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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
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アゲハ蝶の女の子

 と、いうわけで土曜日。

 オレは待ち合わせのみどり公園に来ていた。

 みどり公園は面積は小さいくそこらじゅうにあるような普通の公園なのだが、その名の通り自然に満ち溢れた公園で、オレとしては失いたくない場所の一つである。

 ちなみに、オレ達がどうやって日時を確認しているのかというとだな……。

 時刻は、近くの民家の時計をこっそり見ればいい。窓のカーテンさえ閉まってなければ、覗き見なんてたやすいものだ。

 曜日は、カレンダーを覗き見すればいいのだが、それよりもっと簡単な確認の仕方がある。

 それは、『人間達の動きを観察する』ことだ。

 人間達は基本、月から金曜日までを平日とし、学校や会社に行くなどと外で過ごし、土曜日と日曜日を休日として基本遊んで過ごしている。中には、平日に休む人間もいれば、休日に出勤する人間もいるんだけどな。

 そこでオレ達は人間の動きをよく観察し、デカいビルや店、病院に朝早くから多くの人間が出勤したり、学校に子供達が登校している日は平日、そうでない日は休日と見極めているのだ。

 大体はそれで合っているのだが、たま~に祝日というものがあるらしく、平日のはずなのに人間が出勤・登校しておらず、ちと焦っちまう時もある。


「しっかし……おっせぇな~」

 約束の十時は、もう当に過ぎたはずなのだが……。オレのお相手は、未だに現れていない。

「オレが早すぎたのか?」

 周りの人間に昆虫の言葉は聞こえないことをいいことに、オレはぼやきまくる。

 ああ……せっかくアイツらには口実つけて、なるべく悟られないように出てきたのに……。モースだけには、もうバレるんだけどな。

 まぁ、それはいいんだ。モースには、「アントとフライルにばらしたらフルボッコな」と脅しをかけておいたからな。多分そんな馬鹿げたことはしないだろう。

 そういえば……あのラブレターはアントから受け取ったものだが、なぜアントがオレ宛てのラブレターを持ってたんだ?

 本人から直接渡しておいてと頼まれたとしか、考えられないのだが……一体いつ、そんな時間が……。


「お、遅くなってしまって、ごめんなさい!」


 ぼけっとしていたオレに、可愛らしい声がかけられた。

 オレは一秒もかけずに、素早く声のした方を向く。すると、そこには……。

「あ、あなたがビィくん……ですよね?」

 ここまで急いで飛んできたのか、息を切らしながらも言葉を紡ぐ、アゲハ蝶の女の子がいた。

 彼女の質問に、オレは「ああ」と短く答える。

 すると彼女は胸の前で手を合わせ、ぱあっと表情を明るくさせて喜ぶ。

「やっぱりそうでしたか! 私、一度でいいからビィくんとお話ししたかったんです!」

「は、はぁ……そうか。そういえば……名前は?」

 会ったからには、聞いておかねばならないと思った。これから付き合うにしろ付き合わないにしろ、名前だけはゲットしておきたかったのだ。

 問われた彼女は、

「そうでしたね、名前がまだでした、すみません」

 後頭部をポリポリと掻きながら照れてから、腹の前で行儀よく手を合わせ――


「私はアゲハ蝶のバタフライトルです。『バター』って呼んでください」


 名を名乗ってから、丁寧に頭を下げた。

 彼女――バターちゃんにならって、オレも簡単に自己紹介をする。

「どうしてオレの名前を知ってるのかは知らないが……ま、ご存じの通り、蜂のビィだ。宜しくな」

「はい、宜しくお願いしますね、ビィくん」

 バターちゃんはにっこりと笑うと、突如オレの手を優しく握ってきた。

 なっ……あっ……!

 オレの顔は急激に赤くなり、体温も急上昇していくのが分かる。全身が火照って熱く、薄らと額には汗がにじむ。

 おっ、オレ……可愛い女の子に、握手してもらえた……。しかも二本の手を! 

 これだけでも、かなり嬉しいぜ。今までこんなこと、一度もなかったからなぁ。

 バターちゃんは軽く手を上下に振ってから、握る時と同様、優しく手を離した。手が離した後でも、バターちゃんのぬくもりはまだ残っている。

「ビィくん? どうかしましたか?」

「なっ、なんでもない! 大丈夫だ!」

 オレの様子がおかしいのは、バターちゃんにも分かってしまったのだろう。バターちゃんは心配そうに、オレの顔を下から覗き込んでくる。顔が近い。

「大丈夫ならいいんですけど……具合悪かったら、無理しないでいつでも言ってくださいね?」

「あっ、ああ、そうするぜ」

「じゃあ、あっちのベンチにでもとまって、ちょっとお喋りしましょうか」

 オレはバターちゃんが指差したベンチを見て、人間がいないのを確認する。幸いそのベンチ、そして近くには、人間の姿は見当たらなかった。

「そうだな。それじゃ、行こうか」

「はいっ!」

 ベンチへ向かうオレのすぐ後ろを、バターちゃんは蝶らしく優雅についてくる。

 オスの蜂は毒針を持たないが、オレは今、尻に毒針がなくてよかったと……初めて自分がオスでよかったと思えたよ。


 それからオレとバターちゃんは簡単に自分のことを話し、明日の予定についても話し合った。バターちゃんはその間、ずっとニコニコと笑っていてくれた。

 話は意外とすぐに終わり、オレ達は別々の方向に帰ることになった。

「じゃあな、また明日会おうぜ」

 オレが最後に手を軽く挙げながら別れの挨拶をすると、

「はい! 楽しみにしてますね!」

 バターちゃんもにこっと微笑みながら、会釈をしてから飛んで行った。

 オレはその後ろ姿を、見えなくなるまで……いや、見えなくなってからも、彼女の飛んで行ったと思われる方角を、目で追っていたのだった。

キャラクター紹介 4


《バタフライトル》

分類:アゲハ蝶  一人称:私

名前の由来:蝶の英語(バタフライ)から

ビィにラブレターを書いた女の子。

性格は優しく、顔も可愛い。基本的に誰にでも敬語だが、アントには最初、敵対心のようなものを抱いている。

以前ビィに助けてもらってから彼を好きになったらしいが、詳しいことは誰にも話していない。

愛称は『バター』。

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