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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
29/38

私とモースくん & "カノジョ"

                 ♢



「うっ……うぅっ……」

 何処へ行くというあてもなく、私は泣きながら飛んでいた。

 なんで私、あそこであんなこと言っちゃったんだろう。なんで、「私も行きます」って、勇気を出して言えなかったんだろう。

 これじゃあ本当に、自分が良ければそれでいいって思ってる虫みたいじゃない。

 バカバカバカ、自分のバカ!

 必死に自分のことを自分で責めるも、全くすっきりしない。……そんなの当たり前か。

「ひっ、く……」

 やがて私は、見たこともない景色が目の前に広がっていることに気付いた。すなわち、私が一度も来たことがない場所。

「ここは……?」

 目に溜まった涙を拭いながら問うてみるも、それに答えてくれる虫なんていない。

 どうしよう、私……迷子になっちゃったの? 心細くなって、辺りをキョロキョロとせわしなく見回してみる。しかし、知っている虫も風景も見当たらない。

 ――怖い。

 私の頭の中に、その二文字が浮かび上がる。自然と体が震えだし、目に映るもの全てに恐怖心を抱いてしまう。そんな時だった。

「よっ」

「ひいっ?」

 ポンと軽く肩を叩かれ、思わず甲高い声が出てしまった。……た、タイミングが悪すぎです!

 恐々と後ろを振り返ると、さっき知り合ったビィくんの友人、モースくんが、私の肩に手を置いたまま特徴のある笑みを浮かべていた。……なんかちょっと怖い。

「も、モースくんじゃないですか。何しにここへ……」

「ん? いや~、フライルに頼まれちゃってさ。アゲハちゃん探して、なぐさめておけって」

 アゲハちゃんって……私には『バタフライトル』もしくは『バター』っていう名前があるんだけど……。まぁいいか、モースくんはこういう虫なのだろう。

「は、はぁ……頼まれたんですか」

 私が小さく呟くと、モースくんは私の肩に乗せていた手を離し、

「そっ。まぁ~ったく虫遣いが荒いよねぇ~。オレっち困っちゃうよぉ~」

 全く困ってなさそうにそう言った。

「モースくんは、私を探してなぐさめるのは……めんどくさいですか? だから、困ってるんですか?」

「別にそんなんじゃないけどさっ」

 実に分かりにくい虫だ。だけど、彼と話していると、不思議と元気が出てくる気がする。

 私はそんなモースくんの方をきちんと向いて、まずはお礼を言うことにした。

「モースくん、探しに来てくれて……ありが、」

「おっと、そこから先は言わなくていいぜ」

 ……? せっかくお礼を言おうと思ったのに、言わなくていいって……。何でだろう?

 疑問に思っていると、モースくんが指を一本立てながら、自慢げにだが語り始めてくれた。

「何を隠そう、オレっちはこんな性格なんで、あんまし感謝されないんだよねぇ~。だから、お礼を言われ慣れてないっていうかさ……」

 か、感謝されないって……。まだ会ったばかりだからよく分からないんだけど、他の虫に無関心ってことなのかなぁ?

 とはいえ……こうして来てくれたんだから、「そうですか。じゃあ何も言いません」で終わらせるのは失礼だと思う。

「でも……せっかく来てくれたんですから、お礼くらい言わせてください!」

「うひょう、めっずらし~ね。……キミ、『変りモン』だってよく言われない?」

 こ、今度は『キミ』ですか……。モースくんは、私を何だと思っているの?

 まぁ、そんなこと気にしててもどうにもならないので……私は首を横に振りながら、

「いえ、言われませんけど」

 少し口調を冷たくしながら答えた。その口調の変化に気付いたのか、モースくんが私の顔を覗き込みながら、若干面白そうに聞いてくる。

「あれ? もしかして、怒らせちゃった?」

 その問いに私は――自分でこんなこと言うのはおかしいかもしれないけれど――ガラでもなくツンとそっぽを向きながら答えた。

「別に、怒ってなんかないですけど」



                 ♢



「……なぁ、ビィ」

「ん? どうした、フライル」

 上空に飛び立ち現場を目指すオレに、並走するように飛んでいるフライルが話しかけてきた。

「お前、彼女のこと、どう思っているんだ?」

「カノジョ? ……あぁ、バターちゃんのことか」

 なんで急にそんなこと聞くんだ、フライルらしくない。

 オレはそう思ったが、今の気持ちを素直にフライルに伝えてやった。

「完全にオレのタイプの娘で、正直に言うと……好きだな」

 オレが言い終えるか終えないかの瞬間、フライルに頭をはたかれた。結構強烈で、バシッと音が鳴る。

「いってぇ! いきなり何すんだよ!」

「お前が馬鹿なことを言うからだろう」

 ……お、オレがいつバカなことを言ったんだっ?

「そんなこと言ってないぜ?」

 オレはそう言ってみるが、フライルはそれを聞くとフッと嫌味ったらしく笑い、

「気付いてないのか。やっぱりお前は鈍感だな」

 頭にくる一言を投げつけてきやがった。

 お、オレが鈍感だとぉ……? 言ってくれんじゃねぇか、フライルめ……。

 一瞬本気でブン殴ってやろうと思ったが、オレが手を振り上げた瞬間に感づかれて返り討ちにあうので、とりあえずぐっとこらえておくことにした。

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