよなぁと思う。
「ふぅ、やっと着いたぁ」
ふーっと長く息を吐くアントに、
「ごくろうさん」
オレは一応ねぎらいの言葉をかけてやった。アントは素直に、「うん、ありがとう」と返事をする。
「今日は暑いね」
「ああ。まったくだ。地球はどうなっちまったんだ?」
「温暖化が進んじゃってるらしいけど……大変だよね」
アントも最近の気温がやけに高いことに気付いているらしく、それを気にしているようだった。
あれ? そういえば今日は、アントだけしかここに来ていない……。
「おいアント、他の奴らは?」
オレは疑問に思って、すぐにアントに質問した。
アントは「う~ん」と唸りながら、六本あるうちの一本の腕を、顎の下にあてて考えていた。しばらく小さな唸り声が続いた後、彼はポンと手を叩いてこう言った。
「リア充さんたちを『ぼくめつ』しに行ってると思うよ!」
「ずいぶんと物騒だな!」
思わず全力で突っ込んでしまったぜ。
だってコイツが、いきなり『撲滅』とか言うからさ……。まったく、そのワードはおまえみたいなガキが使用していいもんじゃねーんだよ!
一方でアントは、
「ん? 『ぶっそう』って何?」
オレの放った言葉の意味を理解できずに、首を傾げている。こ、コイツめ……。
「あのな、物騒ってそうのは――」
オレが言葉の意味を丁寧に教えてやろうとした、まさにその時だった。
「ぎゃあああ! は、蜂があたしの大切にしてるバラにぃ!」
この家に住んでいる人間が、悲鳴と怒鳴り声をあげた。その声の大きさに、アントがびくっと身をすくめる。
オレはどうせいつものことなので、余裕をかまして鼻歌なんて歌っていた。
「ビィくん……怖くないの?」
「こんなことで怖がってるようじゃ、蜂をやってはいけねぇぜ」
「声じゃなくて、あれ……」
どうやらアントが身をすくめた理由は、大声ではないみたいだ。
不思議に思ったオレは、視線を声のした方に向ける。そして目に映ったのは、
「っ!」
自分に向けられている、殺虫剤だった。
「こ、この!」
またしても人間の声が聞こえ、
ブシュ―――――――――――――!
殺虫剤から、有毒な白い煙が発射された。
それにいち早く気付いたオレは、すぐそばでうずくまるアントを抱え――、
「っとぉ!」
羽音をたてながら、空へと素早く逃げた。オレの尻についた針の少し下を、煙が通り過ぎていく。
あぶねぇ……。もう少し遅かったら、オレは今頃死んでいたところだったぜ……。
「アント、アント、しっかりしろ。もう大丈夫だ」
「ふ、ふえぇ……?」
オレはまだ怯えていて状況を把握できていないアントに、なるべく優しく声をかけた。
アントはゆっくりと目を開き、二、三度首を振って状況を確認しきったのか、
「あ、ありがとう、ビィくん……」
ちょい間抜けな声で礼を言ってきた。別にオレとしてはこんなことは慣れっこだったので、
「いいっていいって、こんくらい」
薄く笑みを浮かべながら、オレ的にかっこいい台詞を吐いておいた。
キャラクター紹介 1
《ビィ》
分類:蜂 一人称:オレ
名前の由来:蜂の英語(ビー)から
本編の主人公。
活発な男の子タイプだが、鈍感なところがある。特に、他の虫の気持ちを分かってあげることが苦手。
人間のことを自分勝手な生き物だと思っているが、自分から攻撃をしかけたりすることはない。
しかけるにもお尻に針がないため、攻撃できない。
殺虫剤をかわすのは、もうお手の物だとか。
《アント》
分類:蟻 一人称:ボク
名前の由来:蟻の英語(アント)から
ビィの仲間で同志。
ビィのことを頼れるお兄さん的存在だと尊敬していて、一緒にいることが多い。
基本子供っぽい性格で、優しく温暖、滅多に怒ったりしない。
ただ自分には羽がついていないことを、心の中で密かに悔しがっている。




