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第1章ep:2 邂逅そして戦闘

「ここ、どこだ……?」


くるぶしまで伸びた植物、見たことのない木で構成された森、聞いたことのない鳥や虫の鳴き声。

未だ覚醒しきらない頭でも分かる、ここは自宅のベットの上ではない。


(いや、まて……俺、ちゃんとベットで寝たよな!?目が覚めたら森の中って、それなんてファンタジーだよ!)


ひとまず、現状の確認を急ぐ。服……は着てる。でも何故か着ていた寝巻ではなく、動きやすいジャージ?の様なもの。

こんな服持ってたっけ?と思ったが、今はそんな場合ではない。これまた持っていた記憶のないウエストポーチも身に着けており、中身を確認する。


(バラエティー番組の箱の中身はなんだろなーみたいでなんかいやだな……)


くだらないことを考えつつ、ポーチの底に手を伸ばす。


(!?)


驚いたことにポーチの底に辿り着くことはなく、なんと肘付近までポーチの中に入ってしまった。俗にいう異次元ポケット状態である。

これ、お腹のほうに持ってきたら"アレ"みたいになるなぁ。等馬鹿らしいことも考えつつ、周りを見渡す。


ここまで来たら、ファンタジーを読んだことが無い人にもわかる。ここは29年生きてきた世界ではない。異世界に来てしまったのだと。


(最初からうすうす分かっていたことだけど、やっぱこれって異世界転移、ってやつだよな……)


夢にまで見た異世界。「異世界、キター!」と叫びたくなってしまう心を何とか押し込め、一度冷静になる必要がある。何故なら、人里ではなく森の中であるから。

森の中=危険。この方程式は異世界でなくとも成り立つ。故に異世界であれば更に危険が危ない可能性がある。獣とか、魔物とか……。


(動き出すにしても、こんなどこを見ても木と草しかないところ、どこに行けば……)


一般的に遭難したら、警察に通報、食料と水の確保が優先。でもここは異世界である、流石に警察は来ないだろう。であれば、まずは川を探すか。


ピコンッ!


目の前に見慣れない画面が急に飛び出してきた。異世界転移のド定番、ステータス画面かな?と思ったが、どうやら少し違うらしい。

マップ作製モードと書かれた画面には、自分を中心とした半径150メートルの地形が記録されていた。そして、なんちゃらマップのようなストリートビュー付。

便利機能として、そのままピンを立てることができた。まあ現状使い道はないが。


マップを頼りに歩き始め、早2時間。移動中は獣や魔物に出会うことなく、川を発見した。しかし、すぐには川辺へ近づかない。

なぜなら、獣や魔物も水分補給へ川に来るはずだからだ。まずは少し遠めから川を観察してみる。予想通り、イノシシの様な見た目の獣が川の水を飲んでいた。

ポーチの中には狩りに使えそうな道具は入っていなかったため、流石にイノシシ(仮)を相手にするのは無理そうだ。


(どっか行ってくれるの待つか)


待つこと数分、水を飲み終えたイノシシ(仮)は川上の方へ歩いて行った。周りを入念に確認した後、川へ向かう。

川幅はそこまでないが水深はそこそこあり、もし川に入った場合胸当たりまでは浸かってしまいそうであった。魔法のポーチから水筒を取り出し、水を汲む。


この水筒も中々おかしい性能をしているらしく、泥水であったとしてもおいしい天然水に変えてしまうらしい。

らしい、というのは先ほどマップでお世話になった謎の画面で物を鑑定できるらしく、そこに書いてあった内容によるものだ。

他にも、ステータスやポーチと連携しているらしいインベントリ等色々多機能なステータス画面らしい。あまりにも多機能すぎるため、ステータス画面と呼ぶのは憚られるため、メニューと呼ぶことにした。


話が逸れたが、今は喫緊の水と食料問題の方である。水は川から汲むとして、食料の方は困った状況である。なんせポーチの中には狩りに使えそうな道具がない。

解体用のナイフでも入ってたらまだどうにかなったかもしれないが……。いや、ずぶの素人にナイフ一本でイノシシを狩れと言われても無理か。

仕方がないので、食べられそうな草を片っ端から鑑定し、ポーチに放り込むことにした。


====================================


数時間歩いてみて分かったことがある。現在いるこの森は比較的安全で、気を付けていれば襲われることはない、と思う。

メニューさんには現在時刻が表示されているため、日の入りである17時付近まで川下の方まで歩き、その際イノシシ、ウサギ、カラスほどの大きさの鳥しか見かけていない。

現状植生が違うだけのただの森である。少し肩透かしな気もするが、戦えるだけの武器がないので冒険心には少し待ったをかけておく。


(マップによると、そろそろ森を抜けられるらしいが……)


現在時刻は17時丁度。残り200メートルほどで森を抜けられるらしい。抜けられる、といっても村があるわけではなく草原が広がっているだけみたいだが。


(どうするかな、もうじき日が暮れる頃合いだけど、森で一夜を明かすか、草原に出ちまうか)


