第26話:古の記憶、緑の回廊
森の縁に立ち、カイはじいちゃんから渡された古びた地図を広げた。
手書きの線は掠れているが、そこには生きるための執念が刻まれている。
「……レン、現在地を確認するぞ」
カイは振り返り、遠く霞むモールの屋上に掲げられた色褪せた旗を見据えた。
そして視線を前方、森の奥に連なる山々の中で、一際高い頂を探し当てる。
「あの頂点と、モールの旗を一直線に結ぶ……。その線上にあるのが第1ポイントだ。じいちゃんの地図が正しければ、俺たちは今、その左側……第4ポイントの入口にいる」
「間違いないよ。ここは直線から左側にあるもんね。今は一番近い第4ポイントを確認しよう」
レンの言葉に頷き、一行は森へ足を踏み入れた。
草原の陽光は遮られ、空気は重く湿ったものに変わる。
深層まで行けば光を拒む樹海が広がるが、この浅層は、人の手が入らなくなって久しい原生林が広がっていた。
カイが鉈を振るい、行く手を阻む蔓を叩き切っていく。
足元には苔に埋もれた古い道標の石があり、樹皮に飲み込まれかけた削り跡が、かつての人々が命を繋ぐために刻んだ記憶の跡として残っていた。
やがて視界が開け、ひっそりとした小さな池が現れた。
そこが第4ポイントだ。
「……静かすぎるな」
レイジが構えを解かずに呟く。
池の端では小さな野兎のような動物が水を飲んでいたが、カイたちの気配に驚いて茂みへと消えていった。
泥の上には古い足跡があるが、そこに巨猪の生々しい気配はない。
「なーんだ、空振りかぁ」
レンが肩を落とし、池の縁の泥をのぞき込んで顔をしかめた。
「ちぇっ、少しは期待したんだけどな。」
そう言って立ち上がると、ズボンについた泥を無造作に払う。
「ここにはいない。水場としては小さすぎるのかもな」
カイは木漏れ日の角度を見上げた。
「日はまだ昇っている途中だ。時間はまだある。……第5か第1…みんな!第1ポイントへ向かうぞ。」
「了解だ。……次は拝ませてくれよ、大物をな」
レイジが肩を回し、再び緑の深淵へと足を進めた。




