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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
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図書館

 さて……図書館に入ったはいいが、バターちゃんは何をするためにここに来ようと言ったんだ?

 まさか本を借りたいとか読みたいとか、そういう理由じゃないよな。人間用の本じゃ、オレ達昆虫には大きすぎるし重すぎるしで、とても持てるもんじゃねぇしな。

 バターちゃんの意図が読めず、どうしていいのか分からずにキョロキョロしているオレを、

「こっちです」

 優しく微笑みかけながら、先導してくれた。

 しっかし……図書館ってもんは、すげぇよなぁ。こんなに大量の本を並べてるってのに……不思議と威圧感が少ない。

 図書館を利用している人間達も、とても心地よさそうだ。みんな静かに、それぞれ本を読んだり探したり、あるいはカウンターに持っていって借りたりしている。

「ビィくんは、図書館は初めてですか?」

「そうだな。聞いたことはあったけど、来たのはこれが初めてだ」

「そうですか……」

 質問の答えに、バターちゃんは嬉しそうに目を細めた。

「それがどうかしたのか?」

「いえ。ただ……」

 バターちゃんはそこで一旦息を吸い直し――ふっと小さく息を吐いてから、感慨深げに言った。

「ただ、ビィくん初めての図書館が、私と一緒なんだなぁって……そう、思っただけです」

「バターちゃんは、今までに図書館来たことあるのか?」

 何となく気になったので尋ねてみると、バターちゃんは「いいえ」と首を横に振った。

「私も初めてです」

 そうだったのか……。バターちゃんもオレも、初図書館なのか……。

 なんか初々しい……新鮮な感じがして、オレはバターちゃんの手を握り直した。その感触に気付いたバターちゃんも、きゅっとオレの手を握り返してくる。

 非リア充昆虫隊の奴らには悪いが……オレは今日をもって、非リア充を卒業できそうだ。お前ら、オレは先に行くぜ。光り輝くリア充生活……満喫してくるからな!

「あばよお前ら」

「へっ? きゅ、急にどうしたんですか……?」

 やっべ。ついつい心の声が漏れちまった。オレは慌てて弁明する。

「悪ぃ。バターちゃんに言ったんじゃないから、気にすんな」

「そうですよね、だって今ビィくん、『お前ら』って言いましたもんね……」

「おう。ちょっと、考えることがあってな」

 オレの失敗を分かってくれたように見えたバターちゃんだったが、やはり完全には理解しきれないらしく、何度も首をひねっていた。

 そんなに気にしなくてもいいのに……むしろ気にされても困るし。

 バターちゃんにこの件で何か言われたらどうしようと思っていたオレだったが、幸いそうはならなかった。

 バターちゃんはふと進むのをやめ、その場で静止している。オレもすぐに止まって、バターちゃんの行動を目で追った。

 ほうほう、何かの本をじーっと見つめているな……。

「なんか面白そうなのでも、あったのか?」

 気になって声をかけると、バターちゃんは頬を少し赤らめながら、「はい……」と小声で頷いた。

「オレも見ていいか?」

 この質問にも、先ほどと全く同じようにして答えるバターちゃん。

 バターちゃんの了承が得られたオレは、彼女の横からきれいに並べられている本を見る。なんかここ、乙女チックなタイトルの本ばっかだな……。

「気になってるのはどれなんだ?」

「こっ、これですっ……」

 バターちゃんが指差す先には……なんとも反応しづらいタイトルの本があった。

 タイトルは……『だ~い好きな男の子をGET☆する方法❤』

「こ、これが面白そうだなぁと思った本なのか……?」

 オレが尋ねると、バターちゃんは顔を真っ赤にしながら俯き、聞き取れるか聞き取れないかの小さな声で、ボソボソと言った。

「興味……あったので……。私も丁度……こういうので、悩んでいたところなので……」

 こういうので悩んでただとぉ? それってまさか……まさかの……!

 オレの心臓は、今までにないくらいバクバクしていた。口から飛び出してもおかしくないだろうと思えるほど、鼓動が激しい。

 何か別のことを考えようも、理性が保てなくなってくる。

 嫌な話だが、オレ達が今いるこの場所が、公共の施設じゃなかったら……もし、二人っきりだったとしたら……。オレはバターちゃんに、どんなことをしていたか分からない。

 オレも男なんだなぁと痛感したぜ。

 とはいえ、このまま二匹で黙り込んでても何も始まんねぇし……どうしたもんかな……。

 オレが迷っていると、いきなりバターちゃんが繋いでいた手を離した。……ちょ、おい! いくら恥ずかしいからって、なんにも言わずにこんなことされると……ショックなんだけど。

 オレは離されてしまった手をまじまじと見ながら、がっくりと肩を落とす。

 すると、オレの落ち込む様子が見えたのか、バターちゃんは俯いたままだが弁明を始めた。

「ごめんなさい、別にビィくんのことを嫌いになったわけではないので、気にしないでください……」

 まるでちょっと前の誰かさんみたいだな。

「気にしねぇよ。……オレだって恥ずかしいし」

 オレは視線を泳がせながら、それだけ返した。二匹の間に、しばし沈黙が流れる。

 やがて気持ちも落ち着いたのか、バターちゃんは得意の笑顔を作ってこう言った。

「では、次は映画館に行きましょうか」

 映画館か……これは予定に入ってたよな。

 オレは「そうだな」と返事をし、バターちゃんに続いて、入って来た時と同じように図書館から出た。

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