第13話: 三日目:死骸の回収
翌朝。
開門の金属音は、昨日よりも低く、重々しく響いた。
人々が外へ踏み出すと、昨日の戦場となった「剥き出しの地面」が朝露に濡れて光っている。
「……いたぞ。荒らされてねぇ」
ゼロが、槍の先で少し離れた草むらのキワを指差した。
そこには、クマさんのバットと、ゼロ・レイジ兄弟の槍によって仕留められた二匹の「牙」が、物言わぬ肉塊となって横たわっていた。
「周囲を警戒しろ! 回収班、急げ!」
門番の男が叫ぶ。
クマさんと数人の男たちが、死骸の四肢を掴んでモールへと運び込む。
一晩置かれた死骸からは、独特の野生臭が漂っていた。
草原の奥では、仲間を奪われた群れのものか、風に乗って「グゥ……」という低い鳴き声が聞こえた気がしたが、人々はそれを振り切るようにしてシャッターの中へと滑り込んだ。
ロビーの広場には、地下の倉庫から引っ張り出してきた古びたビニールシートが敷かれた。
その上に並べられた、二頭の牙。
改めて間近で見ると、その四肢は驚くほど強靭な筋肉に覆われ、剥き出しの牙は死してなお周囲を威嚇しているようだった。
「よし、どけ。……研ぎ澄ませた『道具』の出番だ」
師匠が自ら、手入れの行き届いた大振りの出刃包丁を握りしめた。
クマさんがその横で、補助として構える。
ロビーに集まった住人たちは、誰一人として声を上げない。
これから行われるのは、単なる食事の準備ではない。
自分たちを捕食してきた側の存在を、逆転させ、咀嚼するための「儀式」だった。
師匠が鋭い刃先を、牙の喉元へ深々と突き立てた――。




