空の闘い
「……ふん、よく言うな! 兄ちゃんは!」
オレの答えを耳にしたハチクマは、なぜか嬉しそうに叫んだ。
「俺に目をつけられて、捕獲までされて……そんなこと言ってきたのは、兄ちゃんが初めてだ!」
「それは嬉しいぜ!」
別にやけくそになってるわけじゃあない。ただ、こんな時は……こんな時だからこそ、前向きに考えようって思ってるだけだ。
ハチクマは飛び続けながらも、容赦なくオレを噛みちぎろうと、くちばしを体に刺し込んできた。
「っ……! うぐぐ……!」
やるんならひと思いに、と言ってしまいたくなるほど、それは辛いものだった。
ハチクマは一気にオレを喰ったりはしない。何度も浅く、くちばしをいろんな箇所に刺しまくり、いたぶりながら殺して……オレが完全に死んだのを見届けてから、丸飲みしようとしているのだ。
なんつー野郎だ……残酷を好みやがって……!
しっかし、鳥のくちばしっていてぇな。まぁ、それもそのはずだ。インコだって、本気で噛まれたら結構なダメージを食らうのに……ハチクマじゃ、その何倍も痛いんだからな。
オレは痛みで気を遠くしながらも、それでも気力だけは失わなかった。
そもそも、なんでオレはこんな目にあっているんだ……。そうだ、アントを探してたんだっけな。
いきなり姿をくらましたアイツを探してて……そんでコイツに捕まっちまって……。
はっ、考えてみれば、何やってんだよ、オレ。何だか、自分が情けなく思えてきたよ。
アントを見つけて、連れて帰らなきゃいけないってのに……オレまで変な奴に捕まっちまってさ。本当に、何やってんだろうな。
そうだ……ここで死ぬわけには、いかないんだ……。
死ぬにはまだ早い。せめて、アントを連れて帰ってから、死のう。アイツの無事を確認して……いや、アイツに少しでも会えれば、あとはもうオレなんてどうなったっていい。
だから今は……まだ、死ぬわけにはいかないんだ……!
「う、うわああああああああ――――――――――――――っ!」
「っ! お、おい兄ちゃ……!」
オレは、何とかしてハチクマから逃れようと、とにかく必死で羽を動かした。ブ――――ンと、聞き慣れた自分の羽音が、途切れ途切れにだが聞こえた。
「おっ、オレは……死ぬわけにはいかねぇんだ!」
気合を入れる為に、オレは叫んだ。
「まだ死ぬわけには、いかねぇんだよ! こんなところでくたばってたら、この先やっていけねぇしな!」
そうだ、ハチクマごときに殺されたりしてたら、オレの寿命はいくつあっても足りねぇよ!
意識がもうろうとして、自分が何を言ってるのかも、自分の体がどうなっているのかも、周りはどんな状態なのかも、ぼんやりとしか分からない。
だけど、自分が今、『生きよう』としていることだけは、はっきりと分かった。
「オレはっ、オレはっ、オレは――――――――――っ!」
喉を痛めながらも叫び続けるオレに、
「こっ、この!」
ハチクマは、容赦ない一撃を食らわしてきた。ぐさっと勢いよく、オレの背中にハチクマのくちばしが刺さる。
その刺さり方からして、今度は本気のようだった。
「兄ちゃんうるせぇぞ!」
「うるせぇのはテメェの方だ! いいか? オレはお前なんかには、ぜってーに負けねぇ!」
実際うるさいのは、まぎれもなくオレの方なのだが……。今はそんなこと、関係ないだろ!
とにかくオレは、お前のくちばしから逃れてやるぜ!
体は傷だらけで、頭もろくにまわらなくて、ほとんど何も考えられない状態だけど――!
一つだけ……こんな状態でも、ちゃんと考えていることがある!
それは――、
「アント! お前はオレが、必ず見つけ出す! だからオレは、お前を見つけるまで……死なねぇ―――――――――っ!」