見渡しの悪い森の中であれば、外敵を発見するまでに時間を要するが、相手も同じ条件だ。しかし草原に出てしまえば見渡しがよく、すぐ発見されてしまう。

逃げても確実に追いつかれるだろう。であれば取るべき行動は。


(草原が見える位置まで行って、一旦森の中で様子を見よう)


日がかなり傾いてきたが、目的地である草原が見えるところまで着いた。草原は完全に平ではなく少し丘のように高さがあるように見えた。


森の出口付近に陣を張ることにし、ポーチからテント一式を取り出した。もちろんこのテントもかなりの性能をしており鑑定によれば、認識阻害、空間拡張、冷暖房がついているらしい。

どの程度認識阻害が機能するかまだ分からないため流石に草原のど真ん中で使用する勇気はなかった。


「なんだこれ、テントっていうかワンルームのアパートじゃん」


テントの中に入ってみたらまさかの現代風の空間が広がっていた。家具はないが。

何時間も歩いた疲れを癒すには十分の広さであり、ここが森の中だということを忘れ泥のように眠ってしまった。


====================================


ピコンッ!ピコンッ!


メニューさんから大音量の通知がなり、飛び起きた。確認してみると、感知エリア内にて戦闘アリの文字が。

ここから南西方向100メートル付近で人間と魔物の戦闘が起きているらしい。


「って何と何が戦ってるのかも分かるのか!?ていうか魔物!?」


改めてメニューさんのトンデモっぷりに驚き、更に魔物の存在に驚愕させられる。助けに行きたいのはやまやまだが、現状武器がないため戦えない。

何か役に立てるものはないか……。


ピコンッ!


メニューさんの新機能で調合ができるようになったみたいだ。毎回欲しいタイミングで欲しい機能が追加され、もう訳が分からないよ……。

今はそんなこと言ってる場合じゃない。インベントリと連携して使用できるみたいなので、戦闘が起きている場所まで向かいながら仕様を確認する。

某狩ゲーの様な仕様らしく、必要な素材を必要な個数所持していればレシピが解放されるらしい。現在所持している素材からは毒消し(小)と回復薬(小)が作成できるようだった。


「見えた!ってあれはもしかしてゴブリンか!?」


通知があったところへ駆けつけると、そこには西洋の甲冑の様な鎧を着た騎士といかにも140センチ程のゴブリンのような見た目の魔物とが戦闘していた。

騎士側とゴブリン側でかなり人数差があるらしく、素人目で見てもかなり厳しい戦いのようだ。


「クソ!数が多すぎる!」

「お嬢様を守れ!」

「後方より一人近づいてくるものがいます!」


激しい戦闘の最中、後方から迫るヤツなんて怪しすぎる。即ち登場の仕方を間違えてしまったのだ。

今更そんなことを悔いても仕方がない!とにかく助けなければ!


「そこの者!現在ゴブリンとの戦闘中である!我らに仇なすものであればゴブリンとともに斬り捨てる!」


「戦闘の音がしましたので助太刀に参りました!当方戦闘はできませんが、回復薬を持っています!」


「何!?すまぬ、必ず代金は支払う!倒れている者に回復薬を飲ませてやってくれ!」


騎士10人中3人が倒れており、突破されるのも時間の問題のようだった。ゴブリンは多少知恵が回るらしく、騎士が倒れ守りが薄くなったところを攻めている。


「右側に倒れている2人の治療をします!援護できますか?」


「了解した!リッツ!この方を援護し、倒れているものを運べ!」


リッツと呼ばれていた騎士とともに倒れている騎士のもとへ駆けていく。幸いなことに弓や魔法といった遠距離攻撃手段をゴブリンは持っていないらしく、たまに包囲を抜けてきたゴブリンをリッツさんが応戦するだけで済んだ。治療するにも前線のゴブリンが何体もいる場所では流石に厳しい。あのいかにも重そうな鎧を纏った騎士を安全な場所に引っ張ってくる自信は正直ない。


「リッツさん、あの二人ここまで運んでこれますか?」


「承知した。しばし待たれよ」


リッツさんはかなり手練れの騎士らしく、数体のゴブリンを蹴散らしながら隙をみて一人運んできた。


「ここで大丈夫か?」


「はい、大丈夫です!初めて使用するのでどこまで治るか分からないのですが……」


「かまわない、命さえ繋がればどうとでもなろう。すまないが、もう一人連れてくる。後は頼んだ」


出来るか試したことはないが、一応騎士を鑑定。


アルテナス・ゴードン-HP:1521/4069


出てくる情報はかなり少ないが、人物の鑑定もできるみたいだ。やはり高性能だなメニューさん!


ポーチから回復薬(小)を取り出し、鑑定。


回復薬(小)-効果:中程度の怪我を回復可能。経口摂取及び患部に直接かけて使用。


(中程度、とはどれくらいか分からないがきっと骨折くらいなら治るだろ!)


