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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
17/38

人生初のラブレター

 次の日の朝。

 オレは誰よりも早起きして、昨日アントから受け取ったラブレターを読んでいた。

 昨日の内に読んでしまっても構わなかったのだが、もう辺りはかなり暗いし、眠かったしで今日にまわしたのだ。

 まだ他の奴らは誰も起きていなく、しかし陽の光はすでに明るい。少なくとも、手紙を読むのには十分な明るさだった。

「うへへ……」

 ラブレターに目を通しながら、オレは自分でも気持ち悪いと思ってしまうような声で笑った。

 いや、しょうがねぇんだって! 男だったら、こうなっちまうだろ! だってオレ、人生初のラブレターなんだぜ? 

 多少気持ち悪くても、そこは目をつぶっていただきたい。

 ラブレターの内容は、こんなものだった。


 

 ビィくんへ


 今度の日曜日、一緒に遊びに行きませんか?

 とはいえ、急にこんな手紙がきても、ビィくんは混乱してしまうでしょう。

 なので一日前の土曜日に、一度お会いできますか?

 時間は、午前十時ごろで。

 都合が悪かったら、来なくても構いません。その時は、またお手紙を書かせていただきます。

 また、都合で時間に遅れるという場合もあるかと思います。

 私はビィくんが時間どおりに来なくても、一時間ほど待ってますので、大丈夫です。

 それ以上遅れるという場合は、欠席ということで判断させてもらいます。

 そうそう、まだ書いてなかったですね。

 集合場所は、みどり公園で。

 それでは、お会いできるのを楽しみにしています。



 差出人の名前はなく、何ていう名前の子か分からないのだが……。

 オレはとにかく嬉しくて嬉しくて、何度も文を読み返していた。

 文面から察するに、きっとしっかりした娘なんだろうな……。でも字体は丸っこくて可愛いし……。

 あんな子かな、こんな子かなと、様々なタイプの女の子を思い浮かべてみる。

 もちろん、全員昆虫なんだけどなっ。

 と、オレが顔を少しだけ赤くしながら妄想に浸っていると……、

「ちょり~す。……あれ? 何見てんのビィ」

「おわーったったった!」

 珍しく早起きなモースが、後ろからオレを覗き込んできた。オレはとっさに、読んでいた手紙を封筒にしまう。

「はっ、早起きだなモース」

「なぁ~んか目が覚めちゃってねぇ。……それより、今隠したの、なに?」

 モースはオレの手元に視線を落としながら、淡々と言う。

「う~ん、なんだろねぇ。手紙みたいだったけど……ビィにわざわざ手紙書く虫なんて、この地球上に存在すんのかねぇ?」

 そこまで言うか! オレってそんなに価値のない虫だったの?

「失礼な奴だな、オレだって手紙ぐらいもらうぜ!」

「でも、オレっち達昆虫が手紙書くのって、かなり大変だよ? 便箋とかないし、鉛筆もないし~……ほら、そういう道具は人間の目を盗んで、こっそり使わないとじゃん?」

「そ、そうか……」

 モースに言われて、オレはふと考え直した。

 そうだよな、考えてみれば、オレ達昆虫は人間に比べて体も小さいし、ましてや文房具なんて使わない。第一、そういった店がないんだからな。

 だから手紙を書くとすれば、まずは人間の家に忍び込み、手紙セットを探し、クソデカくて重たい文房具を持って、全身運動で書かなきゃいけないんだからな。

 最後にそれを、自分で持ち出さなくてはならない。

 確かにこれは超めんどくさい。ここまでしてオレに手紙を、しかもラブレターを出す女の子なんて、本当にいるのか?

 オレがモンモンといろんなことを考えていると、

「ほいっと」

 モースがオレの手から、いとも簡単に手紙を取り上げた。

「あっ? おっ、おい、返せよ!」

「や~だよ。……どれどれぇ~?」

 じ、自分がされて嫌なことは、人にやるなって常識があるだろ?

 モースは封筒から手紙を取り出し、黙ってそこに書かれていることを読み始めてしまった。くそ……コイツらには秘密にしておこうと思ったのに……。

 少ししてラブレターを読み終えたモースは、ニンマリと面白そうな笑みを浮かべ、

「よかったじゃあ~ん? 人生初の、ラ・ブ・レ・タ~」

 思いっきりオレをバカにしてきた。こっ、コイツ……調子に乗りやがって!

 オレはあえて何も言い返さなかったが……思いっきりモースを睨みつけ、心の中で精一杯バカにしておいてやったぜ。

 へへっ、いいだろう、羨ましいだろう。所詮お前はラブレターも貰えないような、負け組男子なんだよ。

 ……そうやってオレをバカにしてるのも、ほんとは悔しいからなんだろう?

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