第15話 終りまであと少しだそうです
迷い込んだのは何もない真っ白な空間。来たのは僕とルナさんだけ。
ゲームの中にあってゲームの中にない場所。存在していながら存在していない場所。ありとあらゆるものが交錯し交わりなんでもあるようで何もない。そんな混沌としただけど秩序に満ちたそんな空間。
僕達はそんな空間に閉じ込められている(?)。
出ることはたぶん出来ない。というか、許されない。
ここに来たのは僕達の意思じゃないし、もし仕様なら他の人たちも来ているはずだ。姉さんからも何も言われていないし、それは間違いないと思う。
どちらにしても、どうしようもないのは確かです。
何もせずに待っていると、唐突に白い空間にまばゆい光があふれた。
そこに現れたのは、何というか人でした。
違いますね。見た目は人です。でも、中身はとても人とは言えない様なものを感じました。
言うなれば『神』といったところでしょうか。淡く綺麗な水色のショートヘアにきれいに澄んだ翠の瞳。現代風なのにどことなく古風な服。どれをとってもすべてが神々しく、まさに神様と言われれば信じてしまう、そんな感じも人でした。
「あなたがTwilightですね?そちらはLunaticさんですね。
私がこちらにあなた方をお呼びいたしました。唐突なお呼び出し申し訳なく思いますが、タイミングがあまりなかったので許して下さい」
何でしょう。フレンドリーです。
「いえいえ、いいですよ。でも、できれば早めにもどいてもらえると助かるんですが……」
「その通りだ。君が何者かはわからないが、信用できる人物なのかは見極めさせてもらいたい」
「それは無理ですね。あと数分と持ちませんから、この空間は」
その人はそう言うとすぐに用件を語りだした。
「私の正体ですが今はまだいえません。ですが、今からする話は信じて下さい。
このゲームをクリアしてください。最後のクエストをクリアすれば、そこからこの世界から脱出する場所にたどり着くことができます」
「それは、間違いないのですか?」
「はい。ですから、急いでください。私はあの人の涙をもう見たくありませんので」
「分りました。信じます」
僕がそう言うと僕とルナさんの体が薄くなっていきます。
「では、ごきげんよう」
その人は僕の方を向きなおし小さくこう言いました。
「もう一人のあなたによろしくとお伝えください……」
そして僕達は、皆のところに帰還しました。
( ー 3 ー ) . 。 o O
その後、町まで帰還して宿に戻りその日の探索のデータを公開し夜までのんびりと過ごしました。
その夜、僕は夢を見ました。いえ、夢なのでしょうか……。もう一人の自分と対話する夢でした。
しかも、夢と分っているのに現実味を帯びた夢でした。明晰夢という奴でしょうか?
「よう、俺」
「何でしょうか、僕?」
「ん~……。もうちょっと驚くと思ってたんだが、そうでもないな」
「夢ですから、なんでもありなのではないですか?」
「あちゃぁ……。確かに夢と同期させてるからな…………。ミスったか……?」
「なんですか?」
「いや、なんでもない。それよりも終わりが見えたみたいだな」
「そうみたいですね。現実感はないですが、それなりに進んだ感じがします」
「そうか、それは何よりだ」
「そうですか」
その後しばらく沈黙が続きました。そして……
「じゃあ、またな」
そういって、もう一人の僕は席を立ちました。
「行くんですか?」
「ああ、まだ時期じゃねぇからな」
「そう言えば、今日良く分からない人から君によろしくと伝えてくれと言われました」
「へぇ。そうか。全くおせっかいだな。さんきゅ」
「いえ」
「じゃあな」
そう言ってもう一人の僕は去っていきました。
そして、僕は心の中でこう思ったのでした。
次に会えば、僕は彼と同じになると……。
根拠もなく、夢の中のはずなのにそう思いました。
 




