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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
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空の闘い 3

「はっ、威勢だけはいいようだな!」

 ハチクマはオレをバカにしたように鼻で笑うと、オレの突進をひらりとかわした。

 まぁ、体当たりしたところで……ダメージなんて全然ないんだろうけどな。

「ちっ! モース!」

「あいよっ!」

 その言葉だけで、モースは何をすればいいのか分かったみたいだ。いつもはアホなことばっかしてるのに、ピンチになると、意外と頼りになるんだからよぉ……。

 モースはアントを背中にのせたまま、ハチクマに真正面から突っ込んでいく。

「へっ、ま~た体当たりかい、ちっとは頭使ったらどうだ?」

 ハチクマは当然のように、モースの攻撃もかわそうとして――、

「させるか!」

 フライルによって、その動きは阻止された。

 フライルはモースに気をとられているハチクマの隙をつき、彼の耳元へと入り込む。そして、羽を細かく動かし、羽音を一層強くたて始めた。

「うわっ?」

 突如耳元でうるさい羽音が聞こえたら、誰だってひるむだろう。むろんハチクマも驚いたらしい。

 ハチクマの意識する標的は、モースからフライルの羽音へと変わった――今だ!

「鷹さんゴメンねぇ~!」

「なっ――!」

 その隙をついて、モースはハチクマの両目を覆うように羽を広げた。そして、その体制のまま体当たりする。

 結果、ハチクマの視界は、モースの羽に遮られて真っ暗になった。

「ナイスだモース!」

 オレはモースへと、親指をたてるジャスチャーを向けた。モースは首だけでオレの方を見て、同じようにジャスチャーを返す。

 真っ暗な視界の中、ハチクマは何がどうなったのか分からないといった様子で、

「なっ、なっ……何だこれは!」

 無意味に羽をばたつかせていた。オレはその様子を見て、ついつい噴き出してしまう。

 だってさ、鷹が昆虫に襲われてんだぜ? 普通に生きてたら、あんまし見ない光景だよな!

「おいハチクマぁ、そろそろ降参したらどうだ?」

「ち、ちくしょう……」

 耳元では羽音、目には羽が張り付いている……これはもう、いくらハチクマでも嫌になっちまうだろ。

 オレはハチクマの降参を予想して、ニヤリと口角をつり上げ不敵な笑みを浮かべる。しかし……。

「こ、降参なんてするもんか!」

 返事はこれだった。

 そうだよな、そう簡単に諦めてくれるなんて、そんなはずがないよな。オレだって分かってるさ。

 だから、ちゃ~んとそういう時のための次の攻撃方法も、考えてあるんだぜ?

「そうかそうか。なら、無理に降参しろとは言わねぇよ。ただ……」

 オレはそこで言葉を切り、目だけでアントに指示を送った。

 これはいつもやっている攻撃方法なので、アントもすぐに理解してくれた。

「ただ?」

 ハチクマが短く尋ねて――、


「ただ、降参せざるをえなくなるけどな」


 オレが超ドヤ顔でそう言った直後――、

「なっ、なん……ぎゃああああ――――――――――っ?」

 ハチクマは悲鳴をあげて、体を大きく揺らした。その衝撃で、モースは半ば無理やり体をひきはがされる。

「うっ、うぅ……」

 大いに騒いだハチクマは、今度は目をきつくつぶってその場から動かなくなってしまった。

 ふふふ……作戦大成功だったな。

 しばらく静かな時間が過ぎ、最初に口を開いたのはハチクマだった。

「くっそぉ……痛てぇ、降参だ……」

「ははは、そうだな。大人しく降参しておけ」

「言われなくてもそうするさ……。そうだ……最後に一ついいか?」

 涙目のハチクマは、オレに質問を投げかけてきた。

「俺、すげぇ痛みを味わったんだが……頭を何かに刺されたみたいなんだ。どうせお前らの攻撃だろう? 誰だ? 誰がやったんだ?」

「ん? ああ、オレが一瞬でそっちまで移動して、お前の頭に針をぶっ刺したんだよ」

 オレが得意気に答えてやると、ハチクマはオレの目を見据えてきてた。

 ……どうやら冗談は通じないようだな。

「それ……嘘だろ?」

「ほう、どうしてそう思うんだ?」

「お前が近づいてきたら羽音で分かるし、それに……オスの蜂は、針を持たないだろ?」

 なんだよコイツ、鷹のくせして、蜂のことよく分かってんじゃん。

 敵に感心させられるのはどうかと思うが、思わず「おぉ」と思ってしまった。

「すげぇな、そんなことまで知ってるなんてよ」

「たまたまだ。……で? 俺の頭に強烈な攻撃を食らわしたのは、一体どいつなんだ?」

 ハチクマの問いに、

「ぼっ、ボクです!」

 若干怯えながらも、アントが手をあげて答えた。

「ボクが噛みました。ボク……噛まれると痛いって、よく言われるので……」

「ほぅ……アントちゃんが、か」

 ハチクマは感心したように一度頷くと、それ以上は何も言わずに踵を返した。自分の巣にでも戻るのだろう。

 オレは背を向けて飛んでいくハチクマの姿を、自分でもよく分からないのだが……見えなくなるまで、ずっと目で追っていた。

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