第12話 僕は嫌われてしまったんでしょうか……
あのルナさん救出作戦から一週間。探索も着々と進み、僕達はLV60台になっていました。
ですが、僕にとっては一つ大きな問題が発生していました。
あの日から、ルナさんがどことなくよそよそしいのです。
戦闘時はちゃんとフォローもしてくれるんですが、僕との連携があまりうまくいきませんし、なぜかピンチになった時に僕にフォローをあまり求めなくなりました。普段では全くと言っていいほど僕としゃべらなくなりました。宿屋で同じ部屋に泊まってもしゃべることはありませんし、買い物に誘っても断られるようになりました。
何でしょう。そんな日が続いて、僕はだんだん心が沈んできました。ルナさんが留学してきてからずっと僕達は一緒に行動していました。ですから、僕はルナさんと行動するのが当たり前になっていて、そのせいか会話できないことや行動が一緒に出来ないことで僕はどんどん気持ちが沈んでいきます。
この気持ちがどこから来るのかはよくわかりません。でも、現状を改善しないと僕はうつ病になってしまうかもしれません。早く何とかしなければ……。
( ノ _ - ; ) ハ ア …
はぁ……。何を話していいのかが分からない……。あの夜、黄昏君(?)と会話をしてからというもの私は黄昏君とまともに会話ができなくなっていた。
原因の大半はぼろが出てしまいそうだったからだ。ハッキリ言って私はそこまで秘密や嘘といったものは得意ではない。だから、会話してしまうと簡単にぼろをばしてしまいかねなかったのだ。約束を守るためとはいえ、私はなんて不器用なのだろうな……。
大半というからには違う要素もあるということだ。それは、黄昏君(?)から聞いてしまった言葉に原因がある。
『本人は全く自覚していないが確実にお前に惚れているよ』
私も乙女だったのだなと思う。こんな言葉一つで恥ずかしくなって会話もできなくなるとは……。
会話はしたい。でも、ぼろが出そうなのと恥ずかしいのが相混ざり合って正直会話どころではなくなってしまうのだ。
自分のことくらい分かっているつもりで、まったく分かっていなかったと自覚した。全く、私は何と愚かなのだろうな。
しかも、私の気を落させるものを見るのも私には辛かった。
黄昏君にそっけない態度を取り続けたせいか、黄昏君の方も相当まいってしまっているようなのだ。そんな黄昏君を見て、私は気を更に落とす。
どうにか出来ないものなのだろうか……。
( _ _ | | | )
久しぶりにダークウィングこと闇の翼・通称ウィングと共に探索に出ることになりました。
この前のドラゴンのことはすでに情報として回したんですが、LV50台でも早々勝てないそうです。僕達はよほど運が良かったのかな?
とりあえず、笛に関しては情報規制をかけました。どうやらドロップしたのは僕達だけらしくこんなものを持っているなんて知られると危ないかも知れいからです(まあ、所持者が変更できないアイテムですからPKされたところでドロップしないんですがね)。
で、一応召喚できるのは
僕は雷龍。ルナさんは天馬。クルスはグリフォン。ヴァルサスは胡蝶。ダークウィングさんは八咫烏でした。
その中でも、ヴァルサスの胡蝶は戦闘ではありえないくらい強かったです。皆の子たちも強いのですが、胡蝶は小さく攻撃力もありませんが相手に怖い幻覚を見せる能力があり、相手を混乱させることができました。単純な強さだけが強さの基準じゃないことがよくわかる感じでした。
でも、小さくて空を飛ぶ際の移動にはクルスのグリフォンに相乗りするはめになりましたけど。
そんなわけで、久しぶりの探索です。
まあ、そんなわけなのですが僕の気分はダダ下がり中なのです。先の通り、僕はなぜかルナさんに避けられていて、そのせいで僕は気を落としているのです。いや、避けられてはいないんです。ただ、しゃべってくれないだけで……。それって、避けられてるんじゃ。もう、頭の中の整理が全くつきません。混乱します。
今来ているダンジョンは60~70適性のダンジョンで要探索のダンジョンです。3日ほど前には見つかっていたのですが一般のパーティーはまだ50LV後半なので勝てずに僕らにそのお役が回ってきたわけです。ちなみに使っている武器は、あの日ドラゴンからドロップした武器です。あの武器ほんとにチート性能で変える必要が全くありません。姉さんに聞いたら、本実装になったら、一階消すアイテムらしいです。まあ、アクセサリとして変換して渡すそうですが。
まあ、ハッキリ言いましょう。今日の探索は順調に進みましたが、僕達の間はものすごく嫌な空気が流れてました。
「なんやねん、この空気は。クルスはん、なんとかならんの?」
「無理だな。あいつらの問題みたいだし、俺らには突っ込めない」
「そうだよ~。私たちにはちょっときついな~。むしろ、できるのは機会を作ってあげることくらいかな~。ウィングさん手伝ってくれる~?」
「ええで。こんな辛気臭いのはかなわんわ」
そんなこんなで僕とルナさんはダンジョンの狭い安全スペースに閉じ込められたのです。
「どうしましょうかね、ルナさん?」
「どうもしようがないな。おとなしく待って出してもらうしかないんじゃないか?」
一応会話がちゃんと成立しました。ちょっと嬉しいです。
「こんな時になんですが、ルナさん、僕はあなたに嫌われてしまったんでしょうか……?」
僕はここ最近ずっと心に感じてい不安をぶつけました。だって、ルナさんに嫌われてしまったらきっと僕は立ち直れないでしょうから。あれ?なんで立ち直れないんでしょう?分りません……。でも、きっと立ち直れないのは事実です。
「そんなことあるはずないよ。私が君の事を嫌いになることなんてありえないよ。それこそ天と地がひっくりかえらないことにね」
「それはつまり絶対ってことですか?」
「そう捉えてもらって構わないよ」
僕はとても安心しました。心の片隅で嫌われてしまっているのではないかとずっと思ってしまっていたのでしょう。
「では、なぜ僕を避けるんですか?」
「そ、それは……」
ルナさんが詰まりました。
「どうなんですか?」
「理由は話せない……。だが、私は君から離れていったりすることはない。そこだけははっきりさせておく」
その言葉に多少引っ掛かりを覚えましたが、僕は内心跳ね跳びまわって喜んでいました。どうしてかはわかりませんが。
「でも、いつかは理由を教え得下さいね?」
「ああ、できるときになればな……」
そして、この会話は終わりました。ルナさんのつぶやきを残して……。
「君がもう一人の君を自覚した時にはね……」