うめき声をあげている騎士に問いかける。


「おいあんた!意識あるか!」


「ぐぅっ……!一応、意識は、ある……」


「今からあんたに回復薬を飲ませる。まずいかもしれないけど、多分効くからちゃんと飲めよ!」


一応警告してから回復薬を騎士の口に流し込む。口の中をけがしていたのか、あまりのまずさからなのか苦虫を噛み潰したみたいな顔をした。

いや、ちゃんと警告したので許してください。


全量回復薬を飲ませ、目をぱちぱちとさせ、急に立ち上がった。


「な、なんだこれ!骨折までしていたのに嘘みたいに痛みが消えた……?」


アルテナス・ゴードン-HP:3221/4069


おいなんだこれ!めっちゃ回復してる!(小)がしていい回復力じゃないだろ!と頭の中で愚痴る。


「実は、古郷から託された品でして……。お役に立てたようでよかったです」


やばい、咄嗟にとんでもない嘘を吐いてしまった。言及されたらとぼけよう。


「そんな大切なものを……。すまない、この借りは必ず返す」


そう言って前線へ戻っていった。ゴブリンの数は全く減らず、何匹も殺しているはずなのだが、むしろ増えている……?

森の奥から次々と出てきているらしく、手練れの騎士たちを以てしても殲滅しきれないようだ。


「もう一人連れてきた!……ってさっきの騎士はどこへ!?」


そりゃあそうだ。数分前に連れてきた騎士がいなくなっているのだ。まあ実際はもう戦線に復帰しているのだが。


「回復薬の効果が高かったらしく、戦線に復帰されました!」


「なに!?にわかには信じられんが……、まあいい。こいつも頼んだ!私は戦線に戻る!」


まあ信じられないよね。それでも治ってしまったものは仕方がない。効かないよりもマシってことで!


倒れている騎士を鑑定!


アーノルド-HP:960/2850


よし!こっちもまだ生きてる!ポーチから回復薬を取り出し、飲ませよう。


「おいあんた!意識はあr……」


「「ギャアァアァアア!」」


後ろから2体はぐれたゴブリンが迫ってきているのに気が付かなかった。咄嗟に倒れた騎士の剣を抜き、横薙ぎに一振り。

もちろん素人が咄嗟に剣を振っただけで2体同時に殺せるわけもなく。


「クソッ!一体しかやれなかった!」


灰になったゴブリンを横目に剣を構える。が、先ほどの一振りで筋を痛めたのか両腕がとてつもなく痛み、まともに剣を構えることができない。

回復薬を使おうにも今剣を離したら確実に殺される!


ピコンッ!


回復薬(小)使用しますか?


メニューさん!信じてました!もちろんYES!

やはり高機能メニューさんは偉大であり、自分限定にはなるがなんとインベントリの中身をとりださずとも使用できるらしい。


剣を構えなおし、ゴブリンと向き合う。大丈夫、咄嗟のこととはいえさっきは殺せたんだ。きっと大丈夫。


相手の武器は棍棒。ゴブリンらしい武器である。こちらの武器はショートソード。彼我の戦力差でいえば圧倒的に綾人の方が強い。

が、所詮綾人は素人。武器の差なんてないも同然。そして命の奪い合いなんてもちろんしたことはなく、その覚悟もできていない。

でも、人を見捨てるのは違うだろう。今なら自分一人逃げ出せるかもしれない。でもしない、何故か?


「見捨てて逃げるファンタジーの主人公がどこにいるってんだよ!!」


「グギャァアアァ!」


互いに選んだのは突撃。よくあるファンタジーの知能が低いゴブリンとは違い、ここのゴブリンは知恵が回る。

棍棒を振ると見せかけ、左手に握っていた砂を投げつけてきた。


「っち!こしゃくな!」


投げられた瞬間、バックステップ。体が熱い、戦闘で興奮しているのか、明らかに反射神経、運動能力が上がっている。

戦っている本人は全く気が付いていないが、地球に住んでいた時の綾人であれば砂を避けることができず一撃もらっていたであろう。


(どっちからくる!?右か?左か?正面か?)


反射神経と運動能力が上がっているとはいえ、戦いに関しては素人。後手になってしまうのも当然であろう。しかも相手は馬鹿じゃない。


(待ってても埒が明かない!こっちから!)


雑念がよぎった瞬間、目の前に棍棒が飛んできた。


「って!投げてきた!エモノなげるとかありかよ!」


泣き言を言っている間に先ほど殺したゴブリンの棍棒を拾い、突撃してきた。

大振りの一撃、綾人の左肩目掛けて振るわれた一撃は当たることなく空を叩く。

がら空きの胴体目掛け、ショートソードの刀身を一薙ぎ。


「浅い!」


一撃で仕留めきれず、返す刀でもう一振り。今度こそ倒しきれたようで、灰になって消えていった。


「か、勝った…」


なんとかゴブリン2体に勝利し、倒れている騎士の元へと向かう。


「大丈夫か!意識あるか?」


先ほどと同様の問いかけをし、回復薬を飲ませる。全く同じ反応をいただき、前線へと戻っていった。

倒れている騎士は3人、もう一人は逆側に倒れているため休む暇なく倒れている騎士の元へ向かうのであった。

お久しぶりです、イチボです。

中々時間が取れず間空いてしまいましたが、物語書くのタノシイ!

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