表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
20/38

集合

 そして約束の日曜日。

 オレは指定された通りの場所、時間で、バターちゃんを待っていた。しかし……。

「おっ、遅くねぇ……?」

 つく悪態をついてしまうほど、バターちゃんが来るのは遅い。

 もうとっくに九時を三十分も過ぎているのに、彼女は未だに現れない。

 意外と時間にルーズなんだな……意外にな。

 オレが近くに設置されている時計を見上げたその時、

「お待たせしました~」

 またも息を切らして肩を上下させながら、約三十分遅れでバターちゃんがやって来た。

 本来ならここで、「遅れたらダメだろ」とちゃんと言っておくべきなのだが……。相手がバターちゃんでは、言うに言えない。

 泣かせちゃったりしたら、悪いからな。

 仕方なくオレは、なるべく平静を装いながら、

「いや、オレも今来たとこだから、気にすんな」

 手をあげてバターちゃんを出迎えた。

 本当は時間どおりにここに来て、貴女を待ってたんですけどね!

「あっ……ビィくんも今来たんですか? なら良かったです! ……ビィくんを待たせたりしたら、失礼ですもんね」

 いや、実は超待ってたんですよ……。あと五分したら、帰ろうと思ってましてねぇ……。

 オレはバターちゃんの言葉に心の中で突っ込みを入れながら、それでもなるべく優しい笑みを浮かべて、

「よし。じゃあ……まずは遊園地を見て回ろうか?」

 昨日の計画に沿って、そう提案した。しかし彼女は、

「いえ、まずは本屋さんに行きましょうか」

 昨日は一言も口にしなかった、『本屋』という単語を口にしてきた。いっ、いきなり予定変更かよ!

 オレは楽しそうに笑みを浮かべるバターちゃんを見ながら、女ってみんなこういうもんなのかねぇと呆れていた。

 いや……別に今のでバターちゃんを嫌いになったわけじゃないぜ?

 ただ、自由奔放なんだなぁって……感心してただけだ!

「? ビィくん、行きましょう?」

 女……昆虫で言えばメスに呆れかけていたオレの顔を、バターちゃんが笑顔のまま覗き込む。この体勢になると、仕方ないのだろうが顔が近くなる……。オレとしては、めちゃくちゃ嬉しいけどな。

「あ、ああ、そうするか」

 オレは慌てて頷き、

「……ほい」

 すっと、自然にバターちゃんへと手を差し出す。

 デートといったら、手を繋ぐのが定番だろ? 人間のカップルも、そうやってイチャついてるしな。

 そうそう、人間界では、彼氏や彼女がいる人のことを『リア充』というらしい。ん? ちょっと違うって? ……オレはそう学習したんだけどなぁ。

 一方でバターちゃんは、自分に差し出されている手を不思議そうに見つめ、

「な……何でしょうか?」

 オレへ尋ねてきた。

 ははぁ……バターちゃんは、まだこういう経験は少ないのか……。もちろん、他の男と手を繋いでデートしたりなんて、してほしくないけどな。

 鈍いバターちゃんのために、オレは小さな声でボソボソと言う。

「ほら……人間達も、こうしてるだろ……? 仲良しの男女は、こうやって手を繋ぐもんなんじゃねぇのか……?」

 言ってる内にだんだんと恥ずかしくなり、最後の方は声にもなっていなかった。

 しかしバターちゃんには、オレが何を言いたいのかが伝わったらしく、

「そ、そうなんですか……。それなら、私達もそうしましょうか」

 やはりちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめて、オレの手を包むように握ってきた。

 うっ……なんて幸せなんだ、オレって奴は……。

 今思ったことなのだが……オレはずっと、自分って非リア充だよなぁと思っていた。しかし、こうして可愛い女の子と手を繋いでデートしてるって……超リア充じゃね?

 もちろん、人間には嫌われてるぜ? だけどよ……それ以上に、幸せの方が大きい気がするんだよな。

「えへへ……なんだか恥ずかしいですね」

 はにかみながら、バターちゃんはオレの方を見る。オレもバターちゃんを見返し、

「へへっ、慣れれば大丈夫だ。……きっとな」

 自分でも分かるほど、かっこつけて言ってみた。

 図書館までの道のりは、そう遠くない。十分もあれば、すぐに着いてしまうだろう。

 オレは図書館までのこの時間を、大切にしようと思った。

 バターちゃん……なんて可愛いんだ……。マジでオレの彼女にしたい……。

 そんな考えが、オレの頭の中をぐるぐると回る。もし、周りの奴らがオレの頭の中を覗いたりできるようになったら、オレはかなりキモイ蜂になっちまうな。

 しかし……ここまで可愛い娘は、今までに見たことがない。

 人間には『アイドル』という可愛い娘達の集まりみたいなのがあって、テレビに出て歌を歌ったりするみたいだが、バターちゃんは彼女達にも余裕で勝る可愛さだ。

 こんなこと言ったらアイドルに失礼だが、はっきり言わせてもらせうと、そんじょそこらのアイドルより、バターちゃんの方が億倍可愛いと思う。

「ここですよね、確か」

 おおっと、アイドルだのバターちゃんだののことを考えていたら、いつの間にか図書館に着いていたようだ。

 オレはバターちゃんの質問に頷いて答えてから、今度は彼女に質問する。

「でもこれ、どうやって入るんだ?」

 いくら自動ドアという便利なドアだったって、オレ達昆虫にまで反応するドアは滅多にないだろう。

 となると、オレ達は中に入れないということになる。

 しかしバターちゃんは可愛く微笑むと、「大丈夫ですよ」と言って、一人の人間を指差した。

「あの人、図書館に入るみたいですから、あの人と一緒に入っちゃえばいいんですよ」

「そうか」

 ナイスだバターちゃん。確かに、人間を利用すれば、簡単に館内に入ることができるな。

 時間にはルーズでも、頭の働きは早いようだな。ますます好きになったぜ。

 オレ達二匹は人間のすぐ後ろに付き、何食わぬ顔で自動ドアをくぐった。自動ドアは結構長い時間開いているようで、オレ達が通った後も、少しの間まだ開いたままだった。

 こうしてオレとバターちゃんは、無事に館内に入ることができたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