"暗室遊戯"
血袋の仕事は
僕達の様な最底辺の人間にとって相当な待遇なのだが、志願する者は少ない
何故ならほとんどの場合、血袋という存在は、二日とせず肉躰が耐え切れ無くなり、直ぐ死んでしまうからだ
僕のような人間は、通常ならば存在し得ないと云う事だった
だが、『其れが幸福な事では無い』と僕は考えて居る
常ならば数名の生命を使用し行われる、浴槽の担当になったからだ
仕事の時間が来た
裸になり
良く冷えた暗い部屋に在る浴槽の中で、赦しを求める様に頭を抱えて丸くなる
息を潜めて震えて居ると、数人の足音が近付いて来た
鮮血師達だ
僕は、鮮血師の姿を視た事が無い
血浴の支度は常に、僕の背中を突き刺して行われるからだ
だが、だからこそ解った事も一つだけ有る
其れは『僕に突き刺される剣は先の尖った筒状の、等間隔に穴の開いた形をして居て、突き刺す事で、効率良く血液を外に排出させる構造になって居る』と云う事だ
初めの頃は、自分が何をされて居るのかすら解らず泣き叫ぶだけだったが、今では声を上げる事すら無い
人間の構造や痛みの許容値を考えるなら、信じられ無い事だ
しかし、鮮血師達は『即死させ無い血抜き』を訓練された存在だとも聞く
また、僕自身、痛みに慣れ過ぎてしまったのかも知れなかった
吸った息を止めて、耐える準備をしようかと思った矢先
其れより早く、剣が幾つも背中に突き刺された
鮮血師達は、人間の苦悶にも価値を視出して居る
僕が耐える方法を視付けた事に気付き、刺す瞬間をずらした様だった
恐らく、彼らの所望したであろう通り
腹の底から出る様な、低く、長い長い声で、僕は耐え切れずに呻き声を掠れながら漏らした
背中を、暖かく濡らすものが在る
漏れ出した、僕の血だ
造血剤を、致死限界まで毎日飲まされて居るため
管を通って、ぼとぼと、と、血が滴る
其の量は、次第に増え続け
最後には
一つ一つの管から、蛇口を捻った様に血が流れ堕ちた
血が浴槽に満たされ
跪いた姿勢の僕の喉に、肺に、血が侵入する
僕は酸素を求めて顔を上げようとしたが、何時もの事だ
刃達が更に深く突き刺され、僕は身を起こせず窒息した




