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我ら非リア充昆虫隊!  作者: 玉本綜
第一章「人間達の思い」
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空の闘い 2

 オレの雄たけびを聞いたハチクマは、目を細めながら言う。

「へへっ、アントって奴は、誰だかよく分からんが……お前にとって大切な奴なんだな?」

「そうだ!」

 分かっているのなら、早く離してほしいのだが……。

「兄ちゃんの気力は、大したもんだぜ。……なんだか、お前を解放してやりたくなってきたなぁ」

「ならとっとと離せぇっ!」

 このチャンスを逃さんばかりに、オレは羽ばたきを一層強くした。とはいえ、さっきより体力はかなり落ちいてる……。羽音にも力強さがない。

 ブブッ、ブブッと、短く小さいオレの羽音が、消えそうになりながらそれでも音を保っているのが分かった。

「くっそぉ……おいコラ、離してくれんだろっ? 早くしろっ!」

 いきり立ったオレが怒鳴ると、ハチクマは「おいおい」と言いながら苦笑した。

 なっ……なんだよ。まさか、「あれは冗談に決まってるだろ」とか言い出すつもりじゃあるまいな……。

「う、嘘とか言ったら承知しねぇかんな!」

「嘘じゃねーよ。俺は本気で、お前を諦めようとした。だがな……」

 ハチクマはそこで一拍置いて、わざとらしく喉を鳴らしてから……得意のニヤリとした不気味な笑みを浮かべて、ゆ~っくりと続きを口にした。


「だが俺の腹は、もう限界だ。この際、蜂じゃなくても喰いたくなるくらいにな」


「っ……! こっ、このっ……!」

 かなりの身の危険を感じたオレは、体を四方八方に動かし、力づくでもハチクマから逃れようとした。しかし、そんなんで大切な獲物を手放すような奴じゃない。

 ハチクマはくちしばしを器用に使い、オレを丸のみしようとする、が……。

「全く、うるさい兄ちゃんだな。こうしてやらないと納まらねぇのか?」

 オレのほとんどを口内に入れたところで、丁度頭に当たっていたくちばしを、そのままそこに叩きこんできた。

 オレの頭に、強力な一撃が送られる。

「がっ……!」

 オレは一瞬にして意識を失い、動けなくなってしまった。

 いや……完全に気を失ったわけではないらしい。まだぼんやりと、周りの様子が見える。こうやって、頭で何かを考えることもできる。

 


 あぁ……ついにオレは、ここで死ぬのか……。


 ここまで来て……何やってんだよ、オレ。


 アントを助けるんじゃ、なかったのかよ……。


 みんなのところに、二匹で戻るんじゃ、なかったのかよ……。


 なのに……もう、アントどころじゃなぇな、こりゃ……。


 自分一匹で帰ることもできねぇ……。


 情けない、なんて情けないんだ……。


 これでも、オレは男なのかよ。


 あぁ、でも、もう……さすがに意識がとんでいく……。


 もう、生きる気力もねぇよ……。


 ついにここで、死ぬのか……?


 ここまで来て……? ここまで頑張ってきたのに……?


 あっけなく、ハチクマなんかの食料になって……いいのか?


 いや、ダメだよな、絶対に、ダメだ。


 オレは決めたんだ、決めたんだ、決めたんだ!


 オレは決めたんだ――!



「オレは決めたんだ! アントを見つけるまでは死なねぇって、決めたんだ―――――――――っ!」

「う、うおぉっ?」

 強く、長く、オレは叫んだ。

 オレの意識が途切れていないことに驚いたハチクマは、一瞬だがくちばしに込めていた力を緩める。

 よし、今だ!

 こんどこそ本当のチャンスを掴んだオレは、ブバッ! と音をたてながら、勢いよくハチクマのくちばしから逃げ出した。

「に、兄ちゃん……待て!」

 こんなこと、ハチクマも予想していなかったのだろう。もちろん、オレも予想なんてしてない。

 奇跡って、本当にあるもんなんだな……。

 オレは奇跡にふっと微笑むと、こちらを睨んでいるハチクマに、笑顔を向けた。

「おいハチクマ! オレを喰おうったって無理だぜ! オレはお前に何度捕らえられても、何度でも抜け出してやるからな!」

「こ、この野郎……!」

 ハチクマがオレを視線だけで殺そうとしてきたが、オレはそうはならなかった。

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