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彼は寝ている  作者: 国見あや
30/58

心配

今朝の夫はぐったりしている。身体が冷え切っていてダイニングのテーブルに座ると、夫はまだしまっていない昨年の冬から出しっぱなしのストーブのスイッチをオンにした。5月も終わりに近いのにストーブね。「大丈夫?」心配そうな私に夫は無理して「うん。」とうなずく。ストーブはしばらく夫のためにだしておいてあげよう。


 私は夫に「はい、立って。もう一回ベッドに戻って寝ようね。」と声をかけて立ち上がらせ、寝室にひっぱった。そして横になって布団をかけてあげると、夫のことが気になって仕方がなかったが気持ちをひきしめて、自分が今日通わなくてはいけない、習い事に向かうため出かける準備(自己中かも?)をして玄関をそっと閉めて鍵をかけ、ゴミを出しがてら近所の歩いて15分ほどのところにある絵画教室へ行った。

 

 絵画教室は夫の勧めで通い始めて2年目になる。途中予期せぬ入院などで通えないときもあったが絵の先生が柔軟な対応をしてくれるのでたいへん助かる。夫は自分も習いたいくらい、というくらい彼自身も絵を描くのが好きみたいだ。結婚当初はデッサンしかしているところを見ていなかったので、夫に油絵をいちばん小さいキャンバスに描いてもらった。そして、それは抽象画であったらしいのだが、夫のその絵と私の別の絵は時を同じくして、同じ場所で飾られた。東京のある全国公募にお互い入選したのだ。そんなことがあったのが2012年だったと記憶している。


 そんなんでそれ以降夫が絵を描く姿は見ていない、が何でも自分を律して犠牲して私を優先にしてくれる彼、「本当にありがとう。」絵画教室通っているのは自分のお小遣いからだけど、彼の理解がなかったら私は自由に何もできないからね。


 そんな夫が心配なのに途中でサッカーくじをちゃっかり買っている私。自分が情けないと思い、胸が少々痛む。今朝の夫の様子があんなんだったので、帰る頃には強速球でシャキシャキと歩いて帰ってきたのでした。


 そして、夫はどこ?どこにいるの?


 ・・・いました。ほっとします。すやすやと例の赤ちゃん顔で寝ています。


 よかった。安堵とともに私も力が抜けて隣りで寝てしまいました。


 私も寝てからかなりの時間が経ちました。3時になっていました。私はとある役員をやっているのでそのことである重要なイベントを控えていて、寝ている間はずっとうなされいました。

 

 そして、ほぼ同時にお互い起きると夫は元気よく、自分の部屋に向かい雑誌を持って現れ、食事をとり始めました。「ああ、よかった。食欲もあるのね。」私はほっとしましたよ。


 ふぅ~。そんなこともつかの間、うなされていたように役員としての私の仕事、やはり物事が上手くいかない方向に進んでいきイベントに関してはたじたじの私。夫に相談すると、「そんなのは気にしなくていいんだよ。」と一掃されました。


 クリームパン、八天堂というところの(あとで知ったけど、わりと有名)パンをほおばっている夫。超リラックスしている彼は顔色もピンク色で朝の青白く黄色い顔色とは大違い。


 彼は言う。「僕の心配してくれればいいんだよ、神様は見ているからね。」なるほど、そうかと思いつつ、ちょっとそれは調子いいんじゃないかい?と思いながらも悪れない屈託のない彼に「うん、そうだね。そうするべきだね。」とつい言ってしまう私なのでした。

 

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