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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
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二手

 殺虫剤が撒かれた現場からある程度離れたオレ達は、適当な公園を見つけて、もう錆びれているシーソーにとまることにした。

「一体、うあれは何だったんだよ……」

 オレが呟くと、バターちゃんが言いづらそうにしながらも切り出した。

「多分……私達みたいな虫を排除しようとしているんです」

「排除?」

 その単語に、モースが反応して聞き返す。バターちゃんはこくりと頷き、補足説明をしてくれた。

「私も詳しくは分からないのですが……。最近、人間達は妙に虫を嫌っているらしくて。それで、虫を強制的に強力な殺虫剤で殺すという計画が、少し前に提案されたみたいなんです。でも……まさか本当に実行するなんて、思いませんでした……」

 残念そうに語るバターちゃんの脇では、モースが腕を頭の後ろで組みながら、

「ってことはオレっちも、近いうちに暗殺されるってことか~」

 なんだかめんどくさそうに、ため息混じりにそう言った。

「暗殺ではないだろうが、とにかく殺されるかもしれない……ということか」

 フライルも表情を暗くし、どこか遠くを見据えながら呟く。

 虫を殺すなんて、なんて勝手な奴らなんだろうな、人間って奴は。しかも、そんな自分勝手な理由で……ただ嫌いだからって殺すなんて。

 確かに、間違って人間の家に入っちまった虫が、潰されたり殺虫剤をかけられたりするのは仕方ないと思う。だってそれは虫が注意すればいいことだし、さすがに住みかにずけずけと上がり込んだらなぁ……。そりゃあ人間だって、迷惑だと思うだろう。

 だけど、外で普通に生きてる虫まで殺すなんて、いくらなんでも残酷すぎる!

「私……そんなのは嫌です……」

 バターちゃんは震えながら、静かに泣き出してしまった。オレだって、そんなのはぜってーに嫌だ。

「でもさぁ、この世に虫なんて、チョ~大量にいるんだぜ? そんなの全部殺そうなんて、ニンゲン様も無謀な挑戦するよなぁ~」

「確かにそうだな」

 モースが珍しく正論を述べ、フライルが肯定するように頷いた。

 確かに……本当にそんなことができるのか? いや……正確に言えば、最後までやりとおせるのか?

 オレ達昆虫でさえも数多い種類と数がいるのに、昆虫以外の虫まで含めるとなると、かなりの数になっちまう。それを全部なくすなんて、どんなにその活動をする人間がいても、追い付かないだろう。

 嫌な話ゴキなんて、殺虫剤をかけられると卵を落とすっていうしな。むろん、そうではない種類のゴキもいるけどな……。

「とっ、とりあえず! アントはどうするんだ?」

「もちろん、助けに行く他ないだろう」

 オレは慌ててそう口にしたが、フライルは落ち着いた口調で答えを返した。お前はどうしてそんなに落ち着いてられるんだよ!

 フライルの意見に同意を得ようと、バターちゃんに視線を振る。しかしバターちゃんは、涙目で首をふるふると振るだけだ。……どうしたんだ?

「バターちゃん、何か問題でもあったか?」

 オレが尋ねると、バターちゃんは俯きながら、首を横に振った意図を教えてくれた。

「私、もう怖いです……もう、あんな場所へは近寄れません……」

「なっ……」

 そんな! いくら怖いからって、友達を見捨てる気かよ!

「それはそうかもしれないけど、っていうかオレだって怖いけど……。だからって、友達を見捨てるのかよ?」

「見捨てるとは言ってません。……蟻さんも心配ですが、私の身も心配なだけです」

「それで行かないんじゃあ、それはアントを見捨てるのと同じことだぜ?」

 オレがなだめるように言うと、バターちゃんはさらに目に涙を浮かべた。やべぇ……泣かしちまった。

 バターちゃんは震える声で、途切れ途切れに声を紡ぐ。

「私だって……蟻さんが心配です……。けれど、怖いんです……仕方ないじゃないですか……」

 バターちゃんのその言葉に、オレは納得出来なかった。

 仕方ないって……アントが命の危機にあっているというのに、仕方ないってなんだよ……!

 気付いた時には、口が勝手に動いていた。


「だから! 仕方ないで済ませていいのかよって言ってんだよ!」


 叫んだ後、オレははっとした。しまった……ついイラッときて、怒鳴っちまった……。

 慌てて謝ろうとしたが、

「っ……私、私っ……」

 バターちゃんはオレの怒鳴り声に驚いたのか、しゃくりあげながらその場で固まり、やがて泣きながらどこかへと飛んでいってしまった。

 バターちゃんの悲しそうな背中が、オレの目に焼きついていく。

 そのまま茫然として何もできないオレの背中を、

「行くぞ」

 一言だけポツリと呟きながら、フライルが叩いた。オレはどこに行くのかが分からず、咄嗟に聞き返す。

「どこにだよ?」

「アントを探しにに決まっているだろう」

 そ、そうか……そうだよな。

「でも、バターちゃんは……」

 彼女のことが心配になったオレが聞きかけたが、その声はフライルに遮られてしまった。

「モース、彼女を探して、なだめておけ」

「わ~ったよ」

 ほんとにアイツで平気なのだろうか? 余計に傷口をえぐったりしそうで、オレはますます心配になってきた。

 しかし、ぼーっとしている時間なんて、今のオレ達にはない。オレは隣に並んだフライルと共に、同時に空へと飛び立った。

 そして、さっきアントが殺虫剤をぶっかけられたあの現場へと、全速力で直行する。

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