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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
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謎めいた意地の張り合い

「そういえばビィくん。お姉さんと話してて中断されてたけど、ボクの質問に答えてほしいなぁ」

「そっ……そうだよな」

 やべぇ、完っ全に忘れてた。

 オレはアントに尋ねられた、『なぜオレがここにいるのか』について、なんと答えようか考えを巡らせた。

 非リア充昆虫隊の奴らには、口実つけてるからな……。ちなみに今日の口実は、『人間の様子を観察してくる』というありきたりなものだった。

 小さく唸るオレを横目に見ていたバターちゃんは、にこりと微笑みながら、

「何を悩んでいるんですか? 何か言い淀むことがありますか?」

 わざとらしく尋ねてきた。

 だからなんでそんなに怖いんだよ! 笑顔が怖いし、声も妙に落ち着いてるし……。

「いや、別に言い淀んでるわけじゃ……」

「なら、早く説明してくれると助かるんだけど」

 普段はこんなせかすようなことは言わない奴なのに……やっぱアントも怖えぇ!

 悩みに悩んだ末、オレはいい言い訳を思いついた。すかさずバターちゃんの耳に口を近づけ、

「ごめん。実はオレ、バターちゃんと会うってこと、仲間に内緒にしてるんだ。今からコイツに言い訳するから、オレの調子に合わせてくれ」

 なんともみっともない台詞を囁く。それを聞いたバターちゃんは、

「分かりました、そういうことなら」

 今度は純粋な笑みと声で同意してくれた。よっし! これで何とかなりそうだな……。

「アント、事情は今から説明するぜ! オレとこの娘は――」

 『人間観察をしてたら出会って、この娘も人間観察が好きだっていうから仲良くなって、ちょっと散歩がてらここに来た』

 そう言おうとしたオレの言葉は、あっさりと遮られた。


「付き合っているんです!」


「……え?」「……はぁっ?」

 確かにそう言ったバターちゃんに、アントが驚愕の眼差しを、そしてオレも同じ意図の眼差しを向ける。

 なっ……つっ……付き合ってるだとぉっ?

「ば、バターちゃん、何言って……!」

 慌てて訂正しようとするも、バターちゃんの口のチャックは閉まらなかった。

「蟻さん、私がビィくんに手紙を出し、それがラブレターだということは、当然あなたも知っていると思います。その手紙は、『日曜日に遊びたいからその前日に一度会おう』という内容のものでした。ビィくんと私は約束どおり昨日、そして今日も会って、仲良く二匹の時間を過ごしました。……そして今日、私とビィくんは付き合うことになったんです!」

 長い長い台詞を一気に口にしたバターちゃんは、はぁはぁと肩で荒い呼吸を繰り返す。

 オレはその内容に絶句し、

「な、な、な……なんっ……」

 意味不明な声を発するしかできなくなった。

 ふと視線をずらしてみると、アントもやはり目を大きく見開いて固まっている。

 バターちゃん……なんってことを言ってくれるんだ!

 確かにオレはバターちゃんのこと好きだけどさ……まだ付き合ったりはしてねぇだろ? 単に昨日と今日会って、喋ったり町を見回ったりしただけじゃねぇか! んな大げさな……!

 オレは気分を静めようと何度か深呼吸をし、「あ、あー」とマイクのテストをするように声の調子を確かめてから、

「な、なぁ、アント……?」

 恐々とアントの様子を窺ってみた。アントもやっと喋れるようになったようで、

「あ、うん……なに?」

 やはり何かに怯えながら、オレの方を見た。

「今バターちゃんが言ったことは……その……う、嘘もまじってるから……」

「まじってる? じゃあお姉さんは、本当のことも言ってるってこと?」

 そう聞かれると答えづらい。ここで「おう」と言っても「いいや」と言っても、どっちにしても先が思いやられるな。

 オレがもしイエスと答えたら、アントはオレが非リア充でなくなったことに肩を落とすだろう。

 一方でノーと答えたら……「じゃあどうして嘘も『まじってる』なんて言ったの?」と問いただされるだろう。

 どっちで答えればいいんだよ……。顔をしかめて悩んでいると、またもやバターちゃんが口を開いた。

「あはは、ごめんなさい。なんだか話を膨らませすぎちゃいましたね。大丈夫ですよ蟻さん、私達、付き合ったりするところまではいっていないので」

 だっ、だよなっ。バターちゃんも分かってるよな。

 きっと彼女にも、虫をからかってやりたいと思う時があるのだろう。それは当たり前の感情で、もちろんオレにだってある。

 まぁ、モースみたいにいきすぎには注意が必要だけどな。

「そ、そうですか」

 アントはほっと安堵の息をつく。しかしすぐに表情を強張らせ、

「でも、『付き合ったりするところまではいっていない』というのは、一体どういうことなんですか?」

 鋭い質問を叩きこんできた。

 な、なんだよ、アントのくせに鋭いじゃねーか……! いつもは「ボクはな~んにも気付かなかった」みたいな態度とってるくせによぉ!

 しかしバターちゃんは、「それはですね……」と前置きしてから、

「でも私達は、これからも仲良くしましょうって約束しましたから。これからも……二匹で会いましょう、って」

 澄み切った小川の流れのように、実にサラリと言い流した。

 いやいや、そんなこと一っ言も言ってないんだけど! なんか勝手に約束されてる気がするんだけどなぁ!

 なんのための意地の張り合いなのか全く分からんが……。

 これはうかつに手を出したりすると、ヤケドしちまうパターンだな。

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