オレとアントの秘密(?)の会話
時間はとんで、夜。
オレ達は、全員河原で就寝することになった。こういう日は、別に少なくはない。
「はぁ……」
時刻は十一時。よい子は寝る時間だが、オレはなかなか寝付けずにいた。
オレは全然『よい子』じゃねぇし、そもそも夜ふかししたからといって怒られるわけでもないからな。
なんで寝付けないのかは、不明だった。昼間あんなに運動したのに……というかバトルをしたのに、どういうことだか目がさえちまってな。
ゴロンとその場に横になってみるも、全く眠れそうになかった。
頭上では、少しだけだが星が瞬いている。ここは都会でも田舎でもないため、ビルやら店やらの明かりで星が全く見えないとか、光がないので満天の星空が楽しめるとか、そういったことはないのだ。
オレとしては、なんでも丁度いいのが一番だと思うけどな。
なんて、ぼーっと星空を眺めていると、
「ビィくん、隣……いいかな?」
「アント……」
ほとんど気配を感じさせずに、アントが静かに近づいてきた。
「隣はいいけど、お前、眠くないのか?」
アントが睡眠不足になるのは可哀そうだと思い、オレなりに気遣って声をかけてやる。
するとアントは、ちょっと憤慨したという表情を浮かべ、
「もうっ、いつまでもボクを子供扱いしないでよねっ!」
珍しく反論してきた。
いやいや、子ども扱いするなって、子供が言う言葉だぞ? それに、お前はまだガキじゃねぇか。
「別に子供扱いしてるわけじゃないんだが……ほら、お前今日は疲れただろ? だから、ゆっくり休んだ方がいいんじゃねぇかなって」
「ビィくんの方が、大変だったでしょ。ボクは勝手にお散歩して、みんなに迷惑かけて、最後にちょっとだけ闘っただけだから……」
アントは苦笑しながら、手を振って否定の言葉を述べた。
そんな腰が低いアントに、オレは「へっ」と吐き捨てるように笑ってから言ってやった。
「いいや、あれはアントがいなかったら、成功しない作戦だった。お前のおかげで、あのおっかないハチクマから逃げることができたんだ。……感謝してるぜ」
オレの言葉を、目を丸くして驚きながら聞いていたアントは、
「えっ、あっ、そ、そっかぁ……」
やがて顔を赤らめながら、後頭部を掻いていた。どうも仕草が可愛らしい。アントは男だが、同性から見ても、『可愛い』と思うような行動をとる時がある。
そんな意図を抱きつつ、オレがアントをじっと見つめていると、
「あ、あの、どうかした?」
ふいに視線をこっちに動かしたアントと、目が合ってしまった。
なんだか妙に恥ずかしくなってしまい、「な、何でも」と言いながらオレは視線を逸らす。
なんだこの……美少女と喋ってるみたいな感覚は! 落ち着けオレ! 相手は確かに可愛いが、れっきとした男だぞ!
オレは頭をブンブン振りまくり、変な想像を散らした。そして、
「お、お前こそ、急にどうしたんだよ」
話題を変えようと、アントに話を振る。
尋ねられたアントは、「あ、あぁ、うん」と前置きをしてから、ちょい答えづらそうに言った。
「ちょっと、聞きたいことがあって……い、いいかな?」
聞きたいこと? 何だろうな、アントがオレに聞きたいことって……。
もちろん気になったオレは、「おう、いいぜ」と頷く。
するとアントからは、予想もしなかったとんでもない質問が投げかけられた。
「ビィくんって……好きな女の子とか、いる?」
「ブッ――!」
思わず吹いてしまった。
い、いきなりなんてこと質問すんじゃオラァ! オレはアントを押し倒す勢いで、アントにぐいっと近づいた。
「わっ?」
その勢いに驚いたアントが、少し身を引く。しかしオレは構わずに、さらにアントとの距離を縮めていった。
ゆっくりとだが、オレ達の距離は確実に縮まっていく。
「び……ビィくん……?」
「あ、アント……てめぇ……」
――何ってこと聞きやがる!
その言葉が、喉まで出かかった。しかし、言わずに留めておく。
理由はもちろん、モースとフライルが寝ているから起こさないようにするためと、昼間のようにアントに怖がられないようにするためだ。
オレとアントの距離は、もう数センチしかない。暗闇の中だが、こんだけ近ければ相手の顔がよく見えるってもんだ。アントの顔は硬直しきっていて、オレのことを怖がっている様子がうかがえる。
しかしオレは距離を離すことはせず、アントへの接近をやめて一言。
「なんでそんなこと聞くんだ?」
「ふぇ?」
「なんでいきなり変なこと聞くんだって、聞いたんだ」
目に少しだけ涙を浮かべているアントに、オレはさっきと同じことを、言葉を少しだけ変えてもう一度言ってやった。
アントはややあってから、
「な、なんとなく、かな……?」
とだけ答えた。
なんとなくでそれ聞く? それにオレの返事をもらって、お前はなんの得をするっていうんだ!
思いっきり叫びたかったが、さっき言ったのと同じ理由でそうはしなかった。




