再集合、オレらの最良の居場所
その後――。
ハチクマとの闘いに見事勝利したオレ達は、また元の場所に戻ってきていた。別に何をするわけじゃないんだが、何となくそういう雰囲気になったのだ。
こういうとこが、オレ達らしいと思う。
河原まで、今度は襲われたりせずに戻ってきたオレ達がまず話していることとは、
「アントお前、どこ行ってたんだよ!」
「ご、ごめんなさいぃ!」
オレだけが知らない、『アントはどこに行っていたのか』についてだった。
オレに激しく問い詰められているアントは、問い詰めてるオレから見ても、かなり怯えている状態だった。オレが何か一言口にするたびに、「はひっ」だの「はわっ」だのと可愛く悲鳴をあげるんだもんな……。
そのせいでモースに、
「ちょっとビィさぁ~、ショタ男くん怖がってんじゃん。いい加減、脅すのやめたげなよぉ~」
などと、別に脅してるわけではないのに注意されてしまった。
そんなに怖いのかよ、オレ……。仲間にまで怖がられるとか、かなり傷つくんだけど……。
内心落ち込んでいるのが顔に出ているのか、オレを見たアントは慌てて手をブンブンと振り、
「ちっ、違うよ! 別にビィくんが怖いわけじゃなくって……」
心にもないことを言ってくるのであった。そうやってかばわれると、余計に胸が痛くなってくるんだけど……。
っと、そういえば話がそれちまったし……落ち込んでいる場合ではない。
オレはなるべく優しい声と表情をこころがけ、改めてアントに聞いてみることにした。
「アント、お前、どこ行ってたの?」
するとアントはいくらか落ち着いたのか、悲鳴をあげることなくすんなりと答えてくれた。
「ちょっと、お散歩に行ってたの。……ビィくんとモースくんが、二匹でやり合ってたから……その、なんだか居づらくなっちゃってね」
「そうだったのか……」
完全に、オレとモースが悪いな。アントが……いや、仲間が居づらくなるような雰囲気をつくるのはいけないと、前々から気をつけていたのにな。それなのに、アントに不快な思いをさせてしまうなんて……。
オレは心の底から反省し、ちゃんとアントに謝ろうと思った。
「アント、ごめん……。お前が居づらくなるような空間を作っちまって、本当にごめんな……」
オレとしては珍しい、頭を下げての謝罪。オレは地面をじっと見つめながら、アントの返事を待った。
アントはすぐに言葉が出ないのか、しばらくの間何も返さなかった。フライルはもちろん、何も言わずにこの状況を見守っているし、モースもオレを茶化してきたりはしなかった。
静寂が場に満ちる。
何分待っただろう。やがてアントが、ゆっくりと切り出してきた。
「ビィくん……その……ぼ、ボクの方こそ、ごめん……」
「えっ?」
驚いて頭を上げると、そこには涙をボロボロと流す、アントの姿があった。
「あ、アント……」
「ビィくん、ボク、勝手にいなくなったりして……ごめんね……。ビィくんに、たくさん心配かけちゃって、迷惑かけちゃって、ごめんね……」
「そんな、悪いのはオレなんだし、別にお前が泣かなくても……」
どうやってなだめたらいいのか分からず、オレはフライルに視線を送った。一応、「どうすればいいんだよ、これ」という意味を込めて。
フライルはそんなオレの意図を理解してくれたらしく、すっとアントの傍に寄ると、アントの頭を優しく撫で始めた。まるで小さい子をあやすように、いい子いい子、と一定のリズムで撫で続ける。
い、いくらアント相手だからって、それはないだろ! アントは人間でいうところの、幼稚園児ってやつか?
オレが若干……いや、かなり引いていると、フライルが視線をこっちに寄こした。
「な、何だよ」
オレが尋ねると、
「お前もやれ」
当たりの前のように、フライルはそう言ってきた。は、はぁ? 何でオレがそんなことを?
「フライルがやってやりゃいいだろ?」
「お前の方がいいんだ。ほら、早くしろ」
な~にが『お前の方がいい』だよ! フライルお前、とりあえずやってみたけどやっぱ恥ずかしくなってきたから、お前がやれって言いたいんだろ! なに言ってんだ、オレだってそんなの恥ずかしいわ!
「お、オレがやってもお前がやっても、んなもん同じだろ? 自分がやり出したことなんだから、恥ずかしがってないで最後までやれ!」
「べっ……、別に、恥ずかしがってるわけじゃないぞ?」
「嘘つけ、顔赤くなってんじゃねーか! 男相手に、お前は変態か?」
つい、思ったことをそのまま口にしてしまった。オレの致命的な言葉を聞いたフライルの口元がピクリと動いたのが、オレの位置からでも分かった。
「ほぅ……俺は変態か」
「ひっ――?」
こ、これはフライルが本気で怒った時の声だ……!
「どうやらお前は、とんだ勘違いをしているようだな」
フライルはオレの心臓を、視線だけで止めようとしてくる。正直、あのハチクマの視線より怖い。
「モース、あとは頼んだぞ」
「へいへ~い、わーったよ」
フライルはアントのなだめ役をモースに押し付けると、オレの方へわざとゆっくり飛んで近づいてくる。
「い、いやその、あれはとんだ間違いで……」
フライルに背を向けて逃げ出そうとするオレの腕を、フライルはがっしりと掴んできた。
「間違いでも、言っていいことと悪いことがあるだろう」
「ひ、ひぇぇ……」
「最低限の礼儀が分からない輩には……しつけが必要だな」
フライルは無表情でそう言い放つと、六本ある腕の中――といっても一番下の二本は二足で開くる時のための足として使っているし、本当は全部足なのだが――から一番上の二本を選び、それを強引にクロスさせてオレをねじ伏せようとしてきた。
さながら、プロレス選手みたいな手際の良さ、そして力強さである。
オレはいとも簡単にその場に膝立ちの状態でねじ伏せられ、
「ご、ご、ごめんなさい……いてててててて!」
何度も何度も謝らせられるはめになったのであった。
少し遠くからは、
「まぁ~、失敗なんて誰でもやっちゃうことだし、気にしたらそこでオワタだZ☆」
「う、うぅ……うん、うん……」
などという、こんな時でも陽気なモースと、未だに落ち込んでいる様子のアントの会話が聞こえてきていた。




