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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
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映画館

 続いて映画館にやって来たオレ達は、

「何見る?」

 まず始めに、これから見る映画を選んでいた。

 バターちゃんは、壁に貼ってある何枚ものポスターを眺め、それからチケット売り場の上に設置されている、どんな映画がいつ上映されるのかを示しているスクリーンを眺めてから、

「私が選んでもいいんですか?」

 若干わざとらしく尋ねてきた。

 いいんですかって……さんざん選んでただろ、今……。

 ここで突っ込むにも、「オレが選ぶとも」言えず、オレは「いいよ」と権利を譲った。

 いいんだ、なにせ相手がバターちゃんだからな。男ってのは、自分が気に入った女の子に優しくしちまう生き物なんだよ。

 するとバターちゃんは、嬉しそうにとあるポスターを指差した。

「では……あれでもいいですか?」

 バターちゃんが指差した先のポスターには……。

「なっ……なんっ……」

 舌が回らなくなってしまうほど、説明するのも恥ずかしい映画のイメージ写真が貼られ、タイトルがでかでかと記されていた。

 『奇跡の結婚 ~人間になって結ばれてやる!~』――そうタイトルが記されたポスターには、これは予想だが、蜂と蝶が人間になって手を取り合っているという写真が貼られていた。

 これ……絶対わざとだろ、バターちゃん……!

 なんでわざわざオレと一緒の時に、こんな映画見るんだよ……!

 オレを誘ってるとしか考えられないバターちゃんの行動にモヤモヤしながらも、オレは気持ちを整え、

「バターちゃんが見たいんなら、オレは何も文句は言わねぇけど……」

 そう言い流した。

 バターちゃんは映画の内容については特別触れずに、

「そうですか、では……お言葉に甘えて……」

 それだけ言うと、目的の映画が上映される部屋へと飛んでいく。オレもすぐに、彼女の後について行った。


 こうしてオレ達は映画を楽しんだわけなのだが……。

 単刀直入に、感想を言わせてもらおう!

 ――ちょ~気まずかった! 気まずいなんてもんじゃないぜアレは!

 だってよ、あの映画、まるでオレとバターちゃんの未来を映し出しているかのようなストーリーだったんだぜ?

 

 主人公は、とある蜂の男。ソイツは以前見かけた一匹の蝶のことを好きになり、想いを伝えようか迷っていた。幸いなことに、その蝶も蜂のことが好きだったのである。

 しかし悲しいことに、普通に考えて蜂と蝶は結婚なんてできやしない。

 そこで二匹は、自分が人間になって相手を捕まえ、ペットとして飼えばいいのではと思いつくのである。確かに、それはいい考えだよな。

 そして二匹は周りの昆虫に助けてもらい、『人間になれる薬』というのを手に入れるのである。

 その薬を使うと、二匹は願った通り人間になることができ、今度はお互いを探すために様々な場所を歩き回る。

 まぁこれは当然なのだが、二匹とも人間になっちまったら……双方の作戦は失敗に終わるよな。

 しかーし! 結果的に、二匹は結ばれることになるのである。

 人間としての人生を歩むには、収入というものが必要だ。そのため二匹……いや、二人は会社に就職し、働くことになった。

 するとなんと……聞いて驚け! 二人の就職先は、同じ会社の同じ部署!

 二人は、最初は必要最低限のこと以外喋らない、ごく一般的な男女関係にあったのだが、しだいにお互いのいいところに魅かれていき……付き合うようになり……。

 最終的には、結婚することになったのだった。

 双方とも、自分が昆虫だったことは誰にも話さないで生きていくと誓ったため、自分が探し求めていた奴と結婚できたということを知らずに生きていくことになるのだが、これはこれでいい話だったと思う。

 バターちゃんも感動したらしく、最後の方では泣いていた。あいにくハンカチなどは持っていなかったので、背中をさすってやることしかできなかったけどな。


 そんで今は、映画館のロビーにいるのだが……。

「か、感動したな、あの映画」

「そうですね……私、泣いちゃいました……」

 図書館で例の本を見た時よりも、気まずくなってる気がする……。いや、そう思ってるのは、オレだけかもしれないな。

 今回バターちゃんは、顔を赤らめたり無言になったりと、そういったことはなかったし、今も感動でまだ泣いているが、それを除けば別に普通だ。

 オレがただ、自意識過剰なだけか?

 こんなにオレを誘ってくるなんて、バターちゃん絶対オレのこと好きだよね~とか思ってるオレって、やっぱ変なのかなぁ?

 いやいや、男だったらこんな妄想してしまっても、おかしくないだろうな。

 きっと人間の男どもだって、彼女がこ~んなに意識させるようなことしてきたら、自然と勝手な妄想が始まっちまうに決まってるさ。なぁに、オレだけじゃねぇぜ。

 さて、と……。こんなこっぱずかしい話はやめて、次の行き先を聞いておかないとな。

「バターちゃん、次はどうする?」

 オレの問いに、目に溜まっていた涙を拭いながら、バターちゃんは答える。

「それでは……次は、お花を見に行きましょう」

「花?」

 この近くで花の名所なんて、あったっけか……? 疑問に思って、オレは単語で問うてみた。

 するとバターちゃんは、「はい!」と元気よく返事をし、

「私、綺麗なお花がたくさん咲いている場所を知ってるので……」

 やや照れながらそう言った。

 なら、バターちゃんに任せてみるか。どうせオレには、プランなんてねぇしな。

「そうか。なら、そこに行ってみようぜ」

「分かりました!」

 オレが笑顔で頷くと、バターちゃんは嬉しそうに、そして楽しそうに頷き返してくれる。

 この笑顔が見れるだけで、オレはこの世で一番の幸せ者だと思ったよ。

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